2024/04/11

最近観た映画メモ「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」他



●ブレインストーム(1983年) 1:46 アメリカ U-NEXT

日本では1984年4月公開。オールナイトで見に行ったけど、すぐ寝てしまい、目が覚めたのが終盤の臨死体験のこの世のものとも思われない映像シーンで、寝ぼけまなこで「今見てるのは夢なのか?現実なのか?」だった。あらためて観なおす。40年後にw

人の知覚・感覚を他人の脳へ転送して共有する装置の開発に取り組むマイケルたち。テストは成功、テープに記録可能にしたり、小型化したりなど実用化へ向けて改良が始まる。離婚直前だったマイケルとカレンが装置の感情共有によって唐突に仲良くなったり、エロ系記録に中毒になった末に若返ってしまう同僚がいたり。利用したい軍幹部と衝突したチーフのリリアン、持病の心臓発作によって亡くなるが、彼女は死の瞬間を記録していた……という話。

これ、視聴覚的にはほぼVRの先取り。で、40年前に夢のようなSFだったことが、今は誰でも買えちゃうVRゴーグルで半分実現してるってすごいな。映画に登場する装置は、思い浮かべたことまで記録できちゃう。あと、そんな記録を電話線でやりとりして再生してるってことは、超ブロードバンド技術なんだろうし。

そういった夢の技術とトランブルの映像技術のアトラクション映画なのかと思ったら、ちょっとちがった。かといって、研究を横取りして洗脳にも利用しようとする軍との戦いがメインでもない。

「ライト兄弟メモリアル公園」が象徴する、純粋に科学の進歩による人類の幸せを願い、好奇心や一番乗りを礼賛する映画らしい。

とはいえ、詰め込みすぎで主眼があちこち移ってイマイチ乗り切れなかった。工場での攻防などほとんどドタバタコメディだし。どう見りゃいいんだ?ってなる。

・ナタリー・ウッドの遺作。当時、ニュースで知ったときには「ウエストサイド物語」に出てた大昔の女優ってイメージだったけど、43歳ってまだずいぶん若かったんだ……。2年後のデニス・ウィルソンと合わせて、スターがヨットで泳いでて溺死ってよくあるんだなあと思った。

・チーフ役のルイーズ・フレッチャーって「カッコーの巣の上で」の怖い看護婦長!

・ロボットアームでテープを再生機に運ぶとき、リールの枠ではなく巻いたテープそのものをガシッとつかんでるけど大丈夫かw

・馬鹿でかいヘルメット状だった装置が、改良されて次第に小さくなり、骨伝導イヤホンくらいになるのは見もの。ウォークマンをイメージしてるらしい。

・タイトルバックなど3DCGの金属の文字、と思ったら、作った文字を撮影してるとのことw 本編には空中戦シミュレーションの簡易な3DCGが登場する。

・クライマックスはダグラス・トランブルの得意技全開。「2001年宇宙の旅」のスリットスキャンを派手にしたようなものはじめ、圧巻の映像! 凝すぎというか背伸びしすぎて今となってはチープに見えなくもないけど、1983年時点ではすごかったはず。(逆に「2001年」でのスリットスキャンは基本だけやってるので古くならない)

・発泡剤アワアワ真っ白から泡まみれで抜け出してスイッチレバーを引く男、ってほとんど「未来少年コナン」のギガント回のレプカ!

・画面がやたら狭いのは何だろうと思ったら、装置の主観映像のとき画面いっぱいに広がるのだった。トランブルは本当は脳内主観映像をショースキャン(70mmフィルムの60fps映像)でやりたかったけど実現せず、せめて画角を変えることで表現したとのこと。

・始まってすぐ、リカンベント自転車をかついで研究所から出かけようとするクリストファー・ウォーケンのシーン、あっ! 以前シェアしたあの建築だ! 検索するとこの映画のロケ地としても有名なのね。1972年完成なので撮影時にはまだ新しかったんだ(最近取り壊された)。「ウルトラセブン」のキングジョーの回のロケ地の「国立京都国際会館」になんとなく似てる(京都のほうが6年早い)。
https://thevaultoftheatomicspaceage.tumblr.com/post/641009927914176512

●アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場(2017年) フィンランド U-NEXT

これもfacebookに「渡河シーン」が流れてきて、これはすごい!と。「SISU/シス 不死身の男」とちがって、こちらは非常に真面目な映画。有名な小説の三度目の映画化だそう。監督・脚本 アク・ロウヒミエス、主演 エーロ・アホ、ヨハンネス・ホロパイネン他。

「冬戦争」でソ連に奪われた国土をナチスドイツの協力を得て取り戻そうとする「継続戦争」。農地を取り戻し家族を守るために戦う中年のベテラン兵を中心に、若い士官や兵士など数人のフィンランド兵とその家族たちの運命を敗戦までに渡って描く……という話。

面白かったという感想は適当じゃないな。すごい映画だ。これ、歴史上の話じゃなく、まさに今ウクライナで行われてることと重なる。現在、これと同等の渦中の人たちがいるんだ……。

リアルな戦闘描写も生々しくて怖いのだが、一本調子じゃない。休暇でたびたび家に帰って家族や婚約者と過ごしたり、若い兵士のロマンスなどの描写があるからこそ、戦闘シーンがキツい。動と静のコントラストが強烈に効く。

夏、冬、夏、冬と、どんどん季節が移る山や農地などの描写もいい。うんざりするほどの時間がすぎるのがわかる。

本国で公開されたのは50分近くも長い2時間59分版だそう。「オリジナル・ディレクターズ・カット版」3としてU-NEXTにあった。あれ? 「オリジナル・シリーズ完全版」という全5話のドラマ版もあるぞ? 出演者も監督も同じ。1時間弱を5本って、カットした部分も使ってドラマ用に編集した?

と思ったら……「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」は、「元はTVミニシリーズとして制作されたものの、そのクオリティの高さから映画用として再編集して先に劇場公開をしたものである」だって! じゃあ映画はダイジェストでドラマがオリジナルなんだ。
https://www.tc-ent.co.jp/products/detail/TCBD-1524

・フィンランドは、1944年9月にソ連との冬戦争を休戦した後、翌年5月のドイツ降伏までナチスドイツを敵として戦ってるんだ。「SISU/シス 不死身の男」で、友軍のはずのドイツ軍が襲ってきたりフィンランドの街にひどいことするのはそういうことだったのか。

●ジム・ウッドリングのイルミネーション(2020年) 1:37 Amazonプライム

なんで今さら「ウッドリング」表記? 本来の発音はおいといて、日本では少なくとも2002年から「ジム・ウードリング」だったはず(STUDIOVOICEの表紙にも登場)、邦題を決めるときに一度も検索しなかったのか? 「どうせ日本では無名」とでも思っていたんじゃないのかと。

ジム・ウードリングのドキュメンタリー。仕事場でのインタビューと講演の映像をまとめたもの。偏った育てられ方をし、夢と現実の区別がつかず、常に幻覚を見ていたという。あの奇妙な生物やモノや衝撃的な形は、実際いつも見えてたものなんだそう。

字幕がひどい。ウードリングも難解なこと言ってるから余計にわからない。中国語フォントだし。たぶん日本語できない担当者が機械翻訳して校閲もしてないんだろう。先日のキューブリックのドキュメンタリー「2001年 神話の創造」(2001年)もひどかったな。

それでも、ウードリングの制作過程を超クローズアップで見れるのは貴重。鉛筆での下書きもものすごくていねいに描いてる。本番のときにペンでつけるタッチまで鉛筆で下絵描いてる!

あのペンタッチはあの「指さす手の形をしたつけペン」! 大昔、マンガ描くために買ったけど使ったことない。装飾と思ってた手の形は、インクをたくさんつけることができ、長時間描き続けることができる利点があるとのこと。それでもインク量が足りないときは、アルミホイルを巻きつけてインクをたっぷり含ませて描くそう。
https://bityl.co/PCBC
(この店で取り扱い終了しただけで、このペン先は今も作られてるそうLeonardt Index Nib)

・ボリス・アルツィバーシェフ(Boris Artzybasheff)、なんとなく似てると思ってた! 陰影描写のスタイルを真似したんだそう。

・2005年からいつもポケットに入れてるという小さいモレスキンがずらり100冊! 僕的モレスキンブームとほぼ同じ時期から100冊! 20年近く使い続けるとこういうことになるんだ。当時、マイク・ミルズがモレスキンをたくさん見せてくれるドキュメンタリーがあって、あこがれたんだった。僕もやっとけば!と思うけど、使いにくくて挫折し、ペラ紙を使うのが定番になって約20年。

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