タイトルが1単語の怖い系、悩まず軽く観れそうな映画4本。「Pearl パール」は予想外に良かった。
●Smile スマイル(2022年) 1:55 アメリカ Netflix
監督・脚本:パーカー・フィン。出演:ソシー・ベーコン、カイル・ガルナー他
精神科医のローラ。目の前で若い女性が不気味な笑顔を浮かべて自殺。以来、彼女に異変が続く。「何かにとりつかれている!」。激務の寝不足や、子供の頃に母親が自殺したトラウマがあったローラは精神的に追い詰められていく……という話。
怖かった〜。どちらかといえば軽めな恐怖ものかと思ってたのに、「ギャッ」とのけぞったシーンが4〜5カ所はあった。「不気味な笑顔」を出すタイミングがうまい。「わー、やめてやめて!」ってなったもんw 刑事の元カレの活躍で地に足がついた感じになって安心してたのに、さらに現実か妄想かわからなくなっていくところもよかった。
・主観的妄想だとしても、化け物のようなアレを出すのはやりすぎかな。
・最終スマイルがイマイチ怖くなかったのが惜しい。
・iPhoneの着信音が自分と同じで、何度も飛び上がって驚くオマケつきだったw
・続編が10月公開だそう。そっか「連鎖」だから、同じ設定でいくらでも続編作れるね。
●オールド(2020年) 1:48 アメリカ U-NEXT
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン。ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス他、シャマラン自身も出演。
子供二人を連れた離婚予定の夫婦。最後の旅行として南国のリゾートホテルにやってきた。他の家族たちといっしょに案内されたプライベートビーチ。そこは30分が1年という異様な速さで歳をとっていく不思議な場所だった……という話。
途中までとてもよかった。抜け出せないビーチで人々が不思議な現象に翻弄される様子は「LOST」のよう。シーズン4〜6に霊媒師役で出てた好きな中国系俳優ケン・レオンも出演してる。
ただ、冒頭のわざとらしい伏線で予想はついてたけど、終盤の謎解き結末は余計だったと思う。あきれるほど下手なラストに興醒め。「急激に歳をとる」という無理な設定に納得できるような理由は必要ないよ。謎のままでいい。しかしまあ、一般映画として公開するにはああいうラストが必要なんだろうな。
それでも、人や家族にとって時間とは何か?が、加速・濃縮された時間で表現されてるのはなかなかよかった。小さい子供が、大人が、年寄りが、病人が、急に歳をとったらどうなるか?ネタをもれなく盛り込んでる。
・二日くらいのうちに中年になってしまった子供たち、精神や語彙や態度など子供のままってわけにはいかなかったのかな?ヒゲぼうぼうでなくきれいに剃られてるしw
・あと、すごい低予算感w 主に崖の質感がそう感じさせるかも。
・発狂した男が何度も口走る「ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが共演した映画は何だ?」は、シャマラン監督の認知症の父親が繰り返し言ってたのを「正気を保つためにしがみついている事柄」として使ったそう。(共演は「ミズーリ・ブレイク」(1976年)のみとのこと)
・「Smile スマイル」も「オールド」も、異人種カップルばかりでステレオタイプ的に人物を捉えづらくなってる。しかし、けっこう慣れてきたかもしれない。このまま「実世界でもそれが当たり前」という意識になっていけばいいんだろう。
●LAMB/ラム(2021年)1:46 アイスランド、スウェーデン、ポーランド U-NEXT
監督:ヴァルディマル・ヨハンソン、出演:ノオミ・ラパス(製作総指揮も)、ヒルミル・スナイル・グドゥナソン他。監督は「ローグ・ワン」の特殊効果担当だったとのこと。
アイスランド、人里離れた山に住む羊飼いの夫婦。ある日、羊から何か羊でないものが産まれる。夫婦はそれを大切に育て、穏やかに幸せに暮らしていた。そこへ夫の弟が久しぶりに訪れ……という話。
不穏な空気はずっと漂ってるけど、恐怖映画ではなくファンタジーか寓話だろうな。穏やかに暮らしてるようで、描かれない過去を無理に押し込めている感のある二人の不安と幸せの象徴のような。
ラストは非常に納得した。というか、腑に落ちた。圧倒されるような自然描写がここで効いてくる。この世界は人間のものってわけじゃないよ、と。
・「何か羊でないものが産まれ」も立派なネタバレなのだが、もう一つ、映画紹介の簡単な説明が大きなネタバレになってるのはもったいない。中盤でようやくそれが判明して、ああそうだったのか!ってなるはずの設定。途中でさりげなくヒントは出るけど。
・ものすごくゆったりした撮り方。普通なら10秒で済ませるシーンにたっぷり1〜2分使う。再生速度を上げる誘惑に耐えきれないw
・アレ、なんとなくなじんでない感じ。CG合成なのか作り物なのか、微妙にデッサンが狂ってて違和感があるというか、首の角度をもう少し前にしたらいいんじゃないか?、などw
・「ラスボス的なアレ」はいかにも北欧な感じで説得力あった(アイスランドって北欧か?と思ったら、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドの5か国を北欧と言うそう)。
・すごい読み解きをしてる人が。へ〜〜! クリスマスから始まるわけだし、キリスト教や北欧古代宗教的な何かを象徴してるんだろうとは思ったけど、そこまできっちりやってたとは ↓
https://yureeeca.com/lamb/
●Pearl パール(2022年) 1:42 アメリカ U-NEXT
「X エックス」(2022年)の殺人鬼老婆のパールがいかにして捻じ曲がって暴走を始めたかが描かれる前日譚。
監督・脚本:タイ・ウェスト、出演:ミア・ゴス(制作総指揮も)、デヴィッド・コレンスウェット他。A24映画。コロナ禍の最中の撮影であり、第一次大戦期のスペイン風邪パンデミックを重ねてる。
1918年、テキサス州の田舎町。スターを夢見る農場の娘のパール。厳格すぎる母と、動けず話せず車椅子に座ったままの父と暮らす。夫はヨーロッパへ出征中。どうにもならない境遇のストレスから、パールは小動物を殺し始める。そんなとき、町で全米を巡る慰問ミュージカルのオーディションが行われることになり……という話。
すんごい良かった。傑作じゃん! びっくりした。「X エックス」は「アホな若者たちが殺人狂に次々殺されるホラー映画」のオマージュというかパロディだったけど、これはぜんぜんちがう。黄金時代の映画のような風格で見応えあった。
クラシックな映画のような絵作りやいかにもハリウッド調の音楽。20〜30年代のモノクロ映画を、50年代に彩度が高く美しいテクニカラーでリメイクした映画のよう。
・「X エックス」は冒頭の7〜8分は「めちゃ最高!」で、いかにも映画的なワクワクの詰まったものだったけど、今作では映画的ワクワクが全編に充満。
・ミア・ゴスの怪演だけでも見る価値ある。「シャイニング」以来の顔芸映画かも。こんな強烈で目の離せないエンドタイトルはそうそう無いよw
・パールの夫。「X エックス」で殺人鬼老婆を甲斐甲斐しく手伝うジジイと同じ「ハワード」で同一人物。彼も相当おかしい人なんだろうな。
・ビョークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000年)や、クルマのアレは「サイコ」(1960年)、斧のアレは「ファーゴ」(1996年)かな? 他にもいろいろ入ってそう。
・今年7月に公開された三作目「MaXXXine」(2024年)がめちゃ楽しみ。第一作を生き延びたミア・ゴス演じるマキシーンの話だそう。予告編を見ると、ああそうか、マキシーンもスターを夢見る女優の卵だったわ。成り上がっていくマキシーンにパールの怨霊が取り憑いて……という感じかな? ハリウッドが舞台なだけに、オマージュシーンがてんこ盛りっぽい。
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