予定ではジャック・タチ2本とピクサー1本。のつもりだったけど、U-NEXTで見れるジャック・タチ作品残りの一本と交換。タチの脚本をアニメーション映画にした「イリュージョニスト」(2010年)もあるけど、また後日。
●プレイタイム(1967年) 2:03 U-NEXT
パリの最新オフィスビルにやってきたジャック・タチ演じるユロ氏。面接担当者とすれ違いまくったり、オフィス家具の見本市に紛れ込んだり、戦友と再会して家に招かれたり、ナイトクラブのしっちゃかめっちゃかに巻き込まれたり。一方、ツアー観光客の若いアメリカ人女性バーバラの行動も並行して描かれる。あるとき二人に接点が……というような話。
「ぼくの伯父さん」のモダニズム部分の拡大版? これにも劇映画的なストーリーがほとんど無く、面白いのかつまらないのかわからないシュールな描写が延々続く。後半には声を上げて笑えるところがいっぱいあるものの、全体すごく面白いかといえば、「う〜ん……」って感じ。画面が広すぎて、見逃してる描写やネタがいっぱいあるんだろうな。もう一度観たい。
・ユロ氏はそれほど前面に出ておらず、観客をその場所へ連れてってくれる案内役みたいなもの。どこにいるかわからず、「ウォーリーを探せ」状態だったりする。
・現代のお金に換算して1093億円と言われる巨額の製作費を得て、モダニズムのビルなど街ごと作り(後で国が買い取ってくれることになってた)、70mmで撮影、3年の月日を費やして完成させたが、一部の支持を得たものの興行的には大失敗。国との約束も反故にされ、ジャック・タチは破産したそう。
・60年代後半としてもやはり驚くほど鮮明な画質。シュールな画面と人々の右往左往、街の風景を見てるだけでも満足感ある。
・音響効果が凝ってる。ステレオの映画ってまだ珍しかった時代のはず。照明も芸が細かいし、ガラスへの写り込みをうまく使ったり、細部すみずみまで神経使ってる完璧主義者ぶりは、キューブリックの画面を思い起こさせるほど。
・ラストの、メリーゴーランドのようなアレ、素晴らしくてニコニコしてしまう。街全体が踊ってるよう。それまでの「う〜ん……」を帳消しw にしてくれて、良い後味が残る。
・日本人ビジネスマンがあちこちうろうろしてるw
●トラフィック(1971年)1:37 U-NEXT
ユロ氏が登場する最後の作品。今まで観たタチ映画全部、タイトルバックや導入部のビジュアルが最上級に素晴らしいのだが、「トラフィック」では工場の映像と文字の色が本当に最高。
パリの自動車メーカー、アルトラ社。新作のキャンピングカーをアムステルダムのモーターショーに出展するため徹夜で慌ただしく準備。朝、設計者のユロ氏も同行して出発。しかし、トラックのパンク、ガス欠、故障、警察に捕まるなど、あらゆるトラブルが降りかかることに……という話。
「すでに始まってる遠方の自動車ショーへキャンピングカーを急いで届ける道中にいろいろトラブル連発」ということで、目的もタイムリミットもあるし、「どうなっちゃうんだ??」というサスペンスまであるという、今までのタチ映画とは違い、ちゃんとストーリーのある劇映画になってる。
面白かった。少なくとも、見てる最中の面白さでは今まで観た4本の中ではベスト。急いでることが忘れられたような中盤以降はちょっとダレるけど、後半のほうが笑えるシーンが多い。いくつも散りばめられた犬ネタに爆笑。従来のタチ的人間図鑑描写も健在なものの、従来のタチ映画スタイルからは一歩後退という意見もあるとのこと。
広報担当に美人が配役されてるのも普通の映画っぽい。役名マリアを演じるマリア・キンバリーはアメリカのトップモデルだったそう。イヤな女で悪役という位置かと思ったらぜんぜんそうではなく、ステキw 場違いなくらいおしゃれさんで微笑ましい。悪くない峰不二子って感じかw 愛犬ピトンかわいい。
英語版のWikipediaによれば、億万長者のギャラリストが「プレイタイム」で破産したタチを支援する代わりに、当時のガールフレンドだったマリアをキャスティングさせたそう(要出典w)。そりゃ、ステキに描写するよなあ。
・マリアが軽やかに乗りこなす黄色いオープンカー、いいな。フィアット850をベースにしたシアタ・スプリング850というクルマだそう。検索したら、ベルモンドの「オー!」(1968年)でジョアンナ・シムカスが乗ってるとのこと。U-NEXTにあったので確認したら、同じ黄色! マリアのはオマージュかもね?
・アムステルダム・モーターショー。IAMS(INTERNATIONAL AMSTERDAM MOTOR SHOW)。たぶん1969年か1970年のを撮ったんだろう。ホンダが出展しててN360のポスターが貼ってある。トヨタや日野も遠くに見える。
・テレビ画面のアポロ11号(12号?)の打ち上げや月着陸をリアルタイムで絡めてるのが面白い。公開当時にはアポロが何日かかって月到着とか観客にはわかっていたので、「道中、どんだけ時間かかってるんだ?」って実感するには良い仕掛け。
バラ色通信「トラフィック」、マリアのおしゃれ解説
http://barairotsushin.com/2022/10/15/9078/
シアタ・スプリング 850
http://nostalgia1970.blog135.fc2.com/blog-entry-17.html
●パラード(1973年)1:29 U-NEXT
テレビ用作品(劇場公開もされた)。現在見れるのは、ビデオ映像やフィルムなどを元に最近になって復元されたものだそう。
サーカス公演の一部始終。淡々とディテールや細かい笑いを見せてくれるのは今までのタチ映画の雰囲気が確かにある。観客の二人の小さな子供からの視点。ただ、すごく面白いわけじゃないけどね。映画ではなく、サーカスとして見るべきかも。
ジャック・タチ演じる団長は一人舞台のパントマイムを何度も見せてくれる。ユロ氏としてのタチより芸をじっくり見れる。この作品で彼はとんでもなく間抜けなヤツではなく、普通のおじさんであることがわかってホッとするw
70年代前半のあの感じが満載。特に若者のファッション。今までの作品が割と時代を超越した感じだったのが、逆に古く見えてしまう。音楽も。
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