当時からとんでもない映画ということは知ってた。なるべくなら観ないで済ませたかったけど、たまたまYouTubeで無料配信されてると知り、怖いもの見たさで、つい……w
監督:原一男、企画:今村昌平。
傷害致死罪で実刑を受けるなど、ここには書きたくないほどのすさまじい経歴を持つ超危険アナーキスト、奥崎謙三。自分が所属していたことのある部隊で終戦直後に起きた銃殺事件や人肉食をめぐって、異様な熱量をもって当事者たちを問い詰め、真相を聞き出そうとする姿を追ったドキュメンタリー。
奥崎は日本一上官を殴った男と自称。自身は終戦の1年前に捕虜になっている。復員時にも暴力で問題解決してきたなど、歪んだ成功体験を持つ。
話をしに訪れた上官や戦友たちに殴りかかって警察沙汰になるなど、カメラを意識したであろう暴走が目立つ。戦後38年もたって、それぞれ過酷な過去と折り合いをつけているだろう元兵士たちに「責任を取れ!」と怒鳴り、暴れ回る奥崎(ブチ切れてる時以外はとても穏やかな人に見えるのだが)。
裏話を知ると、「ドキュメンタリーって何?」という視点にならざるを得ない。奥崎が関係者の証言を引き出したのはすごいけど、過程がめちゃくちゃすぎる。
奥崎が演技していることが判明したり、原監督に思い通りに撮らせようとして決裂したりもする。さらに、事件の責任者の家族を改造拳銃で襲撃し、殺人未遂事件で懲役12年が確定する。
また、編集者が監督の意向を無視して独自に編集したらしい。最終的に、企画の今村昌平と原監督の意図がどのくらい反映されているのかも不明。
っていうか、原監督は自分の名前でこれが世に出て大丈夫だったのか? 海外の有名監督らも認める「怪物的な映像作品」になってしまったのは確かなので、ドキュメンタリーかどうかは置いといて、これはこれで価値を認められた、ということなんだろう。
(Wikipediaなど読むと、原監督はドキュメンタリーと虚構の境界をあいまいにし、「やらせ」さえ真実を明らかにする手法として使う監督、とのこと)
撮影は1982〜1983年頃とのことで、奥崎は当時62歳。現在の僕よりひとつ下だけど、同世代とはまったく思えない。他の登場人物含め、昔の大人はこんな感じだったなあ。
●全身小説家(1994年) 2:37 日本 YouTube
監督:原一男。小説家・井上光晴の晩年/闘病の5年間を記録したドキュメンタリー。ドラマ部分も少しある。NHK「ファミリーヒストリー」のように関係者のインタビューを通じ、彼の年譜/経歴がほとんど虚構であったことも明らかになっていく。
冒頭からの井上の描写が強烈。1989年時点で63歳、つまり現在の僕と同い年なのだが、若い頃に「嫌だな、ああはなりたくないな」と思った大人の振る舞いのフルセットのような俗物ぶり。「35年前の63歳ってこんなだったのか??」とショックを受けるほどw
しかもモテモテなのがまた嫌だなww 取り巻きの女性たちは、井上がいかに素敵かを夢見る少女のように語る。男性たちさえメロメロw すごい引力だなあ。
とはいえ、奥さんや家族といる場面ではごく普通の男にも見える。外ではそういう“井上光晴”を演じてしまうのだろう。
……というような悪印象からの、癌告知、手術、闘病。それでも彼なりにまっとうに生きようとする描写がかなりキツくてこたえる。彼についてのまとまった印象を持ちにくい分、「ゆきゆきて、神軍」よりも心に強く残る映画かもしれない。
経歴詐称といっても、自分を大きく見せるためではなく、自分の人生そのものを作品化している感じ。「嘘つきみっちゃん」と呼ばれていたそうで、嘘ばかりなのは家族も周囲も薄々知っていたとのこと。
「全身小説家」というタイトルが効いてる。本人にとっては経歴も記憶も空白も、すべて小説の材料だったのかもしれない。しかも、その手法を講演で大勢に紹介してるw
0 件のコメント:
コメントを投稿