2020/08/09

最近観た映画メモ「復活の日」他

過ごしてきた時代的に「なぜか観てない映画を観るシリーズ」ど真ん中な、観てない70年代角川映画(80年代作品が1本混じってる)。一気に4本観た。

すでに高齢だったり亡くなったりしてる大御所や重鎮的な俳優やタレントたち。40年ちょっと前にはホントに若く、しょうもない演技をさせられたりしてるのに感慨。

ところで、角川映画といえば、なぜか1979年の「蘇える金狼」(松田優作主演)は映画館で観た。なんで観に行ったのかずっと謎だった。調べたら「金田一耕助の冒険」が同時上映だったらしい。U-NEXTにあったのでチラチラ観てみたらなんとなく見覚えあった。熊谷(松田)美由紀がローラースケート軍団のボスとして出てるのね。

人間の証明(1977年)
野性の証明(1978年)
戦国自衛隊(1979年)
復活の日(1980年)

●人間の証明(1977年)

松田優作、岡田茉莉子、ジョージ・ケネディ。有名ファッションデザイナーのショーが行われていた赤坂の高層ホテルで、ニューヨークから来た黒人青年が刺殺された。彼が持っていた古い麦わら帽子と詩集を手がかりに捜査が始まる。

なぜか観てなかった邦画代表。あれだけ話題になった映画なんだからと、膝を正して観ることにしよう。……あれ? 何このユルユル。前のめりな姿勢はわかるけど、力みすぎて噛み合ってない感。洋画好きの僕が日本映画の「イヤだなー」と思うもの全部入りというか。ジョージ・ケネディを同じノリで使う違和感も。ラストにもげっそり。

全体的には、普通の刑事ドラマがちょっとした大風呂敷を広げたような印象。大野雄二の音楽の使われ方のタイミングが、「ぜったい笑わせようとしてるだろ?」的なのが残念。ファッションショー部分は山本寛斎なのに、ダラダラと長く見せられてもったいない。

1977年の時点で、たった30年前が戦後すぐの混乱期だったってのは、当時15歳の中学生だった僕には実感できなかったな。今、30年前っていえば1990年頃、そんな大昔じゃないもんね。

ところで、「たまたま」や「偶然の一致」って映画の中で2つ以上は禁じ手だと思ってるけど、この映画は偶然の一致をいくつ上積みしてるんだ? 脚本というか、原作自体がダメダメだったのかも。

●野性の証明(1978年)

高倉健、薬師丸ひろ子。元自衛隊特殊部隊の男、惨殺事件の生き残りの女の子を養子にしている。ある保険金殺人を調査するうちに、東北の巨悪の陰謀と、特殊部隊の本性が見えてくる、というような話だけど、……ほんとわかりにくい。

特に説明もなく無関係に見える場面がどんどん新しく始まって足されていく。映画館で抜けられない状態なら見続けるしかなく、後のほうでわかってくるからいいってことなんだろう。ただ、わかっても何の役にも立たないw

娯楽映画だからって、いくらなんでも盛り込みすぎで脈略なさすぎだよね? 超能力まで出てくるし、僕的にはキング原作の「ドリームキャッチャー」くらいの壊れ具合。提示された事件や問題が何も回収されずに散らばってるだけ。荒唐無稽を通りこして支離滅裂。

昔何かで読んだ、石森章太郎が赤塚不二夫にしたアドバイス「僕だったらこの1本の内容から5本のマンガを書くね」を思い出した。少なくとも、「ランボー」になり損ねた感じはもったいない。ラストはアメリカンニューシネマをやってみたかったらしい。

ラストには、薬師丸ひろ子のプロモーションビデオも流れるw

●戦国自衛隊(1979年)

演習のため集合した自衛隊の一群が、昭和から戦国時代にタイムスリップ。景虎(上杉謙信)に出会い、天下を取ろうということになる。という話。

隊長の千葉真一が主役なんだけど、信じられないほど精彩を欠くキャラクター造形で、感情移入がぜんぜんできない。夏木勲と二人でフンドシ姿のキャッキャウフフw 部下たちはそれぞれ昭和にいた頃を引きずったエピソードが用意されてるけど、どれも唐突でチグハグ。どうも、映画のコンセプトとして、この内容で「青春もの」として撮らなきゃいけなかったらしい。っていうか、自衛隊なのに規律も何もあったもんじゃないグダグダな行動はいかがなものか。

渡瀬恒彦たちの反乱や乱暴狼藉もどうかしてるけど、それを必死で阻止した割に自分らがやってる殺戮はいいんだ? 百歩譲って、動機が「俺たちが天下を取るようなめちゃくちゃをすれば、時間が元通りになる力が働くはず」だとしても、説得力不足。とか思ってたら、千葉真一の行動原理はやはりとんでもないところにあったw つまり、はっきり悪役に変化してた。いいのか?

そもそも、大勢の鎧武者や足軽たちを機関銃や大砲でなぎ倒すって、何か面白いか? スカッとするか? こういう場合の見せ場は「近代兵器を戦国時代の兵器や知恵がやっつける」のはずで、いちおう盛り込まれてるけど、立場的にスカッとできない構造。それが30分以上もダラダラ続く拷問。これは例の「ドンパチシーンを長くするのは伝統のサービス」か。

前2作よりは明快なプロットだし、映画的に見せ場を作りやすく面白くしやすい内容だと思うんだけどなあ。

一連の角川映画もそうだけど邦画の超大作は、オールスター出演的に大勢の俳優や歌手やタレントに細かくそれぞれ見せ場を作るのが、全体としてバラバラな印象になる主な原因じゃないか?と思った。薬師丸ひろ子はわかりやすいけど、草刈正雄の一瞬ストップモーションw

●復活の日(1980年)

小松左京原作。東陣営に盗まれた細菌兵器の容器が事故で壊れ、世界に最強のウイルスが拡散され、人類はほとんど滅亡してしまう。低気温のおかげで助かった南極基地の人々は、人類の生き残りを試みる、というような話。

前3本よりは格段にちゃんと面白かった。もちろん、コロナ渦の真っ最中でもある分、響いた。小松左京的な、「状況がこうなら当然こういう問題が起こるよね」が映像にするとちょっとドライすぎて冷酷に感じてしまったりするものの。

テレビでラストあたりは見たことあったけど、やっぱあのボロボロの草刈正雄には笑ってしまうw 2年であんなに髪の毛や髭は伸びないだろw あと、原作ではうまいこと組み入れてるんだろうけど、映画的に地震の話が唐突に感じてしまった。上でも書いた「たまたま偶然」の上乗せになってしまう。どうにか地震無しでつじつま合わせてほしかった。

極地の描写は「北極の基地 潜航大作戦」よりぜんぜんリアル。

原作は64年作品なので、当時の映画「博士の異常な愛情」や「未知への飛行」でも出てきた米ソの「報復全自動の皆殺し装置」のネタが入ってて、映画公開時にはちょっと古かったかもしれない。65年にも映画化の話があり、20世紀フォックスに持ち込まれて、そこで目にしたマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体」のヒントしたんじゃないか?という説が面白い。

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