2010/01/13

■グラフィック薄氷大魔王[205] 「カールじいさんの空飛ぶ家」と「アバター」と3D上映

■グラフィック薄氷大魔王[205]
「カールじいさんの空飛ぶ家」と「アバター」と3D上映

吉井 宏
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12月後半に2本の3D上映作品「カールじいさんの空飛ぶ家」と「アバター」見てきました。

映画本体の一言感想としては・・・

「カールじいさん」、最初の10分だけで料金分の価値アリ。その10分でカールじいさんの動機に共感しちゃうので、本編のストーリーは割と平板なのに十分鑑賞に堪えるという感じ。犬がイイ!

「アバター」、スジ運びは定石通りというか定番だし、構成要素もいろんな作品からの引用っぽいので、意外性はほとんどないんですが、映像に引っぱられてとても楽しめた。あの画面で複雑で難解なことやられたらわけがわからなくなる。映像をひっかかりなく見てもらうための、何も考えなくてもいいストーリーなんでしょうね。

で、3D上映の話。

「カールじいさん」は新宿のバルト9で観たんだけど、実はかなり残念だった。とにかく3Dメガネが暗い。空に色とりどりの風船という非常に鮮やかな画面なのに、わざわざ暗いサングラスをかけて観てる感じ。映像の美しさがもったいなくて、3Dメガネをつけたりはずしたりして観てました。

3Dメガネが壊れてるのかと思いましたが、ちゃんと立体感はある。上映後、メガネ回収係の人に聞いてみたら、そういう方式の3Dなのでそんなもんとのこと。う〜ん、今後、3D上映の映画なんて観に行かないぞ!とまで思いました。映画の内容の本質とは関係ないささやかな立体感のために、鮮やかさや快適さを失うのはもったいない。

数日後、「アバター」はIMAX方式で観るべき、という話をTwitterで読んだ。そうか、上映方式の問題だったんだ〜、と、109シネマズ川崎に行ってきました。

IMAXの3D上映は、やはり暗く見えるものの、「カールじいさん」よりはマシでした。音響の立体感もすごい。でも、「アバター」のあの世界に完全没入できるかと思ったのに、そうでもなかった。3D上映って、目の前で事件が起きているような実在感があるのかと思っていたので、ちょっと残念。

目の前に刃物が飛び出してくるようなベタな3D効果の使い方はしてなく、世界に浸ってもらうような地味目な立体感は意図したものらしい。ただ、「映画」という表現形式の根幹に関わってしまうんだけど、カットが切り替わるたびに、自分の目ではなく、カメラが撮った映像であることを意識させられてしまう。10分単位の超長回しショットと3D上映方式を組み合わせると最強かも。

「アバター」は3D映画の「ジャズ・シンガー(最初のトーキー映画)」と言われることもあるくらい革新的らしいし、これからの映画はみな3Dになるって話なのに、こんなのでいいのか?? 続けて2本の3D映画見たけど、どちらも明るくて鮮やかな2Dで見るほうがよかったかも、って思う。少なくとも、3D上映で見るほうが格段に良かった!とは、とても言えない。

と思ったら、こんな話が↓
< http://www.premiereport.com/paul-nise-imax.html >

日本には本物のIMAXが存在しないそうです。スクリーンのサイズも解像度もぜんぜん小さいし、上映方式もちがう。そうだったのか。ずいぶん前、新宿高島屋にあったIMAXシアターに行ったことがある。巨大スクリーンで席が垂直の壁沿いみたいでしたが、あれが本物のIMAXだったらしい。う〜ん、二子玉川に来年できるとの噂の109シネマズに、本物のIMAXがあることを期待したい!

ところで、たまたま偶然、数日前にDVDで「雨に唄えば」を初めて観た。サイレントからトーキーに時代が変わっていくハリウッドが主題で、「ジャズ・シンガー」の話も出てくる。映像と声がシンクロしたデモ上映を見せられた人たちが「こんなのオモチャだ!」とバカにする。でも、「ジャズ・シンガー」の大ヒットの影響で時代は動き、トーキー映画を作らなきゃいけなくなる、ってのが背景です。まさに、3D上映っていう現代の革命的出来事と重なるねぇ。

【吉井 宏/イラストレーター】

Twitter、始めました。登録したきり1年以上何も書かなかったのですが、年末からなんとなく書き始め、すぐ虜に。なるほど、こりゃおもしろい。

●アニメ『ヤンス!ガンス!』放映中。TVK(テレビ神奈川)金曜朝7:25と深夜25:25。

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