長い前置き……。1977年夏、アメリカで「スター・ウォーズ」が大ヒット。日本公開は翌年の夏を予定していて約1年の時間差。「惑星大戦争」と「宇宙からのメッセージ」は急いで作って公開したスター・ウォーズ便乗映画。当時中学3年の僕にもそれは明らかだった。
僕的に「宇宙戦艦ヤマト」熱が急速に冷めつつあった1977年秋にロードショー誌などでSWブームを知り、ビジュアルがあちこちで紹介され始めた。スチル写真よりも先にラルフ・マッカリーのイメージイラストに衝撃を受けた(あれ?本編はけっこう泥臭いな?と思ったほど)。「惑星大戦争」を知る頃には「スター・ウォーズが待ち遠しくて死にそうな中学3年生」になってた。
何度か書いたけど、1977年5月発行の「世界ビッグスター101」というムック本にこれから公開される映画紹介に「スター・ウォーズ」が「惑星大戦争」というタイトルで載ってた。その後、「スター・ウォーズ」が世界共通タイトルになったため、浮いた「惑星大戦争」をちゃっかり流用、という形らしい。
テレビや雑誌などで紹介される「惑星大戦争」と「宇宙からのメッセージ」は、「日本の伝統的子供向け特撮の苦手な部分の寄せ集め」にしか見えなかった。顔を銀色に塗ったトゲトゲヘルメットの大ボスとか、ピアノ線で吊ったゆらゆら揺れる宇宙船とか、そういうのはもう見たくなかった。
日本ではイマイチな興行成績だった両作品とも、興行的に宇宙SFを渇望されていたためか、海外ではある程度ヒットしたらしい。
何に載っていたのか、SW公開時の日本の特撮スタジオ関係者の座談会、「あんなものは日本でも簡単にできる」と豪語。しかし、彼らが作ったのは「惑星大戦争」と「宇宙からのメッセージ」という現実。どれだけガッカリさせられたことか。ああ、日本はこうしてダメになっていくのか、と。
なぜ突然見る気になったかというと、「SHOGUN 将軍」でエミー賞を獲った真田広之が出演した「宇宙からのメッセージ」を見直してみようと思ったついでに、忌み嫌っていた「惑星大戦争」もこの機会に見てしまおう、ということで。
(どちらも便乗映画ではあるけど、よく言われるように「パクリ映画」ではまったくないことを強調しておく)
●惑星大戦争(1977年) 1:31 日本 U-NEXT
東宝が5億円をかけて78年正月映画として作った超即成宇宙SF。
原案は「海底軍艦」の田中友幸(神宮寺八郎名義)。監督:福田純。出演:森田健作、浅野ゆう子、沖雅也など有名俳優がズラリ。音楽:伊福部昭。1963年の「海底軍艦」は大昔な気がするけど、1977年の「惑星大戦争」はたった14年後か。
地球への侵略を開始した銀河帝国。建造が中止されていた宇宙防衛艦「轟天」を国連宇宙局の要請で完成させる。そして、金星の銀河帝国前哨基地へ決戦に向かう、という話。
もしかして、当時の予想を裏切る良い映画なのではないかという期待も虚しく、ほぼ予想どおりだった。う〜ん。面白くなかった。屈折した苦手意識を46年も持ち続けず、当時見ておけばスッキリ完結したのに。
頑固一徹な伝統的特撮スタジオや美術の現場が新しい風を取り入れようとせずに、彼らの想像の範囲の素材だけで適当にでっち上げた感。SWによる新時代の宇宙SFの到来!という期待をまったく寄せ付けない。
宇宙防衛艦の「轟天号」というネーミングを「漢字でカッコイイ!」というセンスはなかった。元ネタが「海底軍艦」(1963年)に出てくる「轟天号」なのは後で知った。どちらにしても、「先端の巨大ドリル」だけでもガックリする。
あと、制作時にはまだブーム最中だった宇宙戦艦ヤマトの実写版じゃないかくらいヤマト風すぎて笑ってしまうシーンがいくつもある。1900年発表の空想科学小説由来の轟天号を含む幾多の超兵器が「宇宙戦艦ヤマト」に結実したわけで、立場が逆なんだけど。
やはり「自己犠牲の体当たり自爆特攻」を「感動ポイント」にしてしまうのね……。誰かが美しく犠牲にならないと映画を感動的に終われない病。
SW便乗とか和製SWとかの視点では、意外にもSWに似ている要素は少ない。赤いレーザー光線の描写と、チューバッカにツノをつけたようなヤツがいるのと、金星の洞窟をくぐるスピード感くらいか。惑星の爆発もかな?
たぶん、ヤマトブーム→SWによる宇宙SFブーム到来というチャンスに、以前から構想されていた宇宙版「海底軍艦」を作ってしまえ!って感じで、SWはあまり眼中になかったんじゃないか?と。
とはいえ、ネタの宝庫なことは間違いない。以下、箇条書きメモ。
・世界の各都市の爆破などの特撮がすごい!と思ったら他の映画からの流用だそう。
・敵兵の靴のつま先がクルンッってピエロの靴みたいになってるw
・突然おそろいのユニフォームでヤマトのクルー風のショットw 浅野ゆう子が森雪のポーズ。
・1977年時点で、宇宙遊泳の効果音が「ポヨ〜ン、ピヨ〜ン」の電子音。怪光線の音が「ピーー」 orz
・銀河帝国司令官がローマ風ケバケバ付きヘルメットをかぶったデスラー総統w
・轟天号、姿勢制御ロケットや慣性航行など、妙にリアルな部分もあったりする。
・宇宙空間でロケットの噴煙をモクモクとたなびかせて飛行するの本当にやめてほしかった。
・捕えられた浅野ゆう子のコスチュームはどこから出したんだ? ボンデージ(私物だそうw)をユニフォームの下に着てたのか? まあ、本当に足長いな。この時17歳。顔がほぼ子供。
など、散々書いたけど、「クランクインが公開の2か月前」と知ると、逆に奇跡的な高クオリティにも見えてくるw 「急遽でっち上げた宇宙SFもの」は、過去の日本特撮の蓄積があればこそ、なんだろうな。
●宇宙からのメッセージ(1978年) 1:45 日本 Amazonプライム
東映が約10億円をかけて、東宝より5ヶ月遅れのGW向けとして作った宇宙SF。
同時期のテレビドラマ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」(San Ku Kaï)は時々見てたけど、映画の100年後を描く別作品という設定は知らなかった。映画版はテレビで見たと思い込んでたけど、未見だったかもしれない。
原案に石ノ森章太郎(デザイン等も)や野田昌宏など。監督:深作欣二、出演:ビック・モロー、千葉真一、志穂美悦子、真田広之他。出てきた瞬間に天本英世とわかる銀色のお婆さんとか(「海底軍艦」にもお爺さん役で出てたけどすぐわかったw)。外国人俳優の吹き替えに若山弦蔵と、大好きな声の岡本茉利!
里見八犬伝ベース。ガバナス帝国に侵略され星ごと要塞に改造されてしまった惑星ジルーシアの住民。8人の勇者がジルーシアを救うという「リアベの実」伝説に基づき、8つの木の実が宇宙に放たれる。勇者を迎えにエメラリーダ姫と従者が旅立つ。木の実を受け取ったのは、宇宙暴走族、チンピラ、富豪のアホ娘、クビになった将軍など、ろくでもない連中であった……という話。
さすがにSW公開後に準備期間が長くとれた分、SWを意識したと思われる箇所は多い。できる範囲でSW的ニュアンスを一生懸命表現、あわよくば超えてやろうって意欲は感じた。
隕石群を飛ぶシーンは本家「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(1980年)で真似されたという説がある。また、クライマックスは「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還」の第二デススター中心部攻撃シーンの先取りになってる。
チキンランなど、アイディアはいいけど特撮表現が追いついてないのが惜しい。それでも、「お!けっこうすごいぞ!」というシーンはいくつもあった。ただ、なぜか人物撮影時の画角がめちゃ狭く、画面内に人がぎっしりな上に、アクション撮影が手持ちでブレブレで何が映ってるかわからないようなカットが多数。
こちらも、ほぼ予想どおりの映画だった。当時ちゃんと見ておけば引っかかりを46年も持たずに済んだ。しかし、同じくネタの宝庫、以下箇条書き。
・浅野ゆう子と同じく真田広之もこのとき17歳。声変わりが完了してないほぼ子供。
・宇宙に宇宙服なしで出て平泳ぎで移動、宇宙ホタル(放射性廃棄物)を素手でつかむw
・しつこいチンピラ描写は何なんだ?お笑い担当とはいえウザすぎる。
・珠の散る範囲が狭すぎないか? 銀河広くから勇者が集まるかと思うじゃん。
・いともあっさり妖星ゴラス式移動!w
・ジルーシア住民の月桂冠風のアレは、よく見る樹脂製のブドウの葉っぱでは?w
・感動シーンで流れる曲が「レイア姫のテーマ」によく似てて、いちいちギョッとするw
・富豪のアホ娘の名前が「メイア」で、ほぼ「レイア」と聞こえるw
・せっかく決着がついたのに敵基地心臓部を破壊して故郷の星ごと消滅って?w
⚪︎他雑感
最近のSF映画のビジュアルも、「2001年宇宙の旅」(1968年)以降、「スター・ウォーズ」(1977年)や「エイリアン」(1979年)「ブレードランナー」(1982年)のセンスから脱却できていない。サイバーパンクやスチームパンク的なものはそれらよりは新しかったかもしれないけど。
海外の特撮でもありがちだけど、ミニチュアを手持ちカメラで撮影するやつ。特に手持ちのまま移動撮影。あれは本当にいかん。どんなに良くできたミニチュアでも、スケール感が台無しになる。
あと、被写界深度の浅さ。ピントが合う範囲が狭くて手前とかボケボケでミニチュア感が強調されてしまう。そのへん、シュノーケルカメラを使えないのかと思ったら、なんと世界に2台しかなかったシュノーケルカメラを短期間だけど借りて撮影したパートもあるそう。
「僕的に宇宙戦艦ヤマト熱が急速に冷めつつあった」……ヤマト、再放送を見たり、マンガやムック本買ったり、サントラ盤買ったり、ずいぶん夢中になってたはず。(これも以前書いた件だけど) 1977年夏に映画版が公開されて町の映画館まで友達と二人で出かけたまではよかったのだが、映画館に自転車を停めたところで二人で顔を見合わせて、「おい、本当にこれ観るのか? テレビの再編集版らしいけど。」って相談。結局、観ないで帰った。それから急に冷めちゃった。
そうか、映画版「宇宙戦艦ヤマト」って引っかかったまま46年観てなかった同じケースの映画なんだ。Amazonプライムにあるけどスターチャンネル無料体験とかで普通に見れない。そういえば「未来少年コナン」の再編集映画版も引っかかったまま観てないな。
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