2019/09/02

最近観た映画メモ「アラビアのロレンス」他

今回4本中3本が序曲とインターミッション付きの長い超大作。60年代はテレビに巻き返しを図ろうと、大画面で特別な体験を提供する超大作が多い。タランティーノの「ヘイトフルエイト」はその超大作形式を現代に蘇らせようとしたものだそうで。

●アラビアのロレンス(1962年)
デヴィッド・リーン監督。昔テレビで前後編で見たことある。史上最高映画の一つとされる。超大作は極端に長いのが多く、これも3時間48分。序曲と休憩付きのおなじみの形式。時間と画面を信じられないほど贅沢に使った眼福系映画。人間の存在なんか極小のノイズでしかないほどの砂漠のでかさ。かと思えば、地平線の果てまでラクダやエキストラでぎっしり。iTunes映画のリマスター版の高画質だからどうにか見えるくらいの、27インチディスプレイで地平線上に1mmくらいの人物が現れるシーンとかw SD版やDVDじゃ解像度が足りなくてたぶん見えないw 第一次大戦中、ドイツと結んだオスマン帝国に支配されていたアラブ世界。動向を探るという名目で派遣されたロレンスだけど、このあたりのイギリスの動きが現在に至るアラブ世界のややこしさを
作ってしまったとのこと。ロレンスのピーター・オトゥール、英雄とか偉人というよりも「砂漠に憧れてきたアラブマニアで有能だが、英雄的存在にあこがれるナルシストな上に実はナイーブな変人の小市民」。たまたま理想を実現するチャンスを得て、勢いで英雄的役割をしてしまったけど、理想と現実のギャップは大きく、大国やアラブ世界に利用され翻弄されただけで、しまいには追放されてしまう。ロレンスがだんだん壊れていくオトゥールの演技がイイ。あと、名優たちがみんなアラブ人役。オマー・シャリフが背筋伸びててめちゃカッコいい。アンソニー・クインも粗野な族長がハマってる。アレック・ギネスは最も格上の王子をやってて素晴らしい。冒頭とラストを結びつけるいくつかのしかけがめちゃイイ。史劇のように錯覚しちゃうけど、映画が撮られるたった40年前かそこらのほぼ現代劇なんだよね。冒頭のエピソードから25年くらいしかたってない。特撮無しで地平線まで全部本物を撮った完璧画面ってのは本当にスゴイ。ところで、昔から親しんできた有名なテーマ曲、あらためて観るとけっこうしつこい。他の劇判など総合すると、結局アラビア風味のエキゾチック音楽ってだけかな。。。音といえば、戦闘シーンの音響効果がやはり60年代的「バキューンバキューン」の西部劇以上の工夫を感じないのも惜しい。誰か言ってたように、本物の蒸気機関車を爆破・脱線させてるのに、高さ30cmくらいのミニチュアにしか見えないのがもったいないってのはホントそうw あと、この映画には女性がほぼ出てこない!

●バルジ大作戦(1966年)
これも同じくなぜか抜けてた有名映画の代表。序曲・休憩・退出曲のある超大作スタイルなんだけど、なんか軽い。大作戦の上っ面を撫でただけみたいな。ヘンリー・フォンダも将軍たちもドイツ側も軽い。テリー・サバラスはコメディリリーフ的扱いだけど、やっぱテレビみたいな軽さ。ロバート・ショウだけはカッコよくて全編プロモーションビデオ状態(後半壊れていくがw)。「戦車の歌」はあんな唐突なものだとは知らんかった。後半でショウが戦車兵を励ます感じで歌われるのかと思い込んでた。カール=オットー・アルベルティって、戦争映画で必ずドイツ兵の役で出てくる人。大戦車戦の映画なのだが、スペイン陸軍の戦車を借りての撮影なため、シャーマン戦車でもタイガー戦車でもない。そこは気にせず見ようと思ってたのに、スルーできなかった。。。ハリボテでもいいから多少はそれらしくしてほしかったなあ。絵的にも不満。雪の中は良かったけど、だだっ広い荒野に無数の戦車を並べても何の迫力も無い。特に不満なのが、どのシーンも夜も戦車の中も、照明が同じ。ベタッとしたスタジオ撮影みたいな。12月〜1月の戦闘、前半は多少は雪がある風景の中だったけど、途中から普通の埃っぽいスペインの荒地って感じに。エピソードの数々もみな軽く、ちょっとガッカリ。まあ、全体としては想像してたとおりなんだけど。

●ドクトル・ジバゴ(1965年)
「ラーラのテーマ」と、オマー・シャリフが出てること、デヴィッド・リーン監督ってこと以外は前知識無し。ものすごく映画らしい。名作映画ってこんな感じで満足。面白かった。歴史のうねりに有無を言わせず巻き込まれる感。スケールはでかいものの結局はベタなメロドラマだけどね。それも偶然に偏りすぎの。ものすごい偶然で会えたとか、都合良く/悪く病気になったとかの。しかし、この人、脇が甘いというか油断しすぎだよなあ。。。オマー・シャリフがすごくイイ。ジュラルディン・チャップリンってビョークに似てるね。アレック・ギネスがロボットみたいな演技してるw クラウス・キンスキーにびっくり。前半、まさかロシア革命賛歌?と思ったら、さすがに65年時点でそれは無く、激しく批判的だし非人間的とまで言う。原作はソ連では出版できなかったそう。さすがにソ連でロケはできず、スペイン、フィンランド、カナダで撮影したそうだけど、どう見てもロシアな感じがすごい。「ラーラのテーマ」も「アラビアのロレンス」のアラビア風味と同じく、ロシア風味の一環だったのね。

●ワイルドバンチ(1969年)
サム・ペキンパー。その後も西部劇はあるけど「最後の西部劇」と言われる。主要登場人物たちが衰えつつある初老の男たちというか、ほぼジジイばかり。拳銃もオートマチックに替わりつつあり、自動車も出てくる。華やかな西部劇時代と重なる、自分らが暴れまわった時代から取り残され、そろそろにっちもさっちも行かなくなってる。ウイリアム・ホールデンもアーネスト・ボーグナインも、選択肢がない感がイイ。追うロバート・ライアンも、時代を共有したかつての仲間だったり。結局どうしようもなく時代が変わっていき、死に場所を探しているような悲壮感。半ば先日の「チェ 39歳 別れの手紙 」のように、冒頭から追い詰められていく陰鬱な感じが漂うため、良いのはわかるけど、好きじゃないかな。。。アメリカン・ニューシネマの走りとも言われるそう。マカロニウエスタンに対する本家の回答として、自主規制ヘイズコードを破った暴力表現。スローモーションのバイオレンスを「俺たちに明日はない」で先を越されて悔しいペキンパーが、ムキになって派手で長大なバイオレンスシーンを作ったらしいw ただ、今の目で見るとスローモーションを挟みすぎると迫力や勢いを削ぐ感じになっちゃっててイマイチ。

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