2010/02/24

■グラフィック薄氷大魔王[211] 「ヤンス!ガンス!」フィギュア制作実況中継

■グラフィック薄氷大魔王[211]
「ヤンス!ガンス!」フィギュア制作実況中継

吉井 宏
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先月末、約10日間にわたって、「ヤンス!ガンス!」のフィギュアを作ってました。先週書いたように、3D立体出力サービスサイトのインタビューのために作ったわけですが、「ヤンス!ガンス!」の宣伝にもなるからと秋元きつね氏のすすめで、Twitterに制作実況中継してました。

< http://twilog.org/tweets.cgi?id=hiroshiyoshii&word=YGフィギュア >

INTER-CULTURE < http://inter-culture.jp/ >

3D立体出力物が届いてから、表面処理〜塗装〜完成までの制作過程は、この実況中継にほとんど全部書いてあります。ここ(デジクリ)では、実況に書かなかったことや補足を書きます。

○3D立体出力用のデータ

ヤンスとガンスの3Dモデルは、実際にアニメーションに出てくるのと同じものです。ポスターと同じポーズの3Dモデルを細かくポリゴン分割した上で多少の手直しを加え、Cinema4Dから書き出したSTLフォーマットで渡しました。出力したものは一体あたり、十数万ポリゴンです。それでも出力物にはポリゴンのカクカクが見えるところがありました。もう一段階分割すれば滑らかになりますが、それだとデータ量が4倍になるため、出力に時間がかかりすぎるとのことでした。

○出力物について

スリーディー・システムズ社の大きなマシンによる出力物の表面には細かい等高線状の段々がある。0.15mmピッチでの出力とのこと。以前使ったDimensionsというマシンは0.26mmで、相当ボコボコしていたのにくらべれば、かなり滑らかな印象。素材はABS樹脂の一種だそう。

出力物は光と高温に弱いとのこと。直射日光があたるような場所に置いておくと、たちまち真っ黄色に変色してしまうそうです。まあ、塗装しちゃえば関係ないですけどね。

温度については、暖房の吹き出し口近くに置くと変形してしまうおそれアリとのこと。これが一番困った。なぜなら、洗浄後や塗料を乾燥させるため、高温のドライヤーを使いまくるのがフィギュア制作作業だったりするのです。今回、ドライヤー完全不使用ということで、作業時間がずいぶん延びたのは確実。洗うのにお湯も使わなかったので冷たかったし。

< http://www.3dsystems.co.jp/ >

○表面処理について

ラッカー系のサーフェイサーや液状パテには「ひけ」というものがある。すぐ乾燥するように見えるけど、実際には何日も何週間もかかって溶剤が蒸発し、縮んでしまう。以前、サーフェイサーを分厚く塗ってはサンドペーパーをかけること5回10回、キズや段差がどうしても消えないのはどういうわけだ?ということがありました。また、完成した原型を半年後に見たら、段々が復活してたことも。

なので、作業開始から撮影まで2週間くらいしかない今回は、なるべくサーフェイサーによる段差埋めはしないことにした。つまり、全表面を少し削って磨くのです。サーフェイサーで半ば埋まるはずの段差の分まで削ったので、作業量はたぶん二倍。その他、パーツのつなぎ目にはヒケのないポリエステルパテを使用した。

○筆塗りについて

仕上げのトップコートを除き、スプレーやエアブラシを使わずに筆塗りのみというのが今回の一つのテーマでした。部屋でエアブラシ作業をするのはまっぴらだ。エアブラシは用意や後片付けが面倒。あと、エアブラシは対象の表面よりも、どこかに飛んで行ってしまう塗料が多かったりして、もったいなくて耐えられん。大量に同じフィギュアを塗装するのでなく、一点物として塗るのなら、たぶん筆塗りのほうが確実に塗れるので気がラクです。もちろん、時間は余計にかかります。

○「フィギュア作りはたいへん」について

削って磨いて粉だらけになって洗って、を何度も繰り返し、色を調合して塗ってみていやこの色は違う、再び調合塗り直し、細かいところがはみ出た!修正、あっここ塗り忘れ、洗って片付けた筆と色のビンを取り出してまた作業・・・。非常にたいへんです。

で、ヤンスガンスフィギュア作業の十日前は、ワンフェスに出した「usacco」と「umacco」を5つずつ塗装してたのです。こちらは表面処理なしの塗装のみで3日間くらいかかりました。

今回は出力物だから、自分で粘土やパテを盛って作る作業がない。表面仕上げと塗装だけ。また、「一点物」なので、型取りや複製の工程もない。全部やったら2ヶ月くらいかかるんじゃないか。かかり切りではなかったけど、10日間で済んでよかったです。

フィギュア塗装集中週間が終わった直後は、「もうぜったいフィギュアはやりたくない、少なくとも、自分で塗装するのはやめよう、ちょっと高くても塗装を依頼できる業者もいるみたいだし、そういうところに頼もう。フィギュアの道具や塗料も全部処分しよう」と思いました。

1月後半のクソ寒い中、窓と玄関を開けはなした吹きさらしで塗装作業なわけです。相当寒いです。ユニクロのフリースを上下着た上にジャージを着て、さらにフリースのジャケットを着てました。体力消耗もあったのか、終わったあと10年ぶりに2日間風邪で寝込みました。

で、それから1ヶ月くらいたちますが、ダメですね〜、しんどかったこと、もう忘れ始めてます。出来上がったときの安堵感やうれしさに覆い隠されちゃいます。また、次にやるときは、もっと要領よく速くできるに違いないって確信もわき上がってます。で、またやりはじめると「あ〜、ぜったいやめようって思ったのに〜」って後悔しはじめるんだけど。今回もそうだった。いったい、何度やったらわかるんだ?

ワンフェス出品作の塗装作業
< http://picasaweb.google.com/hiroshiyoshii/UsaccoUmacco# >

ところで、制作実況Twitterのまとめ記事のリンクはtwilogの検索を利用したURLなわけですが、この方法を思いつくまでの数時間、制作過程の写真をいったいどうまとめようか迷ってました。iWebでページを作ったり、Picasaにアルバムを作ったりしました。Picasaのほうは完成しちゃってます。こちらはTwitterに投稿しなかった写真数点を追加してるし、スライドショー的に見れるので見やすいかも、ってことでリンクしときます。

Picasaウェブアルバム < http://picasaweb.google.com/hiroshiyoshii/pUWcK# >

【吉井 宏/イラストレーター】

先週のMKチャット対談の「魚肉ソーセージやミカンでiPhone操作」の件。以前、僕も検証したことがあるんですが、iPod touchは煮物のイカの足とネギで操作できました。居酒屋でした。水分を多く含んだ材質で、指を通じて電導してることがポイントらしいですね。

「ヤンス!ガンス!」を含む上映会「おれ♡劇場 うるまでるび×秋元きつね×ケロケロキング 上映会とトークライブ」というのが渋谷のユーロスペースであります。僕はこの上映会に関わってるわけじゃないけど、おもしろそう!
< http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=260 >

●アニメ『ヤンス!ガンス!』放映中。TVK(テレビ神奈川)金曜朝7:25と深夜25:25。Wiiシアターの間でも配信中。

HP < http://www.yoshii.com>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/>

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