2024/08/23

最近観た映画メモ「断崖」他







●断崖(1941年) 1:39 アメリカ U-NEXT

イギリス。金持ちの娘リナは有名なプレイボーイのジョニーにつきまとわれていたが、両親に意地を張る形で結婚してしまう。派手な新婚旅行と、メイドさんまでいる豪邸の新居。しかし、ジョニーは無一文で借金まみれの競馬狂で嘘つき男と判明。リナはジョニーが自分を殺そうしているのではないかと不安に取り憑かれる……という話。

監督:アルフレッド・ヒッチコック、出演:ジョーン・フォンテイン、ケーリー・グラント、ナイジェル・ブルース他。

面白かった。けど、「ミスリードだけでできた映画」という印象で、若干、担がれた感がw 不安だし強いサスペンスが続く。例の「光るミルク」もさすが効果的。クライマックスもかなり怖い。

・ケーリー・グラント、いい加減でおちゃらけたプレイボーイという描写なんだろうけど、最初から頭おかしいサイコパスに見えてしまう。それもミスリード作戦なんだろう。謎が解けてからも、こんなクズ野郎と結婚しちゃダメって思うけどなw いや、あれも嘘かな?

・それにしてもジョーン・フォンテインのリナは主体性ゼロで個性薄い……。これでアカデミー主演女優賞を取ってるのは意外。

・同じくジョーン・フォンテイン主演の「レベッカ」(1940年)も、謎の男と結婚して不安に振り回されるけど、「断崖」のほうがぜんぜん雰囲気明るくて軽い。そういえば別監督でイングリット・バーグマン主演の「ガス燈」(1944年)にも似てるかも。

●ガンマー第3号 宇宙大作戦(1968年) 1:16 日本・アメリカ U-NEXT

監督:深作欣二・田口勝彦。日米合作、オール外国人キャスト。ロバート・ホートン(「ヒッチコック劇場」の常連だったらしい)、リチャード・ジャッケル等、あまりメジャーでない俳優たちや、「ウルトラセブン」でキングジョーの回に出てきた女優リンダ・ハーディスティーなど、日本に縁のある俳優も何人か出てる。

1時間16分しかないのは、1968年冬の「東映ちびっ子まつり」の4本中の1本だったから。もしかして、同じ1時間16分の高倉健主演「高度7000米 恐怖の四時間」(1959年)も、プログラムピクチャー的なものだったか。

宇宙ステーションガンマー第3号の科学者が地球へぶつかるコースの遊星を発見。ただちに遊星へ飛び、爆破に成功。しかし、意図せず宇宙ステーションに持ち帰ってしまった未知の生物が乗組員を襲い始める……という宇宙怪奇SF。

地球にぶつかる小惑星に爆弾をしかける「アルマゲドン」(1998年)と、凶暴な宇宙生物を持ち帰ってしまう「エイリアン」(1979年)に通じる。特に、船内捜索して宇宙怪物出現の感じはまさに「エイリアン」。参考にしてるかも。

面白かったかというと、う〜〜ん、全てがベタな展開だけど、上映時間が短いのでなんとか大丈夫。でも、面白さと興味深さは別物。日本語音声の納谷悟朗がチャールトン・ヘストン主演の大作映画のように錯覚させるしw

・照明が明るすぎるのが非常にもったいない。薄暗くすればもっと怖くできたし、少なくとも宇宙船内セットのチャチさは目立たなくなったのに。

・「宇宙大怪獣ギララ」(1967年)や「キャプテン・ウルトラ」と同じ日本特撮映画株式会社。ミニチュアがイマイチ。せめてアップになる部分だけでもていねいに仕上げてくれたら。窓がテープ切って貼り付けたようだし平行が曲がってるし、翼の付け根などに盛ったボコボコのパテ痕が見える。

・あと、やはり伝統の日本特撮、ピアノ線で吊ってゆらゆらする「操演」と、スケール感を著しく損なうロケット噴射(煙がもくもくと立ち上る)。光学合成シーンもいくつかあるけど、クオリティがやけに低い。

・宇宙ステーションの人たちがいくらなんでも多すぎないか? 賑やかすぎるというよりギッシリだ。大勢いるって設定でも三分の一くらいで十分と思う。

・音楽が時代劇のようで画面と合わない。アメリカ人にはどう聞こえたんだろ?

・1966年の「海底大戦争」に続く日米合作スタイルの第二弾とのこと。子供の頃に想像してた「日本人俳優ではなく、アメリカ人俳優で撮れば、ハリウッド映画と見た目変わらず世界に売れる映画が作れるぞ」をそのまんまやってたのね。「絵のアニメなら世界で売れる」は実現したけど。

◯アメリカ版予告編

予告編、なかなかカッコいい。ネタバレ全開。当時のものじゃないかもだけど、めちゃ面白そうだ。主題歌付きで雰囲気ちがう映画に見える。「The Green Slime」というタイトルは、たぶん「マックイーンの絶対の危機」(1958年)の赤いブロブ/スライムに対してかな?(グリーンスライムなのは第一形態だけど)。
https://youtu.be/mq1VzlbxRJ8?si=08MGVd9cgT_iVkAc

こちらは主題歌フィーチャー。こちらもすごくイイ。

アメリカ公開版は20分も長い。人間ドラマ部分がカットされた? 完全版では割とちゃんとした映画だったのかも。タランティーノも大好きらしく、深作監督にサインをねだったのはこの映画のレーザーディスクだそう。

同じ年公開の「2001年宇宙の旅」と比べるのは酷としても、1950〜60年代怪奇SFの範疇としてはかなり良いのではないか? 伝統的絵柄のポスターがめちゃカッコいいけど、この種の映画と考えれば満点かも。

●風が吹く時(1986年) 1:24 イギリス U-NEXT

「ザ・デイ・アフター」(1983年)は観に行った。同じテーマの映画として気になってたけど観ないままになってた映画。

イギリスの田舎に住む老夫婦ジムとヒルダ。戦争が近いというニュースを知ったジムは政府配布のパンフレットを参考に備えを始め、簡易核シェルターを家の中に作りはじめる。切迫感のないヒルダもしかたなく協力する。戦争はすぐに始まり、核ミサイルが落ち、家は半壊する。何日も閉じ込められた二人は水も食料もなくなった上、放射能の影響で衰弱していく……というアニメーション映画。

原作・脚本:レイモンド・ブリッグズ、監督:ジミー・T・ムラカミ。冒頭、実写映像にデヴィッド・ボウイの歌が流れる。あれ?違う映画を見始めちゃったか? と思ったら、歌詞は「When the Wind Blows」。そっか、デヴィッド・ボウイがこの映画の主題歌歌ってるって件、なんとなく覚えてた。

かなりきつい映画。核戦争の直接的な描写はほとんどない。子供の頃の第二次大戦経験者で古いタイプの模範的小市民、おしゃべりな夫と家庭的な妻、楽観的でのんきな二人が、どうしようもない最期へ追い込まれていく。最後まで前向きで明るいのが悲しい。

ラジオや電話の音声以外、ほぼ二人芝居。吹き替えは森繁久彌と加藤治子。日本語版監修を大島渚がやってるけど、聞き取りにくかったりしてほとんど字幕で見た。オリジナルの声は森繁より少し若くて明るく、映画の雰囲気により合ってると思う。

ミニチュアの背景を撮影した上に人物のアニメーションを重ねる技法。人形劇っぽいかわいらしさがあり、悲劇との落差が効く。

0 件のコメント: