2020/05/08

最近観た映画メモ「博士の異常な愛情」他

死刑台のエレベーター(1957年)
お熱いのがお好き(1959年) 2:21  U-NEXT
リオ・ブラボー(1959年)
博士の異常な愛情(1964年)
未知への飛行(1964年)
夜の大捜査線(1967年)

ここまでで一応、70年代以前の映画を追加した分は終了。今ちょっと特殊な映画を60〜70年代にかけてシリーズ5本観るのを進行中。その後で70年代をちゃんと再開する予定。

●死刑台のエレベーター(1957年)

ルイ・マル監督。ジャンヌ・モロー、モーリス・ロネ、リノ・ヴァンチュラ。音楽はマイルス・デイビスが即興でつけたそう。

社長の妻と社員の不倫カップルが、邪魔な社長を殺す完全犯罪を計画。証拠を残したことに気づいた男がビルに戻るも、たまたま電源を落とされてエレベーターに閉じ込められる。待ち合わせに現れない男を探して夜の街をさまよう女。一方、男のクルマを乗り逃げした無軌道なチンピラカップルは、、、って話。

面白かった。ちょっとした偶然から思わぬ方向に転がっていく系。重大なツッコミどころはいくつもあるけど、25歳で撮ったデビュー作とのことで、瑞々しい感じはした。夜のシーンも含め、なんかきっちりした清潔な白い画面。マイルス・デイビスの音楽はちょっとクドい。

●お熱いのがお好き(1959年) 2:21 U-NEXT

ビリー・ワイルダー監督、トニー・カーティスとジャック・レモンとマリリン・モンロー。声が広川太一郎と愛川欽也と向井真理子。こりゃ楽しい。「ショウボート」とかに出てたゴムみたいな笑顔のジョー・E・ブラウンも出てる。

シカゴ。有名な「聖バレンタインの虐殺」を
目撃してしまったバンドマンの二人がマフィアに追われ、女装して女だけのバンドに潜り込む。成り行きがかなり面白く、考えられてるなあって感じ。ちゃんと笑えたし、モンローの有名な歌のシーンもある。

なんでカラーで撮らなかったんだろ?と思ったら、「二人の女装が非難されるから」だそう。けばけばしく下品な絵になった可能性はあるな。しかし、カラーで見たかったな。

ギャング映画に出てた俳優ジョージ・ラフト他、たぶん取り巻きもギャング映画の常連の人を集めたんだろうな。顔に見覚えがあったりする。グレープフルーツのネタもちゃんとわかった。

●リオ・ブラボー(1959年)

ハワード・ホークス監督、ジョン・ウェイン、ディーン・マーチン、歌手のリッキー・ネルソンはアイドル枠? 音楽がディミトリ・ティオムキン。「真昼の決闘」で一般市民に加勢を求めてまわって断られる孤立無援の保安官の逆をやりたかったそう。殺人罪で逮捕した男の兄が大勢の手下を連れて町にやってくる。仲間はわずかで多勢に無勢。連邦保安官に引き渡すまで持ち堪えられるか?って話。

たぶん中学生くらいときに観たはずだけど、まあほとんど忘れてた。テレビで見たビートたけし初主演の映画「すっかり…その気で!」(1981年)の中で、ライフルを投げて受け渡すシーンのオマージュ的なものがあって、「お、わかってるね!」的なエピソードがあったような気がする。

「歌あり恋ありの痛快西部劇」とのことだけど、壮大な西部の風景は冒頭のタイトルバックのみ。後半までほとんど派手なアクションは無いし、かなり地味、というよりのんき。クライマックスもびっくりするほどあっさり。娯楽映画がどぎつくなる前の作品なんだなあ。2時間21分とけっこう長いし(なぜか、上の「お熱いのがお好き」と同じ上映時間、同じ制作年w)。音楽はさすがによかった。テーマ曲もいいし、「皆殺しの歌」も。

●博士の異常な愛情(1964年)

キューブリック監督、ピーター・セラーズが三役を演じる。ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン。気が狂ったアメリカ軍司令官が出した爆撃命令により、数十機の戦略爆撃機がソ連の目標へ向かう。ソ連は爆撃を受けると自動的に起動して人類を滅亡させる「皆殺し装置」を持っていると判明。大統領の戦略会議室は緊張に包まれる。。

やっぱめちゃくちゃ面白かった。B-52と背景の合成がイマイチな以外は完璧映画。ちゃんと通して観たのは学生ときの深夜マラソン上映以来かも。

ピーター・セラーズの三人の演じ分けがイイ。前作「ロリータ」では出演シーン全部がセラーズの独演会みたいな面白さだったけど、その×3だもんね。爆撃機の機長も演じる予定だったが、アクシデントで中止になったらしい。

最初はシリアスな映画として企画されたけど、脚本執筆中にコメディとして書き直していったそう。捉え方なんだろうな。エキセントリックな人物は何人も出てくるけど、基本的に誰もふざけてなく、笑わそうともしてなく、真面目に立場をまっとうしてたり、真面目に狂ってるだけでw その状況がコメディになってしまうのは、人類そのもののおかしさ。

タイトルバックとエンドタイトルが本当に素晴らしい。

飛行士の一人がジェームズ・アール・ジョーンズ! ダースヴェイダーの声の人。「フィールド・オブ・ドリームス」とかにも出てる。

●未知への飛行(1964年)

シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ 、ウォルター・マッソー。「博士の異常な愛情」と同じ題材、同じ制作年。こちらはシリアス。二本続けて観た相乗効果もあって、かなりおもしろかった。

コンピュータの誤った指令でモスクワに向かう戦略爆撃機。引き返すよう呼びかけても無視するよう訓練されてるのも同じ。「博士の」同様、先制攻撃のチャンスと捉える人もいたり、ネタもストーリーもほぼ重なる。ソ連に対して誠意を見せ、全面核戦争→人類滅亡を防ぐための究極の選択肢! 「これはフィクションであり、このような事態が起きるのはありえない」と字幕が出るのも同じw

爆撃機やミサイルなどの不鮮明な流用映像は入るものの、ほぼ全編が室内の会話劇で、絵的には地味。大統領役のヘンリー・フォンダの熱演は見応えある。この映画では悲劇の方向へ振ってはいるけど、やはり「ものすごいバカなことをやってる人類」を素直に撮れば、ブラックユーモアの方向に行くのは自然。ウォルター・マッソーの役なんか「博士の」のほうにいても違和感ないし。

デルタ翼の戦略爆撃機B-58って、知らなかった。テキトーな戦闘機の映像を爆撃機に見立てたのかと思ってたら、本当にあるのね。

●夜の大捜査線(1967年)

ノーマン・ジュイソン監督。シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ。人種偏見がひどい南部の街、列車の乗り換えのために降りた凄腕黒人刑事。たまたま町の有力者が殺された事件が起きており、容疑者として連行される。テキトーな捜査と冤罪量産みたいな素人ばかりの田舎の警察署。誤解を解いた後、あからさまな差別の中で捜査に協力することになる。

胸糞悪いw 差別ひどいな。奴隷制時代そのままに綿花のプランテーションがあったり、家畜的な扱いだったり。ロッド・スタイガーの署長も究極の差別主義者だったが、ポワチエの実力もあって、次第に変化せざるを得なくなってくる。世間体と本心の葛藤の演技がイイ。

面白かった。「公民権運動が盛り上がる中でキャスト・スタッフ共々自発的に参加」、だそうで、こういう映画が必要!という時代だったんだろうな。犯罪捜査ものというかミステリー的には、あっちこっち迷走した末の、え?あんな決着でみなさん納得できるの?って気はした。

クインシー・ジョーンズの音楽はちょっとクドいというか、音量や音響がガラッと変わるのがやかましかった。ただ、音楽や画面の色合いや雰囲気、最近観続けてきた大昔の映画ではなく、70年代に近づいた感じがすごく新鮮だった。

0 件のコメント: