Amazonプライムの有料チャンネル「日活プラス」。この機会に「有名なのに観たことない映画」を急いで何本か見てしまう特集(行きがかり上、東映作品が混じったけど)。この時代の映画は2本立て上映前提のプログラムピクチャーなので、短くて観やすい。
●けんかえれじい(1966年) 1:26 日本 Amazon 日活プラス
昭和10年頃の岡山の旧制中学。南部麒六はケンカの楽しさに目覚め、師匠のスッポン先生と修行する。下宿先の道子さんに恋するも、硬派であるが故に青春のエネルギーを全てケンカで発散。ついに放校処分されてしまう。会津の学校に転校するも、そこでも反骨精神を発揮し、ケンカに明け暮れ……という話。
監督:鈴木清順、出演:高橋英樹、浅野順子、川津祐介、他。
ゆる〜いバンカラコメディでした。爆笑シーンがいくつもある。ケンカシーンもゆるくてほのぼのw 22歳の高橋英樹が魅力的。朴訥でカワイイ。短い映画なので高橋英樹を鑑賞するだけで十分もつ。
高橋英樹、たった7年後に29歳でNHK大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)で織田信長を演じる。若っ! よく、「大河ドラマで若手アイドル俳優が武将とかやってるのぜったい変、大人の俳優でやってくれ! 」とか言ってたけど、僕の理想の信長は今のたいていの若手俳優より若かったんだ!
昭和10年頃を描く白黒映画なので大昔と錯覚してしまうけど、1966年なのでそれほど昔じゃない(「ウルトラマン」と同時期)。今風に映像を凝ってみたり、アングルで遊んでたり。カラーでも撮れたけど、わざわざ白黒にしたんだろう。併映は渡哲也主演の「続東京流れ者 海は真っ赤な恋の色」で、普通にカラー。(前作「東京流れ者」は鈴木清順監督)
後半の謎の男は、先日見た「226」のとき検索して知った、北一輝。二・二六事件の思想的指導者として銃殺刑になってる。脚本にはなかったが鈴木清順が勝手に追加したらしい。唐突な展開の道子さんのパートと合わせ、のどかなバンカラの時代から急変する世の中を暗示。実現しなかった続編の脚本では、麒六は兵隊として中国へ向かったらしい。
・「けんかえれじい」といえば、1973年、NHKの少年ドラマシリーズで見たことある。拳を鍛える「豆の袋から小石の袋へ」くらいしか覚えてないけど、とても面白かった印象。
・ここまで日活プラスを何本も見てきたけど、どれも画質がきれい。フィルム粒子まで見える。
●青い山脈(1962年) 1:36 日本 Amazon(日活プラス)
ある城下町、戦前の雰囲気が残る厳格な女学校に転校してきた新子に、不純交際の噂が立つ。新子にラブレターが届くが、クラスメイトたちの陰謀と判明。新時代の若者たちと旧時代の大人たちの対立に、町のボスも乗り出してきて大騒動に……というコメディ。
監督:西河克己、出演:吉永小百合、浜田光夫、芦川いづみ、田代みどり、高橋英樹、藤村有弘、二谷英明、南田洋子、他。
こちらも意外なほど面白かった。これもアイドル映画みたいなもんなんだろうけど、みなさん瑞々しい! 吉永小百合17歳でも風格あるなあ。スーパーカブでさっそうと登校! 「けんかえれじい」よりさらに若い高橋英樹! 芦川いづみ、きれい! 他、有名俳優たちがめちゃ若い!
昔の映画っぽくなくてちょっと拍子抜け。登場する俳優たちを見れば確かに昔の映画だけど、美しいカラーの画面は、「昔っぽく撮った新しい映画」と言われたら信じてしまうかもしれない。
・1949年・1957年・1963年・1975年・1988年の5回も作られてるそうで、とりあえず最初の1949年版はこの後続けて観た。
・家庭科教師の北林谷栄、おばあさんかと思ったら「48歳の今日まで」のセリフで驚いた(撮影時51歳)。老け役で有名な女優さんだったのね。
・なんか難しいことを言って煙に巻く高橋英樹って、吾妻ひでお「ふたりと5人」の哲学的先輩のルーツ?
・「ミヨちゃんのためなら全員集合!!」(1969年)のタイトルバックの自転車シーンは、オマージュなんだろうな。
・細野晴臣「夢見る約束」、ゲルニカ「銀輪は唄う」も主題歌のオマージュだろう。
●青い山脈(1949年) 1:39
●続 青い山脈(1949年) 1:24
監督:今井正、出演、原節子、池部良、若山セツ子、杉葉子、他。
こちらは東宝作品。1時間半の映画なのに話がなかなか進まず、「あれ〜途中で終わっちゃう?」と思ったら、前後編に分かれてる実質3時間の映画なのだったw 当時、続編は一週間後に公開されたそう。
戦後の民主的な新しい時代の讃歌。1962年版は同じ脚本を使いながら、あちこち工夫を加えてコメディとしてグレードが上がってる感じ。13年後の1962年版で感じた「時代に微妙に合ってない違和感やわざとらしさ」は、1949年版の脚本そのままだからか。
おおまかに、1962年版で追加されたのは「藤村有弘が演じた体育教師の派手な伏線回収」と「新子の家の鶏舎関連のエピソード」。これらを加えて面白くなってるし深みが出てるにもかかわらず、1949年版の半分の上映時間に収めたのはすごい。
「青い山脈」という文字を見て頭に浮かぶ、「空気遠近法で青く霞んだ画面いっぱいの雄大な山脈」は一切出てこないw 主題歌の歌詞にも表現されてるけど、若い世代が新しい時代に向かう精神的な象徴だろう。1957年版では映像として青い山脈が出てくるらしい。
・ああそうか、なんで「青い山脈」の歌がこれほど耳馴染みがあるんだろうと思ったら、矢野顕子が歌ってたわ。
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