新しめ映画の続き。これでポイントを使い切ったので、次から70年代後半の映画に戻る予定。「なぜか観てなかった映画を観るシリーズ」は、世代的に誰もが観てて当たり前な名作や話題作を選んで観てるわけだから、ハズレは少ない。ただ、古い分、やはり「多少は酌量してあげないと」という気分が入り込むのは確かだろう。70年代から40〜50年もたった現在の映画は技術は進んでるし、ストーリーも見せ方も過去の作品を踏まえて工夫されてるからか、どれも手加減なしで観て面白い。今現在の時代に対する何かの表現でもあるしね。早く21世紀の映画にたどり着きたい。っても、2001年だって相当昔かもなあw
レディ・バード(2017年)
ボーダー 二つの世界(2018年)
ペンタゴン・ペーパーズ(2018年)
ジョジョ・ラビット(2019年)
●レディ・バード(2017年)
グレタ・ガーウィグ監督、シアーシャ・ローナン主演。東海岸の大学へ行きたいレディ・バードと自分で名乗ってる高校3年生の女の子。父親の失業などの事情や母親との確執、親友や恋人。卒業までの期間を描く。
途中まで自己中で行き当たりばったりな主人公に入り込めなかった。「ナポレオン・ダイナマイト」の女の子版なのかな、ちっとも面白くないと思ってたら、小うるさい母親がどういう状況で産んでどういう思いで育ててきたのかなどわかってきたら、母と娘の話なのねと納得。後半からラストはよかった。
ガーウィグ監督の自伝的な映画で、「思い出のような映画にしたい」だったそう。振り返るとたしかにそんな感じがする。
●ボーダー 二つの世界(2018年)
スウェーデン映画。港の税関職員として働く異形の女性ティーナ。特異な嗅覚を活かして違法なものの持ち込みや犯罪などを感知する仕事。ある日、やはり異形の男の旅行者が現れ……何書いても大ネタバレになるからやめとく。
すんごい映画だった。全編異様な雰囲気。画面で行われてることは不気味だけど、怖さはそれほど無い。異形の女性の自分探しみたいな明るささえ感じることも。ちゃんと働いて世の中に役に立ってるところがとても良い。
「ついに本当の自分を解放!」のシーンなど、なんかこっちも嬉しくなってはしゃぎたくなっちゃうw 世の中に溶け込めない人が「あ、自分のことだ」と感じるようなファンタジーかも。あと、現代の描写と犯罪、昔からの恐ろしい伝説も絡んできて、現実世界と地続きになる怖さもあった。
特殊メイクがすごい! メイキャップをまったく感じさせなかった。演じてるのは普通にきれいな女優さん。
「ぼくのエリ 200歳の少女」と同じ作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編が原作。クラシックなホラーや伝説・伝承を現代社会と絡めるのが得意なのかも。ただ、あの「ぼくのエリ」のボカシ問題と同様の「あれ?よく見えん」がこの映画にもあった(劇場公開版は未修正だったそう)。
●ペンタゴン・ペーパーズ(2018年)
スティーブン・スピルバーグが「レディ・プレイヤー1」を作ってる最中に片手間で撮った割に大絶賛されたという映画。メリル・ストリープ、トム・ハンクス主演。
歴代大統領と政権が長年に渡って隠してきた、勝てないとわかっているベトナム戦争に関する最高機密文書。その一部をNYタイムズがスクープするが、ニクソン政権によって差し止められる。地方紙にすぎないワシントンポストのベンは、残りの文書を手に入れて掲載しようと奔走。しかし、すでにストップがかかってる機密文書の掲載は社を危機に陥れるかもしれない。社主のキャサリンも大きな決断を迫られる……という話。
細かい描写や子供や若者など小さなエピソードの入れ方が、ものすごくスピルバーグ風味。前半、なんでこんなモタモタしてるんだ?的にパッとしなかったけど、後半はちゃんと盛り上がる。おもしろかった。
ラスト、同じくワシントンポストがスクープすることになる「大統領の陰謀」にそのまま続くw ほとんど第二幕みたいに。スピルバーグ、これがやりたかったのねw
アメリカ民主主義の根幹の「報道の自由」を守るための戦い。「この映画は私たちのツイートみたいなもの」だそうで、片手間の製作で、トランプ政権や報道のあり方についてサラッとチクッと描くのが小気味いい。ちょっとストレートすぎるリベラル全開ではあるけど。
メリル・ストリープは非常に良いとして、トム・ハンクスは役の上で前のめりになりすぎて滑ってる感が多少あった。スピルバーグの主義主張が生すぎるからなあ。
アナログ時代の新聞が作られる過程は面白かった。原稿の校正から組み上がった活字が枠に入れられ、インク、輪転機、紐がかけられてトラックへ、店頭に投げ下ろされるまで。報道の力が波紋となって人々に届くまでを実感。
●ジョジョ・ラビット(2019年)
タイカ・ワイティティ監督、スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル。第二次大戦終盤、ユーゲントで立派なナチ兵士になろうと奮闘する10歳の少年ジョジョ。イマジナリー・フレンドはヒトラーw 密かに反ナチの姿勢だがそんなジョジョを温かい目で見守る明るい母親と暮らしている。ある日、壁の隠し部屋に匿われているユダヤ人少女エルサを見つけてしまう、、、というコメディ。
めちゃくちゃ良かった。「ペーパー・ムーン」がいきなり僕的最高映画の一つに躍り上がったのと同じレベルですごく良かった。ナチに心酔してる=思い込みが激しい子供の言動ってそれだけでもおもしろい。ジョジョとメガネ太っちょの親友、いいなあ。ユダヤ少女役の子も、明るい母親のスカーレット・ヨハンソンもいいし、タイカ・ワイティティ監督自ら楽しそうに演じるヒトラーもおかしい。ユーゲント少年訓練キャンプ長のサム・ロックウェルが最高にいい役!
ウェス・アンダーソン作品というか「グランド・ブダペスト・ホテル」なんかにも通じる、色や構図が印象的な美しい画面。冒頭からヒトラーの熱狂を「抱きしめたい」ドイツ語バージョンでビートルズの熱狂にオーバーラップさせるなど、無理目なのにしっくり来る音楽の使い方。ラストのデヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」ドイツ語バージョンはウルウルするくらいの最高。全体の音楽はマイケル・ジアッチーノ。
で、観客はなんとなく察してるけどジョジョは知らなかったことが明らかになっていったり、大きな悲劇があったりして、次第にジョジョの洗脳が解けていく&成長物語。匿われてるとはいえ、弱々しくなく、勇敢で強い少女エルサ! 敗戦間際のベルリンの戦闘の描写も全体のトーンに合っててすごく良かった。いきなりシリアスになる瞬間がいい。
タイカ・ワイティティ監督、「ポリネシア系ユダヤ人」と称する変わった出自なのね。
ところで、デヴィッド・ボウイの曲はいろんな映画でいいところで使われてて、そのたびに「やっぱ最高のアーティストだったんだなあ」って再認識する。今の世界の状況を彼ならどう歌っただろう?とか考えちゃうな。
ネタバレ注意。『デヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」はなぜ普遍的な名曲であり続ける? 映画『ジョジョ・ラビット』から紐解く“英雄”の意味』
https://realsound.jp/2020/03/post-518173.html
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