ヒッチコック作品で観てないものをまとめて観る特集。あと3〜4本予定に入ってるけど、しばらく後回しにする。結局、寄り道ばかりでちっとも先へ進めないw
マーニー(1964年)
トパーズ(1969年)
フレンジー(1972年)
●マーニー(1964年)
ヒッチコック監督。職について信用を得た上で金庫の大金を盗む嘘つきで詐欺師の女。たまたま関わった会社社長の男、無理やり結婚してまで、彼女を心理的に支配してるらしい謎のトラウマから救おうと試みる……という話。
面白かった。いつもちょっとウンザリする変に説明的なところは少ないし。多少、釈然としない部分もあるけど。ずっと不穏な感じが続くし、すんごいヒッチコックらしくて良かった。60年代の犯罪・異常心理的なものをネタにしてるので、現代には通用しない部分があるかも。
ショーン・コネリー、ティッピー・ヘドレン、その他母親や義理の妹、小さい女の子、競馬場の男、被害者の社長など、全員めちゃくちゃイイ。役にハマってる人たちばかり。ブルース・ダーンが小さいけど重要な役で出てる。
ショーン・コネリー、「今回はジェームス・ボンドじゃない」を常時意識に置いておくのがむずかしいw ちょっと魅力的すぎて物語から浮いてる感はある。ティッピー・ヘドレン、下手と書かれてることもあるけど、精神不安定でちょっと取り憑かれてる感じが良かった。特にクライマックスの変貌はドキッとした。コネリーとヘドレンを鑑賞するのなら、ストーリー関係なく素晴らしいと思った。
バーナード・ハーマン節全開w の音楽に続くファーストシーン、黄色いバッグを抱えた女の後ろ姿と駅、心を鷲掴みされた。めちゃカッコエエ! その他、絵というか構図、映像として「イイ!」ってところがいっぱいあった。港町や狩りのシーンや、金庫の金を持ち逃げするのを遠くから撮るところとかあちこちに。
●トパーズ(1969年)
ヒッチコック作品としてはイマイチと言われてる映画。ソ連高官がアメリカに亡命。キューバへのミサイル供与の情報が出るが、アメリカ政府としてはピッグス湾事件の影響で情報網を絶たれていて確認できない。それで主人公のフランス人スパイにキューバ行きが依頼される……という話。
お話として面白くなりそうな道具立てなんだけど、登場人物多くて判別むずかしいし、なんか複雑でわかりにくかった。部分的には映画らしい印象的なシーンはいっぱいあった。冒頭の亡命は手に汗握ったし、キューバ代表から書類を盗むシーンもイイ。キューバの軍人/革命家たちの描写、チェ・ゲバラの伝記映画観たから「ああ、一生懸命やってたのね」って感じに見えた。
「ハリウッド自体が低迷期。窮状を救うヒット作がほしいユニバーサル。原作者が台本書くのを条件に、ヒッチコックに押し付けられた企画」というものだったそう。ヒッチコックとしては実力発揮できなかったのかも。
音楽はモーリス・ジャールだけど、あまり印象に残らない。
●フレンジー(1972年)
タイトルの意味。フレンド(友達)に関係あるのか、または人名か、とか思ってたらFrenzyは「狂乱」「逆上」って意味だったw
ロンドンに出没するネクタイ絞殺魔。行きがかり上、誰が見ても犯人としか思えない状況に巻き込まれるグータラ男。という話。
オープニング、ロンドンの空撮。ひょっとしてこの音楽は?と思ったら、やはりロン・グッドウィン! ヒッチコック作品やってたとは知らなかった。劇判、ちょっと晴れやかすぎたり開けっ広げすぎる感じで、ヒッチコック的にミスマッチかなあ。
面白かった! 「サイコ」のときに書いた、ヒッチコックの「手塚マンガのようにわかりやすく端正で的確な描写」が戻ってきた! 心地いい。70年代にしてはちょっとクラシックすぎるほど。と思ったら、相当ドギツい表現もあってびっくり。ほとんど悪ノリ・悪趣味の領域。
ただ、飄々とした感じもあるし、のんきでユーモアたっぷりな描写もあったり。英国らしいというのか、芝居がかってて半分コメディな感じ、というか、後半は完全に爆笑(ブラック)コメディっぽくなる。故郷に戻って肩の力を抜いて撮ってる感。娯楽映画としてかなりいい出来だと思う。
ドアが閉まるなどして内部が見えない状態でカメラがバックしていくようなかなり長い長回し。何が起きてるのか想像させるショット。コメディタッチな画面に安心してると、ちょっと不自然に長いカットや、すごいロングショットや、おなじみの聞こえない会話など、異様な画面が不意に始まってギョッとする。非常にいい感じ。
サスペンスとユーモアのミックス具合が絶妙なんだろう、映画見ててときたま陥る「怖いし不安だし続きが見れなく、しばしば中断。観るのにすごい時間がかかる」の強度なやつになった。
イギリスで撮られたのでハリウッド的有名俳優は出てない。主役のジョン・フィンチはシェイクスピア俳優として知られてるらしいけど、「エイリアン」で一時降板したジョン・ハートの代役で出演したものの、体調を崩して撮影初日に降板したそう。もったいない。
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