大好きな「プロデューサーズ」(2005年)のラストで、二人が手がけたミュージカル/舞台のタイトルがいくつも出る中に「セールスマンの凍死」ってのがあって、そんなネタになるくらいの有名作品ならぜひ見たいと思ってたのだが、U-NEXTにあった。観てみたら……めちゃキツい映画だったw
1985年のダスティン・ホフマン版を見てげっそりしてたら、同じくU-NEXTに1951年版があるのを見つけてしまい、「毒食らわば皿まで」で続けて鑑賞。
●セールスマンの死(1985年) 2:16 アメリカ U-NEXT
アーサー・ミラーの有名な戯曲をそのまんま忠実にテレビ用に映像化。舞台劇を凝ったセットを組んで念入りに撮影したもので、映画ではない。
「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフ監督。ダスティン・ホフマン主演や長男のジョン・マルコビッチはいいとして、次男のスティーヴン・ラングって、「アバター」のクオリッチ大佐!
かつて敏腕セールスマンだった男ウィリー・ローマン。還暦を過ぎ、状況も変わり、今は落ち目。クルマの運転さえ覚束なくなってきてる。心の支えは長男の輝かしい過去と「オレは大物だ」という妄想。彼を支えてきた妻、鳴かず飛ばずで家に帰ってきた長男、チャラ男でクソ野郎の次男。八方塞がりのウィリーは息子たちと共に再起を図ろうとするが……というような話。
allcinemaには「かなりヘヴィな作品なので、体調万全の時に鑑賞する事をお薦めする」と書いてある(おまけに、レビューが一つも上がってない)。その通りだったw これはキツい。「まだマシかもしれない、、がんばらないと」くらいのもんで。
このテレビ作品の前年にブロードウェイでこの役を演じてたダスティン・ホフマン。老け役に挑戦っても、この時48歳なので驚くような役作りではない。ただ、頭おかしくなりかけだし、手を終始ぶん回してどなったり叫んだり、遠くから見る舞台用の演技なんだろうなあ。目の前でやられるとめちゃウザいw 昔のように、小さめのテレビで3メートル離れて見るくらいがいいのかも。
・「マルコヴィッチの穴」(1999年)のWikipediaを見たら、ダスティン・ホフマンがカメオ出演でウィリー・ローマンとして出てるけど、12年前に見たけど覚えてないなあ。。。そのうち見直してみる。
●セールスマンの死(1951年) 1:50 アメリカ U-NEXT
ラズロ・ベネディク監督、フレデリック・マーチ、ケヴィン・マッカーシー他。表現は多少異なるけど、全体の流れもセリフもほぼ同じ。1985年版の脚本はアーサー・ミラーの戯曲をそのまま使ってるようだけど、こちらは映画のための脚本がある模様。
印象はそんなに違わなかった。いろいろわかった上での二回目なので、細部に目が行き届く感じ。1985年版のほうが映像的に豊かなのはしかたない。ラストの「ダイヤモンド」はこちらのほうが好きかな。
ダスティン・ホフマンは、「ああ、この人ずっとこんな調子でやってきたんだなあ、かわいそうに」って感じですでに頭がおかしくなりつつあるように描かれてた。対して、フレデリック・マーチは「力強い父親だった」感じを残してるので、自分の置かれてる立場を「あれ?おかしいな?こんなはずじゃ?」ってニュアンスがあるし、狂気感は薄い。ケヴィン・マッカーシー演じる長男はマルコビッチの繊細な感じにはおよばないかな。
●地獄のデビル・トラック(1986年)
「セールスマンの死」2本を観た後、なるべくバカっぽい映画を観たい!と思ってたら、Nさんがシェアしてた画像が「ザ・カー」(1977年)、ああそういう映画あったな、「クリスティーン」(1983年)と印象混じってたわ、と思いながらWikipediaを確認したら、下に同類の映画として「地獄のデビル・トラック」(1986年)! そうそう、ひどい映画と言われたこれ、ずっと見たかったんだ。最近のU-NEXT、何でもあってすごい。
短編集「深夜勤務」の一編をスティーブン・キングが自ら脚本/監督。冒頭には本人登場。出演はエミリオ・エステベス他。新婚旅行中の妻役のイヤードリー・スミスはシンプソンズの娘リサ役の声優。やかましいけどおもしろい。全部もっていくw
地球が彗星の尾に入ったとき、あらゆる機械が人間を襲い始める。電光掲示板が悪態をつき、跳ね橋がコントロール不能になったのをはじめ、飲み物の自動販売機や芝刈り機、そして自動車が襲いかかってくる。あるドライブインにいた人々はトラックに囲まれて動けなくなり、次々に犠牲者は増えていく……という話。キングの趣味だろうAC/DCの曲が全編で鳴りまくってる。
あのスチル写真、「フロントに微妙に不細工な緑色の悪魔の顔がついたトラック」。地獄の悪魔がとりついたトラックにしては安っぽすぎると思ってたけど、単にドライバーが趣味でデコレーションした作り物のゴブリン。トラックたちのリーダー格ではあるけど、顔は象徴的な意味しかない。
途中まで「バカ映画かと思ったら、意外にまともかもしれん」と思いかけてたけど、そうでもなかったw 「クリープショー」(1982年)のような悪ノリ映画を作ろうとしたけど、割とまともに撮ってしまい、中途半端になってしまった感じか。それでも、ポテトチップを食べながら、画面を指差してギャハハと笑いながら見るのには悪くないと思った。「キング自身は失敗作だと認めている」とのこと。
よくある「ドライブインやスーパーマーケットに籠城する人々の人間模様」や、70年代以来のアメリカの田舎を舞台にしたクルマ映画の感じ。それらしい味があってよかった。
ドライバーの姿が見えないトラックの恐怖はもちろんスピルバーグの「激突!」(1971年)、似せたショットがいっぱいある。無数のトレーラートラックの描写は「コンボイ」(1978年)も混じってる。(「コンボイ」はまったく迫力がなかったなあ)
・エミリオ・エステベスって「ヤングガン」(1988年)くらいでしか見たことないけど、すごい大物俳優の風格がある。マイケル・ダグラスとかマーティン・シーンみたいな。
・撮影のアルマンド・ナンヌッツィって、ヴィスコンティ映画を2本も撮ってる人なんだ。。。ええ〜。
・タイトルバックのトップに「ディノ・デ・ラウレンティス」、あれ?そんな大物が。しかし、なぜかラウレンティスのキャリアにこの映画がない。調べたら、なんだ、ラウレンティスの制作会社「ディノ・デ・ラウレンティス」が手がけた映画ってことだった。
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