2020/05/13

最近観た映画メモ「猿の惑星」シリーズ

猿の惑星(1968年)
続・猿の惑星(1970年)
新・猿の惑星(1971年)
猿の惑星・征服(1972年)
最後の猿の惑星(1973年)

なかったことになってるティム・バートン版や「猿の惑星: 創世記」からの新三部作は観た。そういえば元祖「猿の惑星」って子供の頃以来ちゃんと観たことないな。5本見ると円環構造につながった話になってるそうで、そのうちあらためて観てみようと思ってた。イレギュラーに入れ込んだこの5本(68年〜73年)を見終わったので70年代に戻るのだが、よく見たら次に見るのが74年作品なので、たまたま正しい並び順になったわ。

●猿の惑星(1968年)

ちゃんと通して観たのはたぶん1975年以来かも。フランクリン・J・シャフナー監督、チャールトン・ヘストン主演。DVDパッケージでネタバレしてたりするラストのアレはマジに驚愕だったw 

全1時間52分中、宇宙船不時着から砂漠を経て、ヘストンが猿たちに捕まるのが35分くらい。けっこうそこまで長いのね。テレビではカットされてたかも。猿の国にいるのが50分くらいで、慌ただしく、すぐに逃亡の旅へ。小学生ときの記憶では、捕まってジーラ博士たちと会って裁判やって逃げ出すまでのエピソードの印象が薄かったんだけど、たしかにエピソードは少なく、けっこうシンプル。あとは遺跡の
話とあのラストシーン。

捕まる前と逃亡後は大自然ロケなのに、宇宙船の中や猿の国はセットが異様に安っぽいのも記憶通りw 猿の国のスケールが非常に小さく、村サイズ。人口300人くらい?w 特殊メイクも今の目ではシンドイ。68年って猿人も宇宙船も今の目にも耐えるものが出てきた「2001年宇宙の旅」が公開された年だ。

原作者のピエール・ブールの話(フランス人で、日本軍に捕まって捕虜になった経験から、白人と有色人種の逆転という発想。同じく「戦場にかける橋」も)を知っちゃってたので、素直に見れるか心配だったけど、ジーラ博士たちや、特にザイアス博士なんか本質的に賢く描かれてる。

↑っていうか、あらためてWikipediaなど見たら、フランス軍→反ナチ自由フランス軍の兵士(というか諜報員)だったピエール・ブールは日本軍に捕まった可能性はあるが、捕虜になってたのは(ナチス傀儡の)ヴィシー政権の収容所らしい。「日本人を猿に見立てた」とは本人は言ってなく、推測の範疇だそう。まあ、収容所の看守など要員が現地のアジア人だったとしたら、何か思うところあったのかも。ただやはり、60年代の映画としてはやはり黒人の人種差別や公民権運動を反映したものと見るのが自然。

テレビは73年と75年に放映があり、たぶんどちらも見た。コーネリアス博士の声は山田康夫より近石真介の印象が強い。当時、テレビ放映の影響で「猿の軍団」という和製ドラマが作られてて、なんか「真似っこじゃーん」とか思ってちゃんと見たことなかったのだが、Wikipediaによれば小松左京はじめ一流SF作家が参加した本格的なものだったらしい。

●続・猿の惑星(1970年)

これも昔テレビで観た。こちらのラストも衝撃的だったな。ジェームズ・フランシスカス主演だけど、チャールトン・ヘストンやノバ役のキム・ハンター、猿役の俳優の大半も引き続き出演。

生き残り人類のミュータントと猿の最終戦争的なラストのアレなわけだけど、昔観たときと違って、やたら珍妙な印象。全編、興味深いしネタ満載だけど、お話としてはあんまり面白くはなかった。特殊メイクが主要な猿以外めちゃくちゃ雑w 背景の書き割りも雑。過去の核戦争の結果としてのニューヨークの廃墟やミュータントのイメージはそれなりに怖いけど。

なんか不自然なストーリーは、Wikipediaによれば、続編に出るのを渋ったヘストンのせいらしい。出演時間を減らすことと最後に死ぬことが条件って。それでああいうことになったのか。。

猿の惑星シリーズはどれも当時の社会情勢を織り込んだところがイイということだった。第二作ではベトナム反戦運動が反映されてる。ただ、唐突だし、あからさますぎて「チンパンジーたちがプラカードや旗を手に反戦デモ」ってカリカチュアな見た目になってしまってて、洗練された表現ではない。

コバルト爆弾って非常に怖い核爆弾って漠然としたイメージだったけど、先日の「博士の異常な愛情」の「皆殺し装置」もそういうものだったらしい。核爆弾をコバルトで覆い、強い放射能の灰を広い範囲に撒き散らすもの。この映画でも「cobalt casing bomb」って言ってる。これらの映画を含めて地球が一瞬で吹き飛ぶ的イメージだったけど、むしろ放射能でじわじわと全滅していくらしい。。

僕的には音楽がレナード・ローゼンマンってところに注目。アニメの「指輪物語」の音楽がめちゃくちゃ好きなのだが、その後「スタートレック故郷への長い道」で「指輪物語」そっくりというか使い回し的音楽にちょっとあきれたりしてたw 「続・猿の惑星」でも似たようなフレーズや響きの音楽が満載w そういう作曲家なんだ。いや、好きなんだけどね。

●新・猿の惑星(1971年)

前作の地球爆発の影響で、2000年前の地球にタイムスリップしたジーラ博士一行の3人(大きなツッコミどころではあるんだけど、気にしないのがお約束?)。一旦は軍の監視下におかれるものの早々と解放され、猿夫妻はアメリカ中の人気者に。大統領も(選挙のせいもあるけど)猿の味方。女性解放運動も織り交ぜつつ和気あいあいと進むストーリー。ところが、、、って話。

悪役の科学顧問の博士も、人類のためと思えば正しい判断してるわけで、苦しいところ。しかし、本人がパラレルワールド的な仮説を言ってるんだから、「猿に支配される平行世界があってもいいよね」で済ましてもよかったのになあ。

ストーリーの面白さだけで言えばここまで見た3作では最も面白かった。僕が映画で面白いと感じるのは「立場や信念を持った人間の対立」なんだろうな。ラストとその伏線もイイ。「猿の惑星:創世記」のシーザーのあの一言は、これにルーツがあったのか。ゾクゾクっと感動した!

ただ、あのトリックはひどいかもしれないw

前半で出てくるゴリラの着ぐるみがいくらなんでもひどすぎるw 今ならバラエティ番組でももっとマシな着ぐるみ使うぞ。特殊メイクが減ったのもあって、非常に低予算で短期で撮影されたらしい。

第1作も担当してたけど、今作ではジェリー・ゴールドスミスの音楽がやたら70年代風w あと、エンドロール見てて気がついたんだけど、三人目の猿を演じてたのはサル・ミネオだった! え〜!w

●猿の惑星・征服(1972年)

20年後、サーカスおやじに匿われて生き残っていた「話す猿」の息子シーザーが、奴隷として酷使される猿たちのリーダーになって人間に反旗を翻す。前作より製作費を減らされたにもかかわらず、当時の20年後の未来である1991年の描写も安っぽくは見えなかったし、かなり面白かった。

人間に虐げられていた猿たちがついに爆発。密かに準備、力で人間を圧倒。「ヤレー!やっちまえー!」って拍手喝采のカタルシス。黒人の暴動が表現の元なんだろう。シーザーに密かに協力的な黒人もいたりする。

「猿の惑星:創世記」の面白さの元みたいなものだけど、「創世記」の人猿逆転の原因が実験動物や動物園の猿たちの反乱では弱いためかプラスアルファが加えられてた。こちらは「ペット→奴隷」として大量の猿がすでに人間社会で暮らしているという設定がある分、同時多発の反乱が一気に成功する説得力がある。演説はちょっと余計だったかな。

●最後の猿の惑星(1973年)

前作の反乱が核戦争にまで発展して人間世界が壊滅して十数年後。シーザーと仲間たちの猿は町を作って、使役する人間たちともなんとか共存していた。これから世界を指導していく立場に悩むシーザー、両親の記録があることを知って廃墟のニューヨークへ向かう。そこでは生き残った人間たちがミュータントとなって潜伏していた。。。って話。

これまでよりさらに製作費を減らす二十世紀フォックスひどいw ちゃんとセットがあるのは溶解したニューヨークに入るシーンくらいで、あとはどこかの工場内部でロケと、掘っ立て小屋の猿の町。第1作から5年もたつのに特殊メイクの技術的進展なし。

4作目と1作目をつなぐなら、猿の世界の神話としてのこの5作目が必要なのはわかるし、シーザーの葛藤や途中段階としての立法者など、必要なものは全部ちゃんと入ってる。そのへんは悪くないんだけどなあ。猿とミュータントの戦いの表現があまりにもチープで、「これらが後に神話になる」という格調がぜんぜん無いのが惜しいw 蛇足かもしれんけど、接続の役割の超低予算映画とすれば、いい出来なんじゃないかなあ。

あのジョン・ヒューストンが冒頭の立法者オランウータン。武器庫管理人のオランウータンを演じたリュー・エアーズって「西部戦線異状なし」の! あと、背の低いオランウータンにポール・ウィリアムズ(DVDレーベルなどでは主役扱い)。もちろん、全員顔は特殊メイクで見えない。もしかして、このシリーズに猿として出るのがステイタスだった?w 「実はオレ出てるんだぜ」的なw

これも音楽はレナード・ローゼンマン。原始的な荒々しい戦いなどの劇判はやっぱ合うなあ。

◯シリーズを通して、いくつかドキッとする共通のシーンは、「話せないと思われていた人間/猿が、話し始める(声を上げる、自己主張しはじめる)」ところ。バカとか従順と思われてた者にも自己や内面はある、ということ。僕が新三部作「猿の惑星:創世記」で最もドーン!と来たのもやはりそこだった。このへんは差別やいじめなど人間のやらかすいろんな間違いの根源。表現がアレなのはしかたないけど、この5本ももっと見られていいかも。

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