「白鯨」と「老人と海」と「激突!」と、「ジョーズ」!
小学生の頃、母に「いい映画だから」と情操教育的にテレビで観せられたのが「白鯨」(1973年6月6日・水曜ロードショー)と「老人と海」(1974年8月10日・土曜映画劇場)。さらに翌年、スピルバーグの「激突!」(1975年1月5日・日曜洋画劇場)を観た(こちらは強制ではなく自主的w)。
今思えば、この3本が下地にあったんだから、「ジョーズ」(1976年1月・映画館で鑑賞)を特別に面白く感じたのも当然だったのかもしれない。
●白鯨(1956年) 1:56 アメリカ Amazon MGM+
監督:ジョン・ヒューストン、出演:グレゴリー・ペック、リチャード・ベースハート他。
冒険を求めて港にやってきた「私」は捕鯨船に乗り込んだ。伝説の白鯨に足を食いちぎられ、復讐に取り憑かれたエイハブ船長に率られ、常軌を逸した航海が始まる……という話。
重厚な小説を読んでる感、または演劇っぽさが強い。冒頭、同じような構図で5分も続く神父の説教。ヨナ書の鯨の逸話を大演説。何かと思ったら、この神父ってオーソン・ウェルズじゃん! 圧倒的存在感!
主人公と変な相棒のインディアン、他の船員たちの人間臭さが楽しい。船員として集まった様々な人種の人々が協力して航海する感じは「スタートレック/宇宙大作戦」の先取りのよう。
あちこちに「ジョーズ」のオリジナルっぽいものがあった。鯨が現れて船員たちがにわかに走り回る足元のショットなど典型。小舟が鯨に引っぱられてスピードを上げるシーンと、「ジョーズ」で樽がぐんぐん引っ張られるのも同じ! 巻ロープがすごい勢いでなくなったり、煙を上げるロープに水をかけたりとかのリアリティ! 間接的に鯨の強さや存在感が強く伝わってくる。
正気を失いかけてるエイハブ船長は「ジョーズ」のクイント船長のキャラ付けそのまま。白鯨よりエイハブ船長が怖い!w
それでも船員のほとんどがエイハブ船長についていくのがイイ。一人だけ冷静さを保ってる一等航海士は、スターバックスの名前の元になったスターバック!
当時の捕鯨の様子が詳しく描かれる。切り刻んで煮て油を取って捨てる。こんなことやってたんだなあ……。あと、ラスボス白鯨はじめミニチュア特撮部分は多いけど、本物の捕鯨を撮影した血生臭いシーンもあって、今となっては刺激が強すぎる。
・なんと、脚本はレイ・ブラッドベリだったんだ!
・予言とその実現。小学生で観た時は「すげ〜〜!」って大感動したけど、今見ると、後付けの雑な伏線に感じるw
・グレゴリー・ペック、しっかり老けメイクだけど、この時40歳。「オーメン」(1976年)で60歳か。若返ってるw
・三等航海士を演じてる俳優はハリー・アンドリュースっていうのか。よく脇役で見かけるけど、いい味の俳優だなあ。
●老人と海(1958年) 1:26 アメリカ Amazon
監督:ジョン・スタージェス、出演:スペンサー・トレイシー他。音楽:ディミトリ・ティオムキン。
キューバの年老いた漁師。84日間も何も獲れない日が続いたが、今日は大物が釣り針にかかった! 小舟を延々引っ張り続ける巨大カジキマグロと老人の、三日間に渡る戦いが始まった……という話。
そうそう、有名な「老人はライオンの夢を見ていた」のフレーズってこの作品!……めちゃくちゃ良かった! ヘミングウェイの小説(読んだことない)が原作なんだけど、この映画もずっしりした小説を読み終わった気分。
というのは、冒頭の20分以外、ほぼ老人の内面の声と独り言のみだからだろう。小説の魅力って、主人公の内面を追えることだと思う。まあ、僕は小説は大して読まないけど、スティーブン・キングも筒井康隆も、内面の声が延々書かれてるのが小説ってイメージ。その感じが映画なのに完璧に表現されてる。
聖書のエピソードか何かを下敷きにしているような雰囲気もあり(実際どうなのか知らんけど)、特別な映画を味わってる感もある。
ちょっと意外だったのは、映画が撮られた頃(1950年代)の現代の話として描かれてること。コカコーラ、ジュークボックス、ラジオ、自動車、観光客、野球選手ディマジオの話も。寓話的なイメージから、大昔かせいぜい19世紀くらいの昔話だと思い込んでた。
スペンサー・トレイシーのほのぼのした外見もあって、少年に世話される穏やかな老人と思ってたら、若い頃は腕力で鳴らした男の中の男だったという描写もある。老いてもボロボロになっても信念を持って戦い続ける男なんだ、と。カッコイイ。戦いを終え、ボロ切れのように眠る老人の姿も清々しい。
・ブルーバック合成が使われた初期の映画のひとつらしい。本物の海でのロケと、空が壁に描かれたスタジオプールの海、それに老人がブルーバック合成された海。ライティングでその場にいるような波からの照り返しがうまいこと表現されてて感心。
・ジョン・スタージェス監督って、「荒野の七人」(1960年)や「大脱走」(1963年)など、大作アクション映画の巨匠のイメージだったけど、こんなのも撮ってたのね。
・「ジョーズ」的には、サメのすごい映像が堪能できる他は直接のつながりは無いかな。唯一、巨大カジキマグロを初めて見た老人のつぶやき「舟より大きい」は、ブロディ署長の「もっと大きな船が必要だ」を思い出した。

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