2024/05/25

最近観た映画メモ「哀れなるものたち」他



●哀れなるものたち(2023年) 2:23 イギリス・アメリカ・アイルランド Disney+

ビクトリア朝っぽい架空のロンドン。フランケンシュタインのような医学技術が実現している世界。橋から投身自殺したばかりの妊娠女性を見つけたバクスター外科医、胎児の脳を女性に移植して生き返らせる。女性は研究対象であり監禁状態だったが、赤ちゃんのような状態からどんどん吸収して成長し、常識に捉われない冷静な決断のもと、「冒険」に乗り出すことになる……という話。

監督ヨルゴス・ランティモス、出演 エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー他。

面白かった! 冒頭からいきなり映画世界に取り込まれてラストまで突っ走ってしまう。グロテスクでブラックなコメディでファンタジー。R18+指定だし。後半の急激な展開〜ラストは何度も「えええ!」と声が出てしまったほどw

女性が無垢のまま急激に成長するとどうなるか? 常識や慣習に縛られずにそのまま現実社会に出ていくとどうなるか? 自立したらどうなる? などのシミュレーション。その様子をどう捉えるかで人間性を試されるような映画なので、かなり疲れるw

エマ・ストーンの成り切りがすごい! もうそういう人にしか見えないw 過激な体当たり演技に驚く。知性を発揮する場面ではミスタースポックの女性版のようにも見えた。それも、自分の中に湧き起こる本能的な感情を客観的に理性で完璧に捉えられるスポックというか。

ウィレム・デフォーも良かった。あのものすごい特殊メイクなのに、大きく暖かい人物って感じしてくる。

・ビクトリア朝時代っぽいいろんな造形物が凝ってる。船も良かった。セットや合成のテイストも含めてスケール感をわざと狭くしてる感じ。舞台のセットみたいな。衣装も面白い。

・娼館の女主人のキャラが最高。「千と千尋の神隠し」(2001年)の湯婆婆はこういった昔からある女主人キャラのオマージュなんだろうけど、奥に隠された赤ん坊まで出てくるのは逆に「千と千尋」へのオマージュ? それとも昔からの定番ネタ?

・変な調子の広角レンズの映像がクセありすぎ。ひょこひょこ歩き回るエマ・ストーンを追ってパンするとちょっと気持ち悪かった。音楽も変w

・もう一人の改造人間を演じてるマーガレット・クアリーって、アンディ・マクダウェルの娘!

●マリリンとアインシュタイン(1985年) 1:48 イギリス U-NEXT

公開当時にちょっと興味あったものの、存在を完全に忘れてた映画。先日何かでタイトルが出てて思い出した。

マリリン・モンロー、アインシュタイン、ディマジオ、マッカーシーなど、50年代を代表する有名人たち(を思わせる人たち)がホテルの部屋で繰り広げる騒動。とはいえ、映画内では涙ぐましいほどに名前を一度も言ってない。邦題はぶちこわしなのかも。

元は舞台劇。原題「insignificance」= 些細なこと・無意味。ニコラス・ローグ監督、テレサ・ラッセル、トニー・カーチス、マイケル・エミル、ゲイリー・ビジー。

マリリンが相対性理論をどう理解してるかをアインシュタインに実演するシーンが圧巻だけど、知的っぽいくすぐりがちょっとウザい感じ。テレサ・ラッセルの演技など全体に大げさでクドくて嫌ったらしいテイスト。わざとだろうけど。

途中で挟まれる短い映像でアインシュタインのトラウマがわかってくる。オッペンハイマーの名前も出る。ラストの幻想シーンは日本人的にはキツイし、やはりクドくてしつこく、長すぎる。

・「カッコーの巣の上で」(1975年)のウィル・サンプソンがエレベーター係として出てる。なんかうれしそうだ。屋上で歌うシーンは染みる。

・ホックニーのコラージュにびっくり! バーのカウンターの横に貼ってあるカレンダーが、ホックニーの有名なキュビズム的コラージュ写真。「50年代を描いてる映画なのに時代が合わないじゃん!」と検索したら、この映画のためにホックニーが制作した作品で、写ってるのはマリリン役のテレサ・ラッセルだったとは! おまけに、テレサ・ラッセルは当時、ニコラス・ローグ監督の妻!

ホックニーの写真1984

●地球に落ちて来た男(1976年) 2:18 イギリス U-NEXT

同じくニコラス・ローグ監督作ということで下のオススメに出てた。デヴィッド・ボウイ出演のSF映画として昔から気になってたので見てみた。キャンディ・クラークも出てる。

ニューメキシコ州の湖に落ちてきた宇宙船。乗っていた男はトーマスと名乗り、いくつもの驚異的な特許をビジネスにして大成功する。ホテルの従業員として出会ったメアリーと親しくなるが、トーマスは別の星に妻子があることを打ち明ける。その星は水がなくなり砂漠化、家族のために水が豊富な地球に来てビジネスで得た巨額のお金でなんとかするつもりだったが……という話。

う〜〜〜ん、よくわからなかった。前半をしばらく見たところで、「これは無理」と思ったけど、とりあえずラストまで見た。「マリリンとアインシュタイン」と同じく、見続けるのに相当な努力が必要。今まで見たカルト映画と呼ばれる映画のどれよりも難物かもしれない。

公開当時は、アイドルとしてのデヴィッド・ボウイの不気味な宇宙人的魅力を堪能できるのが良かったのかもしれないけど。後半でボウイがやたらいじめられるのはアイドル受難のシチュエーションか。

1970年代半ばのアメリカを宇宙人の目を通して見るのはちょっと面白いかもしれない。あと、1976年のSF映画ってことは、「スター・ウォーズ」以前の、70年代の暗いSF映画の一つとして捉えられるかも。

ただでさえ難解な上に、字幕がおかしい。字幕が状況の理解に役立たない。「です・ます調」だったり妙に直訳っぽいし、「然し(しかし)」とか字幕に普通は使わないだろう(コメント欄にスクリーンショット)。日本語がよくわからない担当者が一人で字幕つけてるのかも、という推理は合ってるんじゃないか?

……古い映画の配信用に新しく作られた字幕のほとんどがダメなのかも。

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