日本ディスクライブラリー「映画音楽大全集」という12枚組のLPレコードボックス。新旧の優れた映画音楽や主題曲などを集めたものが家にあった。たぶん1974年後半の発売で、「ゴッドファーザー」(1972年)や1974年6月日本公開の「スティング」(1973年)が最新映画扱い。
LPジャケットサイズのブックレット(黄色い表紙)でそれぞれの映画について詳しく解説されており、写真も豊富。執筆は淀川長治はじめ有名映画評論家の面々。このブックレットが僕の映画好きの入り口になった。144本中、たぶん半分も見てない。残りは「なぜか観てないけどずっと気になってた映画」になってる。
今回はそんな映画特集。今後そういうのを時たま混ぜていくつもり。配信されてないものも多いけど。
●黒いジャガー(1971年) 1:40 アメリカ U-NEXT
ブラックパワー映画とかブラックスプロイテーション映画の代表とされる。タイトルバックの主題歌は主人公シャフトの讃歌「強くてかっこよくてモテモテの黒人私立探偵は誰?」「シャフト!」w
NY警察も一目置く黒人私立探偵のシャフト。犯罪組織のボスのバンピーから誘拐された娘の救出を依頼されるが、マフィアが絡んだヤバい案件だった……という話。
ちょっとカッコつけすぎかなとも思えるけど、普通に見れる犯罪アクション映画だった。1970年頃の「俺のかっこいい部屋」もたっぷり見れる。ただ、画面のコントラストがきつくて黒くつぶれた部分が多く、見づらかった。
大勢の仲間といっしょにビルに押し入るクライマックス、それまでのトーンからガラッと変わって、精緻な作戦を実行するチームものになってて、ちょっと違和感あった。え?いつそんな作戦練った?みたいな。
あれ? レコードに入ってた曲が出てこない。「映画音楽大全集」の解説をあらためて確認したら、載ってたのは続編の「黒いジャガー/シャフト旋風」だったorz……こちらは配信に見当たらず。でも、第一作の主題曲はアカデミー歌曲賞を取ってるんだけどな。
・冒頭、街にいくつも見える映画館で上映中の映画のタイトル文字に「THX1138」が!
●バラキ(1972年) 2:05 イタリア・フランス・アメリカ U-NEXT
1962年、服役中のマフィア、バラキ。同じく収監中のボスからの刺客と勘違いして無関係の男を撲殺してしまう。家族の安全とボスへの復讐から司法取引に応じ、「血の掟」を破ってマフィア「コーサ・ノストラ」の何十年にも及ぶ血塗られた過去を捜査官に証言し始める……という、実録もの。
「007」シリーズのテレンス・ヤング監督、チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラ、ジョセフ・ワイズマンなど。「セルピコ」の著者ピーター・マーズによる原作で、同じくディノ・デ・ラウレンティス製作。
前半、現在と回想の区別がつきにくく混乱する。また、シーン内の会話なのか、捜査員との会話のボイスオーバーなのか、どちらかわからなかったり。そもそも字幕の情報が少なすぎてわかりにくい。自分の理解力や集中力が足りないのかと心配になったけど、明らかに意味不明な字幕が多すぎる。字幕がポンコツなんだな、と安心したw
字幕について、同意見の人↓
https://filmarks.com/movies/6268/reviews/152701597
ブロンソンはもちろん、イタリア語で話してる俳優含め、あらためてイタリア語でアフレコしたらしい(フランス俳優代表リノ・ヴァンチュラがイタリア生まれとは知らなかった)。登場人物がどれも似たような声で、今誰が喋ってるのか区別できない。数人で全部の役をやってるのかもしれない。日本語吹き替え版で観なおしたい。
……なので、よくわからなかった、という感想。たぶん詳しかったら実名で大勢登場する有名なマフィアに「おお!」と思うんだろう。同時期の「ゴッドファーザー」とくらべるのも酷だろうけど、パッとしなかった印象。
その時々のボスから重宝されてだんだん地位を得ていくのを回想する構成は「アイリッシュマン」(2019年)みたいな感じも。司法取引で内情をバラすのは「グッドフェローズ」(1990年)もそうだったな。
・甘い主題曲はレコードを聴いてた昔からかなり好き。
・1930年頃のギャング抗争のカーアクションの遠景に蛍光灯のついた近代的なビルがw 道には70年代のクルマが走ってるし。
・発音は「バラチ」に近い。あと、「ばらき」の変換候補に「茨城」が出る。
●おもいでの夏(1970年) 1:44 アメリカ U-NEXT
「シャイニング」(1980年)でオーバールックホテルの一階でダニーが見てるテレビ(ケーブルがつながってない!)に映ってるのがこの「おもいでの夏」。先日の「ROOM237」でも紹介してた。
ロバート・マリガン監督。ジェニファー・オニール、ゲイリー・グライムズ、他。音楽 ミシェル・ルグラン。
1942年の夏休み。家族で島へやってきた15歳のハーミーが友達と遊んでたところ、見かけた現地の若い人妻ドロシーに一目惚れする。その夫が出征した後、ハーミーは意を決してドロシーに近づく……という話。「ひと夏の経験もの」だけど、直接的な描写はない。
ミシェル・ルグランのテーマ曲の印象から、ロマンチックなものを予想してたら……ぜんぜんちがった。もちろんロマンチックでもあり悲劇でもあるんだけど、割合としては、4分の3がイタタタ系のコメディ。
ひねりがなくストレートに、忘れてたあの頃の気分をえぐってくるw 恥ずかしさや気まずさの嵐。「うわああ、もうやめてくれ、かんべんしてくれ〜」って感じ。悶絶系というか、絶叫系というかw
恥ずかしさの大半は、主人公の俳優ゲイリー・グライムズの顔や表情にある。よくこんな絶妙な顔の少年を見つけてきたなあ。かつて自分が少年だったイメージを投影しやすい顔なんだろう。俳優としてはすぐ引退したとのこと。
・スネークマンショーの「これなんですか」の元ネタかもしれないw
・なぜ「シャイニング」で「おもいでの夏」が使われたのかは不明らしいけど、こういう説も↓
https://kubrick.blog.jp/archives/52370185.html
・↑ ただ、冬の映画に夏の映画を対比させるとはいえ、クライマックスから数日後の終盤、枯れ草ばかりの寒々しい風景になってる。「子供時代は永遠に終わった」的な表現?
・映画内でレコードをかけるとミシェル・ルグランのテーマ曲っての、やめてほしい。時代が合わなくなるし映画と現実の境界線が曖昧になる。「鷲は舞い降りた」で、ラロ・シフリンのテーマ曲を隊員にオルガンで弾かせるやつ思い出した。なんちゅうか、現実に引き戻されてしまう。
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