2019/12/01

最近観た映画メモ「白熱」他

大いなる幻影(1937年)
汚れた顔の天使(1938年)
スミス都へ行く(1939年)
白熱(1949年)
民衆の敵(1931年)
ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー(1942年)
彼奴らは顔役だ!(1939年)

「なぜか観てなかった映画を見るシリーズ・落穂拾いリスト第一弾」の30〜70年代の古い映画をさっさとまとめて観てしまおうと思ったら、先日のメル・ブルックス同様、ジェームズ・キャグニーで引っかかってしまい、「汚れた顔の天使」一本のはずが5本も。まあ、観たい!と思った時に観る、でいいんだろうけど。

●大いなる幻影(1937年)
ジャン・ルノワール監督、ジャン・ギャバン主演。内容ぜんぜん知らなかったけど、第一次大戦時のドイツ捕虜収容所大脱走ものだったのね。ギャバン渋くてカッコいい。「サンセット大通り」にも出てた、監督として完璧主義すぎて不評を買い俳優に転向したエリッヒ・フォン・シュトロハイムがドイツの貴族で軍人を演じて完璧。いろんな境遇や出身の捕虜たち、ドイツ兵たちの交流もあって、戦場じゃない場所で人間同士って感じ。絶滅寸前の貴族階級の哀愁がよかったな。

●汚れた顔の天使(1938年)
ジェームズ・キャグニー主演のギャング映画。「カサブランカ」のマイケル・カーティス監督。ハンフリー・ボガートも悪役の弁護士で出てる。大昔に観たことがあるかもしれない。有名なラストはテレビなどで紹介されてたのか何度も見たことある。1時間37分と短めなんだけど、タメとかフリとかまわりくどいことなしに物語がものすごいスピードで進む。大胆な飛ばし具合につんのめるほどw めちゃくちゃ面白いしわかりやすいし、やっぱラストはズシンと来る。どちらとも取れる
から後を引く。小柄なジェームズ・キャグニーの表情や演技を見てるだけでもぜんぜん楽しめる。彼みたいな俳優ってその後いないよね? マックイーンなんかは近い感じを目指してたのかもしれんけど。童顔な風貌的には先日亡くなったマイケル・J・ポラードが似てた。

●スミス都へ行く(1939年)
フランク・キャプラ監督、ジェームズ・スチュワート主演。急死した議員の穴埋めで担ぎ出されたボーイスカウトのリーダーが、地元のダム開発をめぐる汚職に巻き込まれ、政治の理想と現実を思い知らされるが、実力者たちに反旗を翻すっていう話。寓話のようでもあるし、面白かった。アメリカの理想なんだろうな。スチュワートが30歳くらいでめちゃ若い。飄々とした持ち味はこの頃から変わってないものの、おなじみのスチュワートの顔にまだなってないw 議長の温かい目が良かったな。権力と戦った父親の同志だったのに「現実」に染まってしまったペイン議員の引き裂かれる内面とかもイイ。

●白熱(1949年)
大昔、昼間のテレビで観てラストのあまりのすさまじさにポカーンとした記憶w マザコンで異常性格で頭がおかしいギャングが破滅へ一直線。キャグニーの幼児がそのまま大人になったようなベビーフェイスがめちゃくちゃ活かされてる。「汚れた顔の天使」ほど息をつかせぬって感じじゃないけど、やはりテンポが早くて面白かった。母親も含めて全員どうしようもなく悪いやつらで、とんでもない人たちの観察日記って感じかw っていうかやはり、キャグニーの演技を追うだけでも大満足。潜入捜査ものでもあるんだけど、バレるかバレないかの不快なドキドキはそれほど強くなく、イカれた犯罪者たちとまともな現実世界を繋いでくれる接着剤って感じか。

●民衆の敵(1931年)
ジェームズ・キャグニー主演。キャグニーだけ見てても退屈しないけど、通りいっぺんのギャングの一生って感じで、特別な面白さはなかった。やはりトーキーになった直後の1931年だけあって、古いかな。サイレント時代みたいなメイキャップだったり。1時間20分、短い! 冒頭、一人ずつ主要キャラクターが楽しげに紹介された後に断り書きが出る。「ギャングをカッコよく描くのが目的ではない」。悲惨な運命のギャングの生い立ちから描くことで、犯罪者にあこがれるのは間違いだよ、とわざわざ強調してるわけだけど、まあ、キャグニーのワルぶりはカッコイイので、そう断り書きでも入れとかないとまずかったんだろうな。

●ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー(1942年)
ジェームズ・キャグニー主演。20年代のブロードウェイで活躍した大物ジョージ・M・コーハンが自分の伝記映画を見たいと言ったところから実現した、伝記映画ミュージカルだそう。時期的に第二次大戦中、撮影中に真珠湾攻撃もあったりして、そのへんが反映されてるとのこと。コーハンが愛国者でアメリカを体現する存在だったこともあり、モロに国威高揚映画。まあ、アメリカ人でなくても元気が出るかもしれないw 似たようなブロードウェイの大物の伝記ミュージカルに「雲流るるままに」があったけど、あれより陽気でぜんぜん面白い。こちらでもコーハン作の舞台ミュージカルが次々に紹介される。キャグニー、めちゃくちゃ踊れる。力みなぎるタップダンス。もともとフレッド・アステアが演じる予定の役だったそうだけど、引けを取らない。歌ってる!と思ったら、コーハン本人の歌に合わせて演技してるのね。ギャング役じゃなくてもキャグニー見てるだけで満足。あと気がついてなかったけど、プロデューサーが実弟ウィリアム・キャグニー、妹役が実妹ジーン・キャグニーなのね!

●彼奴らは顔役だ!(1939年)
ジェームズ・キャグニー主演。これにもハンフリー・ボガートが敵役で出てる。第一次大戦に従軍して戻ってきたら仕事がなく、戦友たちといっしょに禁酒法に乗じて密造酒ビジネス→裏社会へ。今まで観た作品とちがって、生き残るために仕方なくって感じもあり、根っからのワルではなかったりする分、ちょっと薄目かも。時代の流れに応じて割と淡々と語られ、歌のシーンで花を添えるなどしてるものの、盛り上がりは小さい。ラストは良かった。ところで、「クルマで走りながら手榴弾を店に放り込んで爆破」のカットが、角度違いも含め、今回観たキャグニーのギャング映画3本に使い回しされてたw

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