●シェーン(1953年) 1:57 アメリカ Amazonプライム
小林旭の「渡り鳥シリーズ」などいくつか見た後で、「元祖流れ者」を確認したくなり、約50年ぶりに観てみた。
監督:ジョージ・スティーヴンス、出演:アラン・ラッド、ヴァン・ヘフリン、ジーン・アーサー、ブランドン・デ・ワイルド、ジャック・パランス、他。
ワイオミングの高原。流れ者のシェーンが開拓地のスターレット夫妻の家にたどり着いて雇われる。息子のジョーイにも慕われる。牧畜を営むライカーたちは一家を含む開拓民を追い出そうとしている。嫌がらせはエスカレート、ライカーが雇ったガンマンによって死人も出る。村を出ていく者も。シェーンは、ライカーたちと対決することに……という話。
部分的には好みじゃない箇所もあったりするけど、やはり「完璧映画」の一つだろうな。流れ者と家族と仲間たちと、敵。銃での解決に対する抑制がちゃんと効いてる世界で、筋を通した上での我慢の限界、一瞬の決着。シェーンと奥さんが少しだけ近づいてしまう距離の抑制の絶妙も。決別の決心は身を引くことも含んでるんだろう。
「ホームステッド法(自営農地法)」が背景にある。南北戦争後にリンカーン大統領によって制定された。西部開拓を促進するため、「5年間耕作した土地は自分のものにしていいよ」という法律。これにより、移民含む大勢が押し寄せて一気に開拓が進んだ。
最初の開拓民はインディアンと命懸けで戦って手にした土地を自由に使って牛の放牧をしていたが(カウボーイの時代)、その土地を後から来た開拓民が「ホームステッド法」を盾に自分のものとできたわけで、そりゃ衝突も頻発する。
冒頭でライカーたちが「俺たちが開拓した土地から出ていけ」は言い分として正しく見えるが、そういった背景を知ると見え方が変わる。彼らも時代の犠牲者なんだ。
内田樹「農場で働くことになったシェーンが最初に雑貨屋に買いに行ったのは有刺鉄線だった」……さすが鋭い。土地の私物化、「俺の土地に牛を入れるな」の象徴。(字幕も吹き替えも「針金」になってたが、シェーンが触ってるのは確かに有刺鉄線のリール)
・昔、テレビで二度見たはず。どちらも水曜ロードショー。1974年4月3日は母に「いい映画だから見なさい」って言われたから見たんだろうけど、たぶん途中から見たはず、ほとんど記憶なし。1976月10月6日にはしっかり見た。1976年のラストシーンは「シェーン、カンバーック!」のみオリジナル音声で変だと思った。ラジカセで録音して何度も聴いたから耳に残ってる。解説コーナーでオリジナル音声版のラストを紹介すればよかったのに、と思った。
・今回、まず字幕版を見て、吹き替え版でラストだけ確認したところ、吹き替え音声が「シェーン、カンバーック!」w 違う! 「シェーン、戻ってきて〜!」または「シェーン、行かないで〜!」でないと。日本語吹き替えなんだぞ?
・1976年版のラストシーンの録音には、「シェーン、カンバーック!」の後、エンドマークくらいのタイミングで「バーイ、シェーン!」と聞こえるのだが、字幕版・吹き替え版、その他YouTubeの切り抜きなどにはなかった。最近のリマスター版には入ってるらしい。
・それを言ったらおしまいだけど、子供/ジョーイがウザくてしかたない。顔もw 誰かに似てるんだけどなあ。この子役ブランドン・デ・ワイルド、その後どうなったんだろうと調べると、72年に30歳で自動車事故で亡くなるまで活躍してたそう。
・ヴィクター・ヤングの音楽は名曲なのは当然だけど、劇判としてはちょっとうるさくしつこすぎるなあ。
・派手な喧嘩シーンが2カ所あるけど、うんざりするほど長い。当時はバイオレンス的に過激な描写だったそう。何か振り上げて肩というか背中気味にカメラに迫るやつ、他の西部劇で真似されてたはず。
・雄大な山脈が背景のラストシーンは、夜なんだ。いちおう景色はかすかに見えるけど、ほぼ真っ暗。家の明かりも光って見えるほどには暗い。デジタルリマスター版では昼間のように明るくされてるが、オリジナルはこの明るさに近いものだったらしい(日本語吹き替え版のサムネールくらいの明るさ)。
明るさに違和感を感じた人が東北新社に問い合わせた顛末↓
・今見ると、シェーンは明らかに挙動不審。子供/ジョーイの手前、やさしいおじさんでいるけど、相当暗い過去を持ってるはずだし、南軍兵士でもあったんだろう。昔はいつも油断してなく素早く反応してカッコイイとか思ったかもしれないけど、「ビクビクしてる暗い人」に見える。(そのへん、小林旭は屈託がなくて良いw)
・悪役のジャック・パランスが憎々しくて最高にイイ。
・アラン・ラッドとジャック・パランスは、雇用主が違うだけで同類の(滅びつつある)ガンマン。シェーンをジャック・パランスが演じるのもあり得る。逆バージョン→コワモテでいかにも悪者な大男のジャック・パランスが不器用な笑顔でジョーイに慕われ、正義面してるが冷酷なアラン・ラッドを倒す……って映画、めちゃ良いと思うんだがw
・この映画でも「早撃ち」が重要な要素になってるけど、「主人公のガンマンが早撃ちのおかげで勝った」は物語の要素としては説得力がない、とずっと思ってる。逆に言うと、「早撃ちじゃなかったら負けてた」なわけで。主人公が理由もなく早撃ちなのは「チート」に近いものじゃないか?
・50年近く、シェーンはあの後で死んだと思ってた(「山を登ってきたシェーンが馬から落ちる」という捏造された記憶があったくらい)。検索してみると、原作者も監督も意図的に曖昧にしたとのこと。その時点で死んでなくても、最終カットでシェーンと馬が歩いている場所は十字架がいくつも見える墓地。ジョーイに別れを告げたシーンから幽霊だったという説まである。「あしたのジョー」のラストと同じく、伝説・神話となり、観客の心に生き続けるようにした、ということだろう。
・画質が悪い。吹き替え版はさらに画質悪く、インターレースのスジスジが見えてる。DVDからそのままらしい。
・「ジャック・パランス」という歌があるのだが、歌詞がすごい。ヴァン・ダイク・パークスも歌っていたマイティ・スパロウの曲。「ナイトクラブで、どう見ても60歳、いや70歳は超えてるジェイコブおばさんが、若い女を差し置いて男を漁ってる。『こんなところで何してるの?!』と声をかけたところ、ジャック・パランスのような顔して逆ギレ、罵倒された」という内容w
・「シェーン! 髪バーック! 髪は長〜〜い友だち」w こんなのあったね。
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