2019/08/06

最近観た映画メモ「アイズ・ワイド・シャット」他

ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録(1992年)
ニクソン(1995年)
アイズ・ワイド・シャット(1999年)

今年前半は一ヶ月20本ペースで来たのに、今回は3本。ちょっと忙しくなるととたんに観れなくなる。やっぱ相当「努力」しないと映画って観れない。これで夏前に終わるかと思ったリストの残りを夏が終わる前に消化するのは無理になったっぽい。

●ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録(1992年)
「地獄の黙示録」のロケの舞台裏を奥さんのエレノア・コッポラが撮ったドキュメンタリー映画。「ゴッドファーザー」の儲けを注ぎ込んで自腹で製作のコッポラが、頭おかしくなりそうになりながら撮影してる。撮影開始後すぐの主役変更、遅れに遅れるスケジュール、膨らむ予算、協力してもらった(ゲリラと実戦中の)フィリピン軍に振り回される、台風でセットが全滅、予定が狂って脚本書き直し、苦労して撮ったシーンが使えない、ドラッグ漬けの俳優たち、痩せてる設定なのに激太りして現地入りしたわがままでデタラメなマーロン・ブランドとの戦いw マーチン・シーンは内面を
えぐり出されるような全力演技のせいで重い心臓発作を起こし5週間も撮影中断。映画のテーマや内容とダブる地獄のような撮影。っていうか、本編のほうはしまいには当てずっぽうに撮影したフィルムを編集してどうにかああいう形(まともな部分だけツギハギして)で公開されたわけだけど、このものすごい撮影舞台裏とセットで作品って感じする。創作に取り憑かれた狂気のコッポラ、というか、何か作ろうとしてる人には「自分がやろうとしてることなんてコッポラにくらべれば甘っちょろい」と思わせてくれる必見作品かもしれない。公開前、舟で待機する白塗り部族のビジュアルが発表された頃にも思ったけど、ベトナム感やカンボジア感は薄い。舞台裏も映画に映ってる部分も全部。アメリカ人がイメージする「西洋文明の及んでいない世界」というファンタジーなんだろうな。原作の「闇の奥」の舞台はコンゴだし。むしろ、ベトナム戦争をモデルにした東南アジアの架空の戦争ってことにしちゃえば逆にリアリティが出たんじゃないかって気はする。76年当時、ロードショー誌やスクリーン誌に「コッポラの新作、フィリピンロケ難航中」って何度も記事が出てたな。えー!まだ撮影続いてたんだ?!ってw

●ニクソン(1995年)
オリバー・ストーン。3時間11分と長いんだけど、アンソニー・ホプキンスの演技だけ見ててもぜんぜん退屈しない。映画としては4年前の「JFK」よりぜんぜん地味だし、ニクソンのイメージとしてはちょっと老けてるし太りすぎのホプキンスだけど、ちゃんとニクソンに見えてくる。ケネディ時代から辞任までの米政界内幕なんてよくわからないし、ウォーターゲート事件すらさらっと流してあるから、そこそこ詳しい人でないと何が描かれてるのかわからないんだろうな。金持ちエリートで愛されケネディとの対比。ニクソン本人としては必死にやってるし悪人とは言いにくいしケネディの尻拭い的に実績も上げてるんだけど、国民に嫌われ続けてしまう。そのへんの歴史とかエピソードとか詳しく知った後にもう一度見たらめちゃくちゃ面白い気がする。

●アイズ・ワイド・シャット(1999年)
キューブリックの遺作。ニコール・キッドマンもトム・クルーズも美しい! エロティックを通した妄想や罪悪感がテーマ? 「大きく目を閉じる」=見ないようにしよう、か。原作が「夢小説」なので、判断に迷うようなシチュエーションも「全部妄想です」で片付くのかもしれない。しかし、「シャイニング」で超自然要素が存在しなくても登場人物が考えたこと感じたことで全部説明つくようにしてあるのと同様、妻の考えにショックを受けたトム・クルーズの頭の妄想と、現実的に説明のつく話なんだろうと思った。ラストでベッドに置いてある○○も、彼らなら「忍び込んでそっと置く」くらいできるだろうし。貸衣装屋のオヤジたちがめちゃくちゃ良かったw 全体、狐につままれたような印象の映画。トム・クルーズが自分を解放してみようと彷徨する様は、先日観た「生きる」の志村喬と重なった。あと、トム・クルーズがピアニストの友達を訪ねたソナタ・カフェ、客としてキューブリック本人がいる! まさかと思ったらホントだった。ちょっと目立ちすぎだけど、出たかったのねw 最初の試写をした直後にキューブリックは亡くなってしまったため、最終調整できなかったかも。そしたら公開バージョンはちょっと違ったかもしれない。「撮影期間最長の映画」としてギネスブックに乗るほど何年もの重圧に苦しみぬいたキューブリックが、試写会で映画会社重役たちに好評でめちゃくちゃ喜んだせいで体調に変調を起こしたらしい、とメイキングで語られてる。

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