2025/06/29

最近観た映画メモ「にあんちゃん」他


日活プラスで観たことなかった有名映画を急いで何本か見てしまう特集その4。

●にあんちゃん(1959年) 1:41 日本 Amazon(日活プラス)

昭和28年、佐賀県。在日コリアンの炭鉱労働者の家族。母親に続いて父親も亡くなり、極度に貧しく食うに困った四人兄弟。炭鉱の時代が終わりかけている中、周囲の人たちの助けを借りながら、離散するも懸命に生きる様を描く。

監督:今村昌平、出演:長門裕之、吉行和子、二谷英明、芦田伸介、西村晃、小沢昭一、殿山泰司、北林谷栄、松尾嘉代など、こちらも日活映画レギュラーメンバーが大勢出演。 音楽:黛敏郎

最高! めちゃくちゃ良かった。貧乏だから悲惨な話かと思ったらぜんぜんちがって、明るい! 前向き! 楽しい! と、ホロリ。悪い人は出てこない。大半の場面でニコニコしながら観てたw 長門裕之はじめ、キャスト全員素晴らしい! 子供たちが健気でウルウルしてしまうw

10歳の次女/安本末子の昭和28年ごろの生活綴り方日記をたまたま読んで感動した長男が、末子の反対を押し切って出版社に送って書籍化され、大ベストセラーに。映画化されるほど売れたわけで、貧乏を脱して末子本人は早稲田大学、次男は慶応大学へ!

・美しい白黒画面とマンドリンの音楽からして、「自転車泥棒」(1948年)とかのイタリアの貧乏人の映画を意識してるんだろうな。

・「青い山脈」にも出てた北林谷栄が演じる婆さんが強烈でめちゃ良い。「ビルマの竪琴」(1956年)の物売りも彼女だったんだ。

・撮影時には実際の炭鉱は閉鎖してしまったため、近くの炭鉱町で撮影されたそう。たぶんその町の住人たちがエキストラ参加してるんだろうけど、遠くまで埋め尽くす、すごい人数のエネルギッシュな動きのド迫力! 往年のハリウッド超大作よりすごい!

・今村監督はこれで文部大臣賞を受賞。しかし撮りたかった企画ではなく「健全な映画を撮ってしまった」と反省したんだそうww

・がんばる保健婦さん役、24歳の吉行和子がきれいでカワイイ。声も素敵!

・教室の額の標語が「ピチピチした子供」w

・謎なタイトルだけは昔から気になってて、「ニャンちゃん」かな?「2兄ちゃん」かな?とか考えてたけど、後者で正解、「二番目の兄ちゃん」。もうひとつ気になってたタイトルは「いやいやえん」。「いやいや、エ〜ン」か「イヤイヤ園」か? 後者が正解w

・殿山泰司といえば、ザ・ナンバーワン・バンド(小林克也)の「スクラッチNo.1」のミュージックビデオに出てた(ビデオデッキを買った初期にMTVを録画した)。

●ひとりぼっちの二人だが(1962年) 1:39 日本 Amazon(日活プラス)

SNSにときどき流れてくる「どうやってワンカット撮影したかわからないすごい映像」がファーストシーン。「吉永小百合演じる芸者が舞台で舞ってたはずが、いつのまにか控室で鏡ごしにいる」というアレ。

たぶんこうやって撮ったんだろうという解説(鏡とカメラを連結、着物はあらかじめ左右逆、とか)があったりするけど、実際見ると狐につままれた感w
https://togetter.com/li/1735929

監督:舛田利雄、出演:坂本九、吉永小百合、浜田光夫、高橋英樹、内田良平、他。小池朝雄が普通に出演してるの初めて見たかも。音楽は中村八大や永六輔。

芸者屋に引き取られて育てられた孤児のユキ、「水揚げ」の直前に逃げ出す。追っ手から救ったチンピラの一人は小学校の同級生の三郎だった。隠れることになった劇場にいたのは、やはり同級生のコメディアン志望で雑用係の九太。また、偶然、三郎と知り合いになったボクサーの英二はユキの兄だった……という話。

途中、唐突にミュージカルになるシーンがいくつか。当時はまだ斬新だったんだろう奇抜な演出がちょっと無理。坂本九的には、アニメ映画「ガリバーの宇宙旅行」(1965年)でやはり突然ミュージカル調になるのを思い出した。

冒頭の映像の素晴らしさは格別だけど、以降の本編が面白いかどうかといえば、う〜〜ん、青春、ヤクザチンピラ、ボクシング、ミュージカルなど要素の多さにとまどう感じ。年齢層低めのアイドル映画なのかもしれない。坂本九21歳、吉永小百合17歳、浜田光夫19歳、高橋英樹18歳。

昭和37年の浅草がふんだんに映るのは貴重。地元の人は感激だろう。花やしきも詳細に撮られてる。あと、渋谷のリキ・スポーツパレスも。街中を走り回るシーンが多いのだが、手持ちカメラでブレブレなのが残念。空気が悪くて霞んでる。

・これにも「手を潰してボクシングできないようにしてやろうか」パターンが出てくる。

・同時上映は何か調べると、石原裕次郎の台湾ロケ映画「金門島にかける橋」。特に低年齢層向けではないようだ。

・映画館にマックイーンの「突撃隊」(1962年)の看板!

●あゝひめゆりの塔(1968年)日本 Amazon(日活プラス)

運動会に沸く沖縄の師範学校。米軍上陸が迫り、陣地構築に駆り出されるなど、穏やかな日々は終わりを迎えつつあった。卒業式の日、ついに看護部隊として軍に動員され……という話。

監督:舛田利雄、出演:吉永小百合、浜田光夫、和泉雅子、二谷英明、渡哲也、他、日活青春スター総出演。

若者を否応なく現代から20年前の戦時へ連れていくような構成。中高生の年頃の、吉永小百合をはじめとするひめゆり学徒たちが、戦時とはいえまだ青春真っ盛りの日常から激戦の地獄へ突き落とされる様を、ものすごくストレートに描く(しつこかったりゆるかったりする部分もあるけど)。ひねってないため、やはりストレートにズシンと来るよ。

吉永小百合の役は、今ならなんだかんだで反戦思想を感じさせるキャラにするであろうところを、あくまで当時の軍国教育に芯まで染まってる少女として描いてる。哀れを誘う。

・校長先生役の中村翫右衛門がとても良かった。

・冒頭の「相思樹の歌」のエレキバージョン、「テルスター」みたいで良いw

・戦車や飛行機は映るけど、米兵は出てこない。見えない恐怖(思い込みによる恐怖も含め)に追い詰められる感じが良く出てる。

・どうしても気になった件。機銃掃射など何度も登場する米軍の双発・双尾翼機がそれらしくない民間機に見えてしまう。検索すると、たぶんビーチクラフト C-45か(F6Fは特撮で登場)。

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