2026/07/07

最近観た映画メモ「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」


●ゆきゆきて、神軍(1987年) 2:02 日本 YouTube

当時からとんでもない映画ということは知ってた。なるべくなら観ないで済ませたかったけど、たまたまYouTubeで無料配信されてると知り、怖いもの見たさで、つい……w

監督:原一男、企画:今村昌平。

傷害致死罪で実刑を受けるなど、ここには書きたくないほどのすさまじい経歴を持つ超危険アナーキスト、奥崎謙三。自分が所属していたことのある部隊で終戦直後に起きた銃殺事件や人肉食をめぐって、異様な熱量をもって当事者たちを問い詰め、真相を聞き出そうとする姿を追ったドキュメンタリー。

奥崎は日本一上官を殴った男と自称。自身は終戦の1年前に捕虜になっている。復員時にも暴力で問題解決してきたなど、歪んだ成功体験を持つ。

話をしに訪れた上官や戦友たちに殴りかかって警察沙汰になるなど、カメラを意識したであろう暴走が目立つ。戦後38年もたって、それぞれ過酷な過去と折り合いをつけているだろう元兵士たちに「責任を取れ!」と怒鳴り、暴れ回る奥崎(ブチ切れてる時以外はとても穏やかな人に見えるのだが)。

裏話を知ると、「ドキュメンタリーって何?」という視点にならざるを得ない。奥崎が関係者の証言を引き出したのはすごいけど、過程がめちゃくちゃすぎる。

奥崎が演技していることが判明したり、原監督に思い通りに撮らせようとして決裂したりもする。さらに、事件の責任者の家族を改造拳銃で襲撃し、殺人未遂事件で懲役12年が確定する。

また、編集者が監督の意向を無視して独自に編集したらしい。最終的に、企画の今村昌平と原監督の意図がどのくらい反映されているのかも不明。

っていうか、原監督は自分の名前でこれが世に出て大丈夫だったのか? 海外の有名監督らも認める「怪物的な映像作品」になってしまったのは確かなので、ドキュメンタリーかどうかは置いといて、これはこれで価値を認められた、ということなんだろう。

(Wikipediaなど読むと、原監督はドキュメンタリーと虚構の境界をあいまいにし、「やらせ」さえ真実を明らかにする手法として使う監督、とのこと)

撮影は1982〜1983年頃とのことで、奥崎は当時62歳。現在の僕よりひとつ下だけど、同世代とはまったく思えない。他の登場人物含め、昔の大人はこんな感じだったなあ。

●全身小説家(1994年) 2:37 日本 YouTube

監督:原一男。小説家・井上光晴の晩年/闘病の5年間を記録したドキュメンタリー。ドラマ部分も少しある。NHK「ファミリーヒストリー」のように関係者のインタビューを通じ、彼の年譜/経歴がほとんど虚構であったことも明らかになっていく。

冒頭からの井上の描写が強烈。1989年時点で63歳、つまり現在の僕と同い年なのだが、若い頃に「嫌だな、ああはなりたくないな」と思った大人の振る舞いのフルセットのような俗物ぶり。「35年前の63歳ってこんなだったのか??」とショックを受けるほどw

しかもモテモテなのがまた嫌だなww 取り巻きの女性たちは、井上がいかに素敵かを夢見る少女のように語る。男性たちさえメロメロw すごい引力だなあ。

とはいえ、奥さんや家族といる場面ではごく普通の男にも見える。外ではそういう“井上光晴”を演じてしまうのだろう。

……というような悪印象からの、癌告知、手術、闘病。それでも彼なりにまっとうに生きようとする描写がかなりキツくてこたえる。彼についてのまとまった印象を持ちにくい分、「ゆきゆきて、神軍」よりも心に強く残る映画かもしれない。

経歴詐称といっても、自分を大きく見せるためではなく、自分の人生そのものを作品化している感じ。「嘘つきみっちゃん」と呼ばれていたそうで、嘘ばかりなのは家族も周囲も薄々知っていたとのこと。

「全身小説家」というタイトルが効いてる。本人にとっては経歴も記憶も空白も、すべて小説の材料だったのかもしれない。しかも、その手法を講演で大勢に紹介してるw

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2026/06/29

最近観た映画メモ「奴らを高く吊るせ!」

6月末で配信終了の映画を駆け込みで観るシリーズ第7弾。もうこのへんで打ち止めにしておく。「ピンク・パンサー」シリーズも50年ぶりに観直したかったけど、今回はあきらめた。

●奴らを高く吊るせ!(1968年) 1:49 アメリカ Amazon

テレビ出身のイーストウッドがマカロニウエスタンで映画スターの仲間入りした後の、ハリウッド主演第一作。それも自ら設立した会社による製作で総指揮を取る力の入れよう。

監督:テッド・ポスト、出演:クリント・イーストウッド、エド・ベグリー、ベン・ジョンソン他。ブルース・ダーンやデニス・ホッパーも出てる。日本語吹き替え版、イーストウッドはもちろん山田康雄!

オクラホマ。突然現れた9人の男たちに牛泥棒の濡れ衣を着せられ、裁判もなしに縛り首にされた男ジェド。通りがかった囚人護送中の連邦保安官に助けられる。判事によって無罪と判断され釈放されたものの、合法的に復讐を果たすため、ジェドはかつて務めていた保安官に復職するが……という話。

冒頭で、いきなり超強力な復讐の動機が示される。こりゃもうマカロニウエスタン風に、9人の犯人たちを一人ずつ血祭りに上げていく映画かと思ったら、ぜんぜん違った。そこはアメリカ映画。なんと、「法を守ること」「法の残酷さ」についての映画なのだった。

絞首刑が小さな町のお祭りみたいになっており、その詳細な描写に驚く。その刑に関連して、途中からとんでもない冷血漢に見えてくる判事も、準州に一人しかいない判事、つまり「その上には神しかいない」という立場で、裁きを下さざるを得ないことに苦しむ描写は良かった。

犯人たちも無法者ではなく大半は善良な市民で、一時的な思い込みから私刑/リンチに走ってしまったことも判明。一人の「良心的」犯人の存在もあって、「復讐」については途中から観客的には置いてけぼりを食った感じになる。とりあえず西部劇的には半分決着をつけたものの、「続く」という感じで幕が降りる。

・フルオーケストラの戦争映画みたいな大げさな音楽がちょっとジャマ。かと思えばモロにエンニオ・モリコーネ風の音楽も混在してて微笑ましいw 真似させられたかわいそうな作曲家は誰かと思ったら、「逃亡者」等を手がけたドミニク・フロンティア。「ラット・パトロール」のテーマ曲は中学時に録音して好きだった(「要塞攻略戦」っていうひどいタイトルをつけられてたw)。

・クリント・イーストウッドの映画って、最近の作品まで含めて、半ば強引だけど結局モテモテなシチュエーションがたいていある。このハリウッド第一作目にあたる映画でも、すでにそうだったw

・ブルース・ダーンの憎ったらしい小悪党ぶりが最高。「11人のカウボーイ」(1972年)も良かった。

・デニス・ホッパーの使い方がとても正しくて笑ったw 出てきた瞬間に「あ、こいつ絶対ヤバい」とわかる。っていうか、本人があのイメージで売っていこう!って思ったのかな?w

・あれ?と思った点。判事の部屋のランプと、大尉と呼ばれる犯人のリーダー格の家のランプ。同じものでは? 上部のガラスのホヤの有無の違いはあるものの、小道具の使い回しかも。まあ、当時流行ってたランプの形なのかもしれんけど。


このランプだな。1800年代後半に人気だったランプとのこと。

ガラスのホヤがついたタイプもあった。こちらは電灯だな。どちらも1968年の撮影時点で割とありふれたタイプのレトロ照明器具だったらしい。

最近観た映画メモ「ビー・クール」


6月末で配信終了の映画を駆け込みで観るシリーズ第6弾w
あと1〜2本イケるかな?

●ビー・クール(2005年) 2:00 アメリカ Amazon

先日観た「ゲット・ショーティ」(1995年)の続編。マフィアの取り立て屋から映画プロデューサーになったチリ・パーマー。今度は音楽業界に乗り込む。長期契約で塩漬けにされてた有望な新人歌手を奪い、友人の音楽会社から売り出そうとするが……という話。

監督:F・ゲイリー・グレイ、出演:ジョン・トラボルタ、ユマ・サーマン、ドウェイン・ジョンソン、ハーヴェイ・カイテル他。あっと驚く豪華なゲスト出演陣!

楽しかったけど、世間の評価はイマイチらしい。まあ、コメディにしても軽薄すぎる上にバランスが変というのは確かにあるかもしれない。でもトラボルタがノリノリで、それがなんか幸せな感じするので許すw  音楽業界というかショービジネスの「わお!」って感じをいろいろ見せてくれるし。

「パルプ・フィクション」のオマージュと思われるトラボルタとユマ・サーマンのダンスシーン。シャレでやってる感じで十分なのに、「どうせなら名シーンにしてしまおう」という思惑が見え、ちょっと醒めてしまう。長いしw 後半の歌のシーンもちょっと豪華すぎて、クライムアクションコメディ的にはアンバランスかなあ。

前作から10年もたつと、トラボルタが明らかに老けて見えるのが残念w チリ・パーマーは前作から何年もたってない感じなのに。(っていうか、2005年からもう21年も経ってるって、すごいね。前作からだと31年!)

俳優として売り出し中のドウェイン・ジョンソン、髪の毛と髭がある! 体もそれほどムキムキでない。悪徳音楽プロデューサーのボディガード役だけど、繊細で俳優志望でゲイって役柄。現在のイメージではぜんぜんないけど、確かにもともと面白い俳優なんだなあと好印象。

セドリック・ジ・エンターテイナー演じるカリカチュア化されたギャングスタラッパーの一団が素晴らしいw 全員で一つのキャラとして動いてる。活躍をもっと観たかったw

2026/06/28

最近観た映画メモ「ノスフェラトゥ」他


6月末の「primeでの配信は◯日以内に終了」が多すぎない? ヘルツォーク作品だけでなく、「あっ!これ配信されてるんだ!」って割と最近ウォッチリストに加えた映画(MGM+含む)がごっそり配信終了になってしまう。「ピンク・パンサー」シリーズも観直すつもりだったのに。そこへいくと、U-NEXTの品揃えは強いなあ。そのうち復活しよう。

今回、1979年と1922年の「ノスフェラトゥ」を観たけど、2024年にもリメイクされてる。オルロック伯爵(=ドラキュラ)がなんと「IT」(2017年)でペニー・ワイズを演じたビル・スカルスガルド! 観たい!

もう一本、1922年版の撮影舞台裏を描く「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(2000年)も面白そう。こちらのオルロック伯爵はウィレム・デフォー! (2024年版にも出てるw)

●ノスフェラトゥ(1979年) 1:47 西ドイツ Amazon

1922年の元祖「吸血鬼ノスフェラトゥ」は小説の著作権を避けた形で作られた、いわばジェネリック「ドラキュラ」なんだけど、1979年にリメイクされた本作では登場人物の名前は変えられておらず、ドラキュラ伯爵やヘルシング教授など本来の名前になっている(他、名前の入れ替えなどある)。1979年時点で著作権切れだったのでそのまま使えたとのこと。

監督:ヴェルナー・ヘルツォーク、出演:クラウス・キンスキー、ブルーノ・ガンツ、イザベル・アジャーニ他

不動産会社に勤めるジョナサン・ハーカーは、ドラキュラ伯爵から依頼を受け、大きな屋敷を売る契約のためにトランシルヴァニアを訪れる。恐れる村人たちの制止も聞かず、古城へ向かう。不気味な伯爵と面会して契約を交わすものの、ジョナサンは閉じ込められてしまう。一方、伯爵はジョナサンの妻を狙い、急いで出発する……という話。

非常に静かな映画。ゴシック・ホラーの様式美を削ぎ落とした怪奇映画という感じ。ドラキュラ伯爵は、何百年も死ぬことさえできない悲しく哀れな存在として描かれる。

吸血鬼映画というよりも、町に疫病と死が広がっていく様子を描く。冷たい禍々しさが画面を支配する。ネズミだらけの石畳、無数の棺桶、誰もいなくなった町。ドラキュラはペストそのもの。前歯までネズミ! 

・イザベル・アジャーニが美しい! ラファエル前派の絵画のよう。

・最初に「手先/しもべ」となるレンフィールドの俳優の演技がウザ怖すぎるw っていうか、ニコラス・ケイジがドラキュラ伯爵を演じる映画「レンフィールド」(2023年)って、このレンフィールドのことだったのか! 今さら気がついたw

・西ドイツの映画なのにセリフが英語(口の動きも合ってる)なのはなぜだろう?と思ったら、英語版とドイツ語版と同時に撮影され、両方が正式版として公開されたそう。

・町を埋め尽くすネズミが白っぽくて違和感があったのだが、ヘルツォークが撮影用に大量に輸入した実験用ラットは白ネズミだった。それを灰色に染めようとしたことや、輸送中のトラブルで、半数が死んでしまったらしい。他にも動物の扱いに問題があったとのこと。

・クラウス・キンスキーの白塗りの特殊メイクが不気味でなかなか良いんだけど、ライティングの具合によってピンクっぽく肌が透ける瞬間がある。ふっくらした干し柿のようだw

●吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年) 1:34 ドイツ YouTube

監督:F・W・ムルナウ、出演:マックス・シュレック他。

日本語字幕入りバージョンがYouTubeにあったので、確認のためにざっと観てみた。大まかなストーリーはほぼ同じだけど、ノスフェラトゥ=ペストということをはっきり描いている他、ヘルシング教授に相当する人物がいなかったりする。

ヘルツォーク版は構図や演出含めほぼこれを下敷きにしてる模様。影絵の描写もこちらがオリジナル。こちらでは影を使って「触れる」までやってる。

マックス・シュレック演じるオルロック伯爵(=ドラキュラ)の外観や演技はクラウス・キンスキーより人間離れしてて、けっこう怖い。ドイツ表現主義的テイスト全開。どんだけ怖い顔の俳優だろうと画像を検索したら、普通の人でしたw 付け鼻や牙など自分でメイクしたとのこと。眉毛は無いほうがよかったなw

・1922年の白黒映画にしては中間の階調がしっかりあって、かなり鮮明。廃棄を免れたフィルムを元に修復されたのかな。

・最初に「手先/しもべ」となるノック(=レンフィールド)は、こちらでもウザ怖すぎるけど、登場場面は格段に多い。

・ヘルツォーク版を観た後なので画面で何が行われてるかちゃんとわかるけど、無声映画の字幕/インタータイトルだけでは説明不足でわかりにくいかもしれない。

・上で「著作権回避のためのジェネリックドラキュラ」と書いたけど、冒頭でタイトルの次に「小説ドラキュラ、ブラム・ストーカー」と思いっきり出てくる。ドイツ人になじみやすいよう固有名詞をアレンジした「無許可ローカライズ版ドラキュラ」だったという説も。まあ、どちらにせよ裁判には負け、フィルムは廃棄されることになるのだが。

YouTube「WY日本語字幕FILM」。パブリックドメインとなった古い映画に字幕をつけて配信してる。すごい映画がいっぱい! 「吸血鬼ノスフェラトゥ」はたった3週間前のアップだった。
https://www.youtube.com/@wysubtitles

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2026/06/25

最近観た映画メモ「アギーレ/神の怒り」



●アギーレ/神の怒り(1972年) 1:33 西ドイツ Amazon

観たはずだけど、調べると日本公開は1983年2月。その頃は就職の直前で映画に行ける状況じゃなかった。としたら、80年代後半にビデオを借りて観た可能性も。猿だらけのシーン他、いくつかのシーンは記憶にあったし。

監督:ヴェルナー・ヘルツォーク、出演:クラウス・キンスキー他

16世紀のアマゾン奥地。黄金郷エルドラドを探し求めるスペインの大探検隊がついに行き詰まる。行くか戻るか、偵察のため少人数の先遣隊を編成、川下りに臨む。副官アギーレは異常な執念に取り憑かれているし、過酷な自然と原住民の襲撃で隊員は次々に減っていく……という話。

凄まじい映画だった。「フィツカラルド」と違い、こちらはストーリーを「楽しむ」箇所はほとんどなく、陰惨な強行軍のみ。もう一回観たい!とはならないなw 絶望的な状況にアギーレの狂気だけ空回り。こちらのクラウス・キンスキーは可愛げゼロ。

「手付かずの自然の力に対して西洋の人間の野望のちっぽけなこと!」を堪能する映画。冒頭の険しい山の行軍はほんとスゴイ。あそこだけでも観る価値あり。

・「フィツカラルド」と対になってるんだろうな。アマゾンの大河を上ったり下ったり、執念が高じて半分頭イカレた男をクラウス・キンスキーが演じたり、伝説の神々と間違えられたりも。

・異教徒を人とも思わないスペイン人、ひでーよ。。。

・細部にこだわらないヘルツォーク監督へのツッコミとしては、「現代のヘアスタイルのおじさんたちが海パン姿で筏を操ってるぞ」くらいかなw

・「ドローンもない時代に筏の周囲を二周する視点」は、普通にモーターボートで撮ってるんじゃないかな? 航跡っぽく水面が乱れてるように見える。

・ああそうか、あの長槍って「地獄の黙示録」でオマージュされてた。

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