2021/10/22

最近観た映画メモ「100万年地球の旅 バンダーブック」他

「マンダロリアン」や「クローンウォーズ」をはさんだせいもあるけど、「なぜか観てなかった映画を観るシリーズ」としては、2ヶ月ぶり。今回の手塚治虫関連の3本は、たまたま冒頭を見始めてしまったものの、ラストまで見るのに大きな忍耐力を要した。

●千夜一夜物語(1969年)

手塚治虫の劇場アニメーション「アニメラマ」第一弾。ずっと頭の隅に引っかかってた。総指揮 手塚治虫、監督 山本暎一、キャラクターデザイン やなせたかし。声は青島幸男、岸田今日子など。音楽は冨田勲と、チャーリー・コーセイがボーカルのロックバンド(これがきっかけでルパン三世で歌うことに)。そこそこ大ヒットしたものの、製作費がかかりすぎてて赤字だったらしい。

当時の制作裏話など読むと非常に興味深いし、表現上の志が高いのはとてもよくわかるのだが、、、残念ながら、まったく面白くなかった。主に千夜一夜物語をモチーフにし、アラビアンナイトの大ざっぱなイメージから勝手気ままに作ったファンタジーか。

アニメーションというか画面自体も非常に粗く、今となっては見るに耐えないレベル。ミスがそのまま放置されてる箇所も多い。テレビ向けのリミテッドアニメーションそのまま。実写を取り入れたりしても、実験映画っぽい貧乏くさい味しか出ない。やなせたかしのストーリーボードがそのまま撮影されたりしてる。

「サイケデリック」&「子供向けアニメーションを作ってた人たちがいっしょうけんめい背伸びして考えた大人向けのエロ」って感じで、なんかものすごく嫌だw (「ふしぎなメルモ」などにつながる手塚メタモルフォーゼ全開) ただ、僕があの年齢層に感じる反発もあるかもしれない。それまでの「正統派の劇場用アニメーション」をぶっ壊すエネルギーは本来は心地よいかも。

主人公のアルディンはジャン=ポール・ベルモンドがモデルとのこと。同じくベルモンドをモデルにしてるといわれる寺沢武一のマンガの「コブラ」と瓜二つでもある。

●クレオパトラ(1970年)

手塚治虫の劇場アニメーション「アニメラマ」第二弾。キャラクターデザイン 小島功。監督 手塚治虫 山本暎一、音楽 冨田勲など、前回とだいたい同じ。声は中山千夏、ハナ肇など。

おそろしくつまらない。すべて腹立つオヤジギャグというか悪ふざけばかりで不愉快。雑で浅はかなパロディの羅列。やはり「千夜一夜物語」と同じく、30歳くらい上の世代のウザさの奔流。僕ら世代以外の人が見たらそれほどでもないのかもしれないけど。なにしろ「アッと驚くタメゴロー」が現役ギャグな時代の映画なので。冒頭の「2001年宇宙の旅」ばりの宇宙船映像にはびっくりしたけど、、、、。

劇場用アニメーションらしいクオリティが一箇所も無いどころか、テレビアニメにも届いてない。どういうつもりだったんだ? 

出﨑統が描いたっぽいキャラはわかる。あと、たぶん手塚治虫の描いた原画ほぼそのままの止め絵がクオリティ高いw

第三弾の「哀しみのベラドンナ」は手塚治虫は虫プロを辞めた後の作品で、無関係だそう、とりあえずパス。

●100万年地球の旅 バンダーブック(1978年)

総監督 手塚治虫、キャラクターデザイン 坂口尚。音楽 大野雄二。日テレ「24時間テレビ」のアニメスペシャル第一弾。第一回の「24時間テレビ」は初めてのこういう番組ってことでがんばって大半を見たはずだけど、アニメスペシャルを見た記憶がない。第二弾の「海底超特急マリンエクスプレス」は見た。8〜9年前のアニメラマの2本にくらべれば、クオリティが明らかに向上。と思ったら、後半は失速。

・「スター・ウォーズ」公開直後という時期。宇宙SFブームのいろんな「これを入れとかなきゃ」要素が満載だけど、表現が追いついてない。

・こちらもメタモルフォーゼ要員のキャラがおり、けっこうかわいい。

・大野雄二の音楽がものすごく時代を感じさせる(というか、昭和感)。アニメラマでの冨田勲の音楽と同様、音楽は時代のものなんだなあ。

・あまりにひねりのないエコロジー志向と人類批評みたいなパートが挟まれてる。こういうのを喜ぶ人たちのための、「金が儲かるからヒューマニズムのフリをしてるんだ」の一環だろう。

・昔から薄々感じてたんだけど、、、なんちゅうか、手塚治虫的にアニメーションというものは、企画が通って実際に劇場公開/テレビ放映されることが決まってしまえば、内容や評価にはそれほどこだわりがないのかもしれん。と思った。

……っていうか、今となっては、24時間テレビ向け2時間アニメを作ってる舞台裏というか制作現場が想像を絶する修羅場だった件が有名になりすぎて、そのアニメそのものは実際どうだったんだ?という興味も大きい。「オンエアが始まってるのに手塚治虫はまだコンテを書いてた(実際はもちろん違う)」伝説とか。いろんな作業が間に合わず、完成してないシーンを間に合わせのツギハギでごまかしたりなど、不完全な形で放映されたらしい。その後、地方での放映用に手を加え編集しなおしたのが今見られるもの。とはいえ、明らかにミスだらけだし、セルがめちゃくちゃ汚れてるのがそのまま撮影されてたりする。笑っちゃったのが、44分30秒あたりに登場するハムエッグのヒゲ、次のカットで顔がアップになると消えるw


アニメラマの監督、山本暎一氏は、先月亡くなったそう。最近、『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』って本を読んだんだけど、山本氏が登場する。西崎同様、虫プロ出身者として「ヤマト」に企画段階から関わっていたので。

「アニメラマ三部作」を研究しよう!
山本暎一インタビュー 第1回[再掲] 
http://www.style.fm/as/13_special/mini_060116.shtml
http://www.style.fm/as/13_special/mini_060119.shtml

アニメラマは、6年生くらいとき水曜ロードショーで予告やってたけど見なかった。大人向けな感じがしたし。やなせたかしといえば大人向けのマンガで知られてたそうだけど、僕的には「やさしいライオン」。アニメーション版は「千夜一夜物語」に参加してくれたお礼として手塚治虫が虫プロのスタッフ好きに使っていいから何でも作ってと言われて作ったそう。深井国といえばSFマガジンだったかの挿画で知ってすごい上手い!おしゃれ!って、後で「ベラドンナ」のあの絵と気がついておお!となった。

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