7月後半にがんばって観た3本。このすぐ後に「エスター ファーストキル」(2023年)を見始めたのだけど、ただでさえ怖いのに苦手な「正体がバレるかバレないか潜入もの」でもあって、途中で止めたまま続きを見れずにいるw
●地獄のバスターズ(1978年) 1:39 U-NEXT
1978年ってちょっと時代が新しいけど、イタリアでたくさん作られた「マカロニ戦争アクション映画」のひとつらしい。原題(英題)は「THE INGLORIOUS BASTARDS」。タランティーノがこれに刺激されて作ったのが「イングロリアス・バスターズ」だそう(内容は無関係)。
第二次大戦末期のフランス。MP(陸軍憲兵)に捕まって護送中のならず者兵士たちが、敵の襲撃の隙をついて逃げ出し、スイスを目指す。出会ったパルチザンたちに特殊部隊と誤解され、ドイツ軍V2ミサイルの機密奪取作戦に加わることに……という話。「加わることに」の経緯などかなり面白い。
ほぼコメディタッチだけど、ドイツ軍うじゃうじゃ、古城アクション、装甲列車付きの列車アクションや鉄橋爆破、バイクアクションまで、てんこ盛りの本格派道具立て。ただ、戦闘シーンはマカロニウエスタンの撃ち合いのように緊張感がなく、けっこうゆるゆる。
それでも、登場人物のキャラ立ちが良いし、細かいエピソードも面白い。とってつけたような恋愛要素まである。コメディタッチだったのに、次第に無闇に悲壮感が漂う雰囲気に移行。あれ?そういう映画だっけ? ラストは狐につままれた気分w
なかなか大スケールに見えるけど、よーく見るとマットペイントや書き割りがあちこちに。よくできてるのもあればイマイチのもあるけど、色調がしっかり合わせてあるためか違和感がぜんぜんない。
肝心の大爆破シーンはミニチュア感丸出しなのが惜しい(それでも迫力はかなりある)。そのへん、同じ年の「ナバロンの嵐」のダム爆破シーンがミニチュア感丸出しだったのと共通。
車両的にはキューベルワーゲンはいっぱい出てくるけどハーフトラックなどは代用。ただ、ケッテンクラートが出てくる。「プライベート・ライアン」(1998年)で動くの初めて見て感激!とか書いたことあるけど、もっと前から出てたんだ。あと、フォッケウルフFw190らしき戦闘機が出るけど、なぜか脚を出しっぱなしで飛行。ラジコンかな?
・余談/いかにもタランティーノが大好きに違いないマカロニウエスタン風の派手なタイトルバックに流れるテーマ曲。6年生ときラジカセを買ってもらって最初にテレビから録音した「空爆大作戦」(1969年)のテーマ曲に似てる。検索すると、どちらもフランチェスコ・デ・マージという作曲家によるもの。他にもエンツォ・G・カステラーリ監督作品に何本か参加してる。劇判は戦争映画というより、ローマ時代の史劇な感じがする。
「空爆大作戦」、実は冒頭のテーマ曲を録音したけど本編は見なかった。「テレビの映画は週に1本まで」という制限があり、テーマ曲の録音後は見るの自粛した。本当にかわいそうw 調べたら、その放映は1974年9月25日「水曜ロードショー」。
バトル・オブ・ブリテンの裏側を描いたという内容は最近検索して知った。YouTubeで予告編や切り取り動画を確認するとけっこうスケールが大きな戦争映画に見える。ダンケルクのシーン、すごい!
「空軍大戦略」(1969年)と同じ時期に公開された便乗映画らしい。邦題は明らかに便乗してるなw っていうか、「空軍大戦略」も含め、戦争映画やマカロニウエスタンなどの邦題はほとんど全部ひどい。それが味わいと言えなくもない場合もあるけど。今からでも原題の直訳を併記するようにできないものかと。
●テンタクルズ(1977年) 1:42 U-NEXT
生頼範義の国内用ポスターイラストが超最高! しかし内容は最低と評される、「ジョーズ」以降の動物パニックブームに便乗した映画のひとつ。これもイタリア映画だったんだ(アメリカとの合作)。
海の町。あちこちで人々が失踪し、無惨な姿で見つかる事件が頻発。海底トンネルの工事との関連を疑う老新聞記者。部下2名を失った海洋学者が調査したところ、事件は巨大タコの仕業かと疑い始める……という話。
キャストがすごい。主演が俳優としてもときどき見る巨匠ジョン・ヒューストン、妹役にシェリー・ウィンタース。あとヘンリー・フォンダ(翌年にも「スウォーム」という殺人蜂のパニック映画に出てる)。B級映画と呼んでる記事もあるけど、超A級相当かも。監督 オリヴァー・ヘルマン。
のんびりしたビーチの風景のタイトルバックからの導入部や、海の町の人々の暮らしが垣間見える描写がイイ。70年代半ばの映画やドラマのこんな感じはホント好き。リマスターされた映像らしく、画質や色が非常に美しく、46年前の映画と思えないほど。
まあ、すべてのシーンがゆるゆるで、「ああ〜、これは駄作と言われるのもしかたないか」という感じ。クライマックスは他で見たことないくらいのひどさ。そもそも、タコがまったく怖くない。ただ、上に書いたように、70年代半ばの映画の雰囲気は「僕の映画体験の原風景」みたいなもので、やたら心地よい。内容はどうでもいいくらいw
主演大物俳優が二人とも70代の年配映画。ただ、年配俳優を使うのは「タワーリング・インフェルノ」や確か「大地震」にもそんな要素あったし、パニック映画の一つの定番趣向なのかも。
ジョン・ヒューストン、「チャイナタウン」での圧倒的な存在感というか、この人には絶対かなわないっていう底知れぬ怖さが良かったのにな。この映画では「真面目に老新聞記者を演じてる」以上の何かはなかった。ヘンリー・フォンダは、いるだけ、に近い。シェリー・ウィンタースは母親役を嬉々として演じてて悪くないけど。
・襲撃など含む要注意状態を示すギターの短いフレーズがマカロニウエスタンっぽいw 検索すると、音楽担当のステルヴィオ・チプリアーニは、マカロニウエスタンを何本もやってる作曲家。と思ったら、「スリラーにはギターを使い、マカロニ・ウェスタンには使わない」と言ってるそう。で、肝心の襲撃中の劇判はノリノリで楽しい感じだったり、あちこちでミスマッチ感あるのは、もしかしてわざと? あと、クライマックスの戦いの音楽は変すぎる。
Wikipediaによると、ポール・モーリアなどにもカバーされてる名曲という「ベニスの愛」が、半年遅いフランシス・レイの「ある愛の詩」テーマ曲に似てて騒動になりかけるが、レイがあっさり謝罪、平和に解決したというエピソードも。
・リマスターの際に音響をステレオ化したりいじったと思われるのだが、効果音の立体感がとても不自然でジャマ。モノラルで見たい。
・生頼範義のポスター、思いっきりネタバレしてるのね。絵にする素材が乏しかったんだろうけど。(いろんなポスターイラストあるけど、ネタバレは日本だけ)
・大瀧詠一の「泳げカナヅチ君」の歌詞には「ジョーズ」とともに「テンタクルズ」が出てくる。アルバム「NIAGARA CALENDAR」は77年12月の発売で、公開年と同じ。(「およげ!たいやきくん」のヒットは76年前半)
・とるに足りないただの「動物パニックブーム便乗映画」と思い込んでたけど、こんなに書く内容がある作品とは思わなかったw
●ブリスター! (2000年) 1:46 U-NEXT
あったあった! 配信されてないか、ときたま探してたのでした。この映画を知ったのは、2001年、外苑前のリブロ青山店(2015年閉店)でガシャポンの「ルパン三世 カリオストロ」、クラリスが出ない!とかやってて、同じくそのガシャポンをかわりばんこに回してた知らない人と交換してコンプリート!
その人は原健一郎さんというクリエイターで、「ブリスター!」という映画でフィギュアの造形とか担当した、と聞いたのでした。22年もたってしまいましたが、ようやく見れましたw
監督 須賀大観、主演 伊藤英明、大塚明夫など。パックンも出てる。プロデューサーの藤巻直哉って、博報堂のジブリ関係のプロデューサーで、大橋のぞみと「ポニョ」歌った人だ!
内容は、超々レアの「ヘルバンカー」のフィギュアをどうしても手に入れたいユウジと、恋人や周囲の人々との軋轢などのドラマ。ユウジとフィギュアが、未来の荒廃した地球の運命を握るというSFシチュエーションも同時進行で描かれる。
すごい面白かったかというと、う〜ん、そうでもなかったかな……。主人公が情熱の割にあまり行動してないように見える。ただ、設定は面白いし、要素めちゃくちゃ多いし、SFに繋げるアイディアも素晴らしいし、劇中劇ぽく見せられるアメコミもそれっぽくてよく出来てる。一度見れば、カルト映画的に何度でも楽しめるはず。
・20世紀末の熱気が缶詰にされてる感じ。23年前って完全に「昔」なんだなと納得するw ネット普及の初期で、まだ限られた人が使う感じや、「ユー・ガッタ・メール」ってAOLの画面が出たり。渋谷だか原宿あたりの懐かしい雰囲気なども。
・主な登場人物たちがコレクションしたり消費するだけではなく、それらを糧として何かを産み出そうという姿勢が基本なのにはちょっとワクワクした。
・この映画でのフィギュアとは、主に当時ブームだった「スポーン」のアクションフィギュアをモデルにしてるらしい。ブームだったのは知ってるけど、集めてる人とか周囲にいなかったので実感としてはよくわからない。
・ゼスプリの「キウイを食べてフィギュアを当てよう!」に応募する場面があるけど、2000年頃にそんなキャンペーンをやってたか不明。検索では出てこない。もちろん、画面に出てくるのは現在のキウイブラザーズではない。エンドクレジットにゼスプリはちゃんとある。
・エンドタイトルで流れるフィギュア関係者インタビューに高橋信之さんが登場しててびっくり!
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