2020/05/01

最近観た映画メモ「ヒッチコック」他

間違えられた男(1956年)
ヒッチコック/トリュフォー(2015年)
ヒッチコック(2012年)
鳥(1963年)

70年代に戻るために古い作品をどんどん消化するつもりだったはずなのに、ヒッチコックに捕まってしまった。

●間違えられた男(1956年)

ヒッチコック監督、ヘンリー・フォンダ主演。妻と二人の子供と暮らす貧しいバンドマン、妻の歯の治療費を借りようと保険会社を訪れたところ、以前入った強盗と瓜二つだったらしく通報され、逮捕されてしまう。保釈後、無実を晴らすため、弁護士(アンソニー・クエイル)を雇うが、困難は続く。妻は精神を病み始める、、、という話。実話だそう。

エンドマークが出た瞬間思ったのは「何だこりゃ?」だったw 実話を忠実に映画化したならしょうがないんだろうけど、証拠や証人についてのバランスがすごい変。逆に作為的というか。「事実は小説よりも奇なり」か。黒幕がいるんじゃないかとか、記憶に無いだけで本当はやったんじゃないか?とか、フィクション的に惑わされてしまう。

ストーリーは奇妙な感じだけど、ヒッチコックは淡々とテクニックを発揮するって感じ。かわいそうなおじさんを
演じるヘンリー・フォンダはとても良かった。特に、途中で釈放されるまでの「狐につままれた感」は最高。自分に降りかかる運命へのリアクションの表情を見てるだけでもつ。アンソニー・クエイルはいい役な割にそれほど見せ場は無かった。

●ヒッチコック/トリュフォー(2015年)

ヌーベルバーグの旗手としてのトリュフォーがヒッチコックを1966年にインタビューした「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」の音声と写真や映像、ヒッチコックに影響を受けた有名監督たちのインタビューで構成されたドキュメンタリー。

予定外だったけど、しばらくヒッチコック作品を見る予定がないのでこのタイミングで観ておこうと。ヒッチコック作品はU-NEXT等に古いもの含め多数あって、ヒッチコック全作品制覇とかやってたらちっとも進まないので、リスト消化後に回す。トリュフォーの配信はほとんど無いのが残念。

セリフではなく映像の力。サイレント映画が理想、と。いろんな事例が語られる。元の本を読みたくなった。大衆向けスタジオ映画監督で、観客を楽しませること最優先のヒッチコックを、「映画作家」として世界に再認識させたのがトリュフォーだったんだ。観てないヒッチコック作品を一気見したくなってきてヤバい。っていうか、観た作品も見直したくなった。特に「めまい」。

あと、ヒッチコック本人の声や話し方って、熊倉一雄そっくり! っていうか逆なんだけどw 検索してたら、予告編のみ熊倉一雄が担当した「ヒッチコック」って映画があるのね。観なきゃ。

●ヒッチコック(2012年)

アンソニー・ホプキンスがヒッチコック役! 過去の監督とみなされつつあったヒッチコックが起死回生を図って「サイコ」を撮り、試写の大不評を編集でなんとかし、公開に漕ぎ着けるまでの話。それも、スタジオに出資を断られたので自宅を抵当に入れてまで自腹で。

パッと見、太ったアンソニー・ホプキンスでしかないんだけど、表情や動きですぐにヒッチコックに見えてくるのがさすが。「ニクソン 」でも同様だった。調べたら、この作品は特殊メイクでアカデミー賞ノミネートされたらしい。カズ・ヒロが手がけたらもっとすごかっただろうなとか思っちゃう。

特殊メイクについての記事とメイキング映像があった。あえて似すぎないようにしたそう。
https://www.narinari.com/Nd/20130421175.html

奥さんのアルマ・レヴィル役はヘレン・ミレン。ほっぺたに何か入れて顔はかなり寄せてるけど、上のドキュメンタリーで見た本物はかなりの小柄なんだよなあ。あと、アンソニー・パーキンス役の人が顔も動き方もそっくり! ジャネット・リーを演じるスカーレット・ヨハンソンはヨハンソンにしか見えないけど、いい役。

「サイコ」が一般公開されるクライマックス、観客の感情を思い通りに操ることに成功したヒッチコックの喜びが伝わってくる。うるうるしちゃったわw 苦悩や困難を乗り越えて「あの作品(映画に限らず)」を作る過程を追う映画っていくつもあるけど、大好き。最近だと「ウォルト・ディズニーの約束」があったけど、よかったな。ジョージ・ルーカスが最初の「スター・ウォーズ」を作る話の映画が観たい!

シャワーシーンのあの音楽にそんな経緯があったとは!

●鳥(1963年)

ヒッチコックの未見作品をこのタイミングで網羅して観るわけにもいかないので一本だけ。鳥が人間たちを襲い始める話。昔、1973年10月5日のゴールデン洋画劇場で観たはず。やっぱ47年も前の印象とはずいぶんちがう。

当時は子供として先入観なしに恐怖ものとしてだけ観たけど、主人公や彼の家族や昔の恋人などしっかり人間関係が描かれてて、その微妙な不安につけ込む異質な恐怖って感じか。ヒッチコック的に、「サイコ」の大成功の後にぜったいウケる斬新な題材として鳥が襲ってくる恐怖を選んだんだろう。

人間由来の怖さやサスペンスは控えめというかほとんど無しなので、ちょっと甘い感じにも思えた(彼のお母さんはちょっと怖いけどw)。動物パニックものやゾンビものなど、いろんな作品のルーツになってるから、いろんなシーンが見慣れたものになってるのはしかたない。逆に、古さを感じなかったりする。

構図や演出や絵作りはそりゃもう素晴らしい。ジャングルジムや、流れたガソリンに火がつく3段階に分けたティッピー・ヘドレンのカットは最高w 1963年作品としては特撮も相当なもの。「サイレント映画が理想」って「ヒッチコック/トリュフォー」で言ってたけど、後半の家での来襲シーンなんか、ずっとセリフがなくほぼサイレント映画のように映像だけで見せる演出になってる。

ただ、鳥の声の効果音がイマイチ。かなり怖い音だけど、歪み方などちょっとわざとらしくて「鳥の鳴き声を素材に、がんばってテープ編集して作った効果音」な感じが前面に出ちゃってるのが惜しい。調べたら、シンセサイザーの前身のような機械で作った音らしい。

11歳の妹の兄さんとしては年取りすぎなロッド・テイラー、この時32歳くらいか。ティッピー・ヘドレンも同い年。妹役のヴェロニカ・カートライトがかわいい(「エイリアン」にも出てた。実の妹のアンジェラ・カートライトは「サウンド・オブ・ミュージック」やテレビの「宇宙家族ロビンソン」に出てて、やはりめちゃくちゃかわいかったなあ)。以前の恋人で学校の先生はちょっと場違いなくらいクラシックな美人タイプのスザンヌ・プレシェット、「ネバダ・スミス」に出てた(「千と千尋の神隠し」の吹き替え版で湯婆婆やったそう)。

新型コロナの今観ると、家に篭城する家族の状況が身近で怖い。

ところで、2015年に亡くなったロッド・テイラー。どういうわけか、1999年にメールをもらったことがある。「いいホームページだね」って。映画「タイムマシン」の案内サイトのリンク付きで。「本当に本人なのか?」って確認したら「もちろん!」だそうだけど、今となっては不明。

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