2021/05/14

最近観た映画メモ「永遠の門 ゴッホの見た未来」他

「配信終了間近」1本とその他2本。3本とも画家の話。ちっとも80年代映画の続きに戻れないけど、あと数本はポイント消化系の新し目映画の予定。

●永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年)

普通の意味の「劇映画」じゃなかった。監督はジュリアン・シュナーベル。デフォーとゴッホをモチーフに撮った映像芸術作品って感じか。濃い映像が非常に美しい。

ウィレム・デフォー、顔は確かに合ってるけどやはりジジイすぎるよ、、、ゴッホって若者だもん。せめて20年前のデフォーなら。オスカー・アイザック、冒頭出てきた瞬間に「あっ!ゴーギャン」ってわかるくらいなりきってる。ラストは最近の説が取り入れられてる(ただし、「西部劇のような」は、映画の西部劇が成立するずいぶん前なのでちょっと不自然?)。

手持ちカメラによる撮影、めちゃくちゃ酔う! 勘弁してくれ!ってくらい。「クローバーフィールド」並み。揺れる手持ち撮影って臨場感の代わりに没入感を失う。中盤以降は割と普通に見れるようになってきたものの。

後半、牧師との対話がスリリング。圧巻。その後のガシェ医師との会話と合わせて、絵画とは何か、芸術家とは何か的な問いかけがされている。画家である監督自身の問いかけなんだろうな。同監督の「バスキア」も観る予定。
https://video.unext.jp/?td=SID0047462

ところで、ガシェ医師って、たまたまゴッホの担当になったオーヴェールの美術愛好家の精神科医、と思ってたけど、Wikipedia見たら、謎がとけた。→ガシェは絵を描く上に、ゴッホの担当になる18年も前からピサロやセザンヌと交流持ってた。ファン・ゴッホ自身が、ピサロと親しいガシェを頼って、オーヴェールに行ったんだそう。テオもガシェを知ってて賛成。1909年に亡くなったときにはヨーロッパ最大級の印象派コレクションを持ってたって!! もともと只者ではなかった!

あと、オーヴェールってどこなのかイマイチはっきりしなく、また南フランスなのかな?とか思ったら、パリの北東すぐのところだった! 中心部からでも25kmかそこら。近っ!

あと、これはしばらく前に知ったんだけど、、、アルルやサン=レミ、プロヴァンスも、漠然とフランスの南のほうと思ってたら、地中海に接した南端、マルセイユあたりだったのね。

●ゴーギャン タヒチ、楽園への旅(2017年)

イマイチ売れないゴーギャン。パリに限界を感じ、タヒチへ家族とともに渡ろうとしたが妻に断られ、単身向かう。島では13歳の幼妻との暮らし、絵も描き、弟子もいたりするが、金がなくなり肉体労働、健康を害してフランスに送還されるまでの話。

エドワール・ドゥリュック監督、ヴァンサン・カッセル主演。「ブラックスワン」で見たことあるけど、オスカー・アイザックやアンソニー・クインにくらべるとちょっと線が細いというか、ゴーギャンの粗野で体力ありそうなイメージじゃない。当時40代前半なわけだし、やはり老けすぎ。

ひたすらゆったりとした進行と美しい自然。派手な事件とかあまりなくて静かだけど、退屈はしなかった。

タヒチって未開の南国の楽園ってイメージあるけど、19世紀末には首都パペーテは文明化しすぎてゴーギャンが逃げ出したほど開けてたそう。映画でも島民にキリスト教が浸透済み、すでに南国を売り物にした観光地になりつつある。「バウンティ号の叛乱」はこの120年前。

調べると、実業家や画商としてそこそこイケてたゴーギャンの転落と画家への転身、妻と5人の子供を捨てたり、タヒチでの好き放題の生活など、アンソニー・クインが演じたイメージそのままのけっこう「ひでえヤツ」。ゴーギャンがモデルの「月と六ペンス」は1942年の映画化のみか。キーファー・サザーランドとナスターシャ・キンスキーが出てるゴーギャンを描いた映画「シークレット・パラダイス」(2003年)というのがあるらしいけど、配信には見当たらない。

●バスキア(1996年)

ジャン=ミシェル・バスキアの伝記。それほど劇的な盛り上がりとか成功物語とかではなく、監督のジュリアン・シュナーベルが、友人だった彼の物語を暖かい目で描いて残しておいてあげようって感じの映画。ゲイリー・オールドマン演じる架空の画家がシュナーベルの役割。お皿破片の絵も出てくる。

バスキア役はジェフリー・ライト。ウォーホールになり切ってるデヴィッド・ボウイが素晴らしい! カツラは本物だそう。身長が高すぎるんじゃ?と調べたら、ウォーホールって180cmあったんだ!(178cmのボウイのほうが低い!) で、バスキアが184cm!! 高身長の世界w

脇役がものすごいメンバー。ベニチオ・デル・トロやデニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケンやウィレム・デフォー、ギャロやサム・ロックウェル、テイタム・オニールまでチラッと出てる。他にもいろいろ。それぞれの演技見てるだけでも相当楽しめる。

40年前のニューヨークのアートの世界の再現、渦中にいた一人が作ってるわけで、たぶんリアルなんだろう。いろいろ興味深かった。まあ大変な世界なのは確実で、うらやましい感はあんまりないけどw

冒頭、「ファン・ゴッホの神話」について触れてる。やはり、シュナーベルは「永遠の門 ゴッホの見た未来」を究極の芸術家物語として撮っておきたかったんだろうな。

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