2025/07/05

最近観た映画メモ「危いことなら銭になる」他



日活プラスで、観たことなかった有名映画を急いで何本か見てしまう特集その5。

宍戸錠といえば。たぶん1994年頃、ミーティングの帰りにエレベーターに乗ったら、宍戸錠が乗ってて驚いたことがある。場所は覚えてないけど。

●東京流れ者(1966年) 1:23 日本 Amazon(日活プラス)

ヤクザをやめ、不動産業やクラブを始めたボス倉田を慕う哲也。対抗していた大塚組に袋叩きにされてもカタギとして暴力に屈さない。やがて、大塚組が倉田のビルを横取りしようと倉田や周辺、恋人にまで手を伸ばしはじめ……という話。

監督:鈴木清順、出演:渡哲也、松原智恵子、二谷英明、他

白黒映画かと思いきや、色調に凝った変なスタジオ撮影風やミュージカル風になったりw 次作「けんかえれじい」もだったけど、鈴木清順はこういう映像的な遊びをやる人らしい。色調に凝ったシーンがいっぱいある。背景を真っ赤にしたり、半分をフィルターで暗く影にしてみたりとか。

絵的には確かに素晴らしいけど、あんまり面白くない。物語より絵優先で、推進力ゼロ。同じ歌がいろんなシチュエーションで何度も繰り返されて非常にクドい。

・和風の広い空間での大勢を相手にした立ち回りは「キル・ビル」の元ネタに違いない。「ラ・ラ・ランド」でデミアン・チャゼル監督はこの映画をオマージュしたそう。確かにあの色使いはそんな感じ。

・唐突に入るコマーシャル的場面が2カ所。ポスターも数秒静止画で映る、日栄電機産業「ライト ヘア ドライヤー」。今まで見てきた日活映画にもそういった箇所がいくつかあったと思う。「ひとりぼっちの二人だが」では「ニチボー毛糸」がフィーチャーされてたし。

・清順は日活プログラムピクチャーの監督としては、どちらかと言えば添え物作品の担当で、「東京流れ者」はちゃんとした主題歌のある唯一の作品だそう。メインではないから実験的な遊びを入れられたんだろう。この映画も、渡された台本を通り一遍になぞりつつ、やりたい映像を詰め込んだように見える。

・ひと目で神宮前交差点とわかった(現在のオモカド前)。建物は違っても雰囲気はそれほど変わらない、とか言いつつ、僕の神宮前交差点の印象の刷り込みは上京直後の90年代前半、ということは、90年の24年前じゃ、それほど変わってないか。

・マンガを読んでキャッキャ笑ってた事務員の浜川智子(浜かおる)、流れ弾で死んだはずだけど、後半の乱闘シーンで別人として出てくる。意図的な何か? 他にも映像的に繋がらなかったりつじつまが合わないシーンがいくつも。

・日活アクションだけじゃないけど、拳銃の扱いが雑に感じる。

・「流れ者に女はいらねえ」って次元大介がサントラレコードで言ってたセリフw 鈴木清順は「ルパン三世」(1977年からのテレビシリーズ)に監修として関わり、映画「ルパン三世 バビロンの黄金伝説(1985年)では共同監督をやってる。

●殺しの烙印(1967年) 1:31 日本 Amazon(日活プラス)

監督:鈴木清順、出演:宍戸錠、玉川伊佐男、南原宏治、真理アンヌ、南廣、他。

殺し屋がランキング順位を争う世界。No.3の花田。謎の男の護送の仕事の途中、複数のライバル殺し屋を倒す。謎の女が現れ、外国人の狙撃を依頼されるがしくじってしまい、No.1の殺し屋から追われる立場に……という話。

スタイリッシュなモノクロ、純化したハードボイルドごっこ、後半はコメディ色が強くなる。殺し屋たちのわけのわからない戦いをアバンギャルドに描写。廃墟やトーチカのような建物などロケ地がすごい。こういう「絵」を撮りたかったんだろうなというのはバシバシ伝わるけど、やはり推進力ゼロで、面白さはイマイチ。

この映画に日活社長が「わけのわからない映画ばかり作られては困る」と激怒、鈴木清順は解雇されてしまう。それをきっかけにファンや業界人のデモ行進→裁判沙汰の大騒動に。学生運動の時代だったし。それで10年も活動できなかったそう。

ほぼ劇画。モンキーパンチ「ルパン三世」の最初のほうってこんな感じだった。影響受けてるんだろうな。真理アンヌの役は峰不二子っぽいし。

・宍戸錠が実にカッコイイんだけど、なぜか「ご飯を炊く匂いに恍惚」という変なキャラw 大写しのパロマ炊飯器。やはりスポンサーCMとのことw あと、たぶんミロのガスライターもそうだろう。

・勢いで撮って編集でなんとかする。あちこち繋がってなかったりな感じがヌーベルバーグっぽいな、と思って検索したら、ここまで見た鈴木清順作品3本は「日本ヌーベルバーグ」と呼ばれる傾向の映画に入るそう。

・冒頭に「2022年にオリジナルネガからの修復が行われた4Kデジタル復元版」というテロップが入る。モノクロ画質としてはこれ以上ないくらい美しい。

●危いことなら銭になる(1962年) 日本 Amazon(日活プラス)

造幣局へ輸送中の透かし入り紙幣用紙が大量に強奪された。偽札作りグループの仕業だ!なら、偽札原版彫り名人を先手を打って誘拐し、犯人グループに高く売り込もう!と3人の悪党が動き出す。巻き添えでアルバイトをクビになった女子大生も加わり……という話。(「危い」は「ヤバい」と読む)

監督:中平康、出演:宍戸錠、長門裕之、草薙幸二郎、浅丘ルリ子、左卜全、浜田寅彦、藤村有弘、他。原作:都筑道夫。

面白かった。コメディとしては大爆笑の連続!まではいかないものの、細かい部分までていねいに作られてて見応えがある。ファッションやクルマもいい。拳銃や無線機や計算尺や仕込み杖?やガラス片など小道具もいろいろ。洒落たラストにも脱帽。

邦画特有の苦手だったりダサく感じる部分が少なく、洋画的なテイスト。っていうか、1962年時点の洋画とくらべてもぜんぜん劣らないんじゃないか?

宍戸、長門は平常運転だろうけど、浅丘ルリ子のはじけぶりはすごい。こんなぶっ飛んだコメディ演技できるのかと驚いた。かわいらしいのに柔道・合気道の達人の設定で格闘シーンまでやってるw 妖艶な大女優ってイメージだけど、最近見てきた50〜60年代の日活映画ではたいてい清楚な若い女性役だった。オールマイティーだなあ。

・宍戸錠の愛車が真っ赤なメッサーシュミットの三輪車! 他では「未来世紀ブラジル」(1985年)に出てたくらいしか記憶にない。

・「遥かなるアラモ」に似た歌が流れるタイトルバックの間、ずっと黒バックに舞い落ち続ける無数のお札、すごい! どうやって撮ったんだ?

・草薙幸二郎の「マグナムがどれだけ威力あるか凄むセリフ」は、ほぼ「ダーティハリー」(1971年)! まさか、ドン・シーゲル監督、この映画見たんじゃ??

・ボス浜田寅彦の部下たち、昔の日本人ってこんなだったって感じのゴツゴツボコボコした顔ばかりで味がある。

・トラックが店に突っ込んだり、エレベーターシャフトでの銃撃戦など、多少ゆるいものの本格的なアクション!

・当時ここまでやって大丈夫だったのか?な、スプラッターな血のシーンやグロ描写がある。もちろんコメディテイストではあるものの。

・「おまえ、○○○じゃなかったのか?」 たぶん規制でセリフ音声が消されてるが、口の動きで何言ってるかわかってしまう。

・植木等「ハイそれまでョ」、ダッコちゃん、チキンラーメンの宣伝カーなど、時代! なのに、やはりとんでもなく美しく精細なカラー画面は、時代を感じさせず、現在と連続した時間なんだなあと感心する。

・横浜や水天宮前あたりがロケ地だそうだけど、冒頭シーンは多摩川? 日活撮影所が調布ならその周辺だろう、と調べると、欄干や照明の形から撮影所の2kmほど下流の旧多摩水道橋と判明。隣の橋は小田急旧多摩川橋梁。
https://www.ro-da.jp/suidorekishida/content/detail/P0128_181_02
https://www.ro-da.jp/suidorekishida/content/detail/P0086_084_02

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