2023/06/07

最近観た映画メモ「ロング・グッドバイ」他



U-NEXTのマイリストにずっと残ってた「ロング・グッドバイ」(1973年)を観てしまおうと思ったら、単体では済まず、図らずもフィリップ・マーロウもの特集になった。

「ロング・グッドバイ」は、舞台が1930年代のフィリップ・マーロウを現代(1970年代)に蘇らせた的な趣向の、大胆なアレンジとのこと。有名な原作にしては、これがほぼ唯一の映画化(日本のドラマ版はあるけど)。オリジナルに近い路線の映画を観てみたい。

U-NEXTには、1946年にハンフリー・ボガートで1本、70年代にロバート・ミッチャムで2本あった。見てみる。

ところで、近未来ハードボイルドSFとしての「ブレードランナー」のデッカード(ハリソン・フォード)は「未来のフィリップ・マーロウ」をイメージしており、中折れ帽とトレンチコートで登場するはずだったのだが、「レイダース/失われたアーク」でも中折れ帽をかぶってたので帽子は中止になったとのこと。

・昔何かで読んだ「ポール・ニューマンの私立探偵、朝起きてゴミ箱から拾った出がらしのコーヒーを入れて」ってハードボイルド映画って何だっけ?と検索したら「動く標的」(1966年)か。見たいけど配信には見つからない。

・後でわかったのが、70年代の「ロング・グッドバイ」「さらば愛しき女よ」「大いなる眠り」の3本って、プロデューサーが同じエリオット・カストナーという人。 「荒鷲の要塞」(1968年)や「八点鐘が鳴るとき」 (1971年)、なんと「動く標的」 (1966年)もそうなんだ! (「動く標的」にはローレン・バコールが出てるのだが、狙ったんだな。予告編見ると、美女が次々に出てくるのも「三つ数えろ」的に見える)。

ということは、「ロンググッドバイ」を撮った後、「70年代風アレンジもいいけど、オリジナルに近い路線の映画を観てみたい」とカストナーも思ったんだろう。あと数年それを実行に移すのが遅かったら、マーロウ役の候補にハリソン・フォードが挙がったかもしれない。すると、「ブレードランナー」にフォードは出なかったかも。

●ロング・グッドバイ(1973年)1:42 U-NEXT

私立探偵のフィリップ・マーロウ。友人のレノックスに頼まれてメキシコ国境までクルマで送る。ロサンゼルスに戻るとレノックスの妻殺しの共犯者として警察に捕まってしまう。レノックスはメキシコで自殺。解放されたものの、今度はギャングから金の持ち逃げを疑われ……というような話。レイモンド・チャンドラー原作。ロバート・アルトマン監督、エリオット・グールド主演。巨漢スターリング・ヘイドンの存在感! 音楽がジョン・ウイリアムス。

独り言をぶつぶつぼやき、四六時中タバコをくわえながら行動するエリオット・グールドのマーロウは非常に魅力的。冒頭に猫に話しかけるエピソードを入れたのは、独り言を不自然でなくす工夫?。松田優作がインスパイアされて「探偵物語」を作ったとのこと。

ラストはちょっと唐突な気がした。原作ともちがうらしい。事実と思ったことが次々にひっくり返ったりして複雑な話。ちょっと都合がよすぎる? 原作小説ではもっと劇的なラストらしいけど、映画としての表現には適さなかった?

ロバート・アルトマン監督作品は「M★A★S★H」(1970年)と「ナッシュビル」(1975年)も観たことある。この映画もだけど、シーンとシーンのつながりが弱めで、大きな盛り上がりもないけど、「小話的なエピソードの羅列」の心地よさがある。

ところで、精神科医のヘンリー・ギブソンがハーヴェイ・カイテルに見えてしょうがなかった。この人、めちゃくちゃ小柄なのかと思ったら163cmでそれほど低くない。197cmのスターリング・ヘイドンと190cmのエリオット・グールドに挟まれたら誰でも小さく見えるw ギブソンはこの後、同じアルトマン監督の「ナッシュビル」にも出て高評価。

 アーノルド・シュワルツェネッガーが端役で出てくる。ものすごいムキムキ。ただ、1970年の「SF超人ヘラクレス」という映画で主役までやった後なんだけどね(アーノルド・ストロング名義)。こちらはU-NEXTにもAmazonにもある、けっこう面白そうなコメディ。そのうち見るかも。

●三つ数えろ(1946年)1:54 U-NEXT

原作は「大いなる眠り」。邦題になった「三つ数えろ」というセリフは重要でもなんでもなく、ギャング映画の雰囲気でつけたっぽい。監督ハワード・ホークス、脚色が文豪ウィリアム・フォークナー、主演ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、音楽マックス・スタイナーなど、超豪華メンバー。

老将軍に依頼されたのは、二人の娘のうち妹が古書店主から脅迫を受けている件の解決。なぜか行方不明になってる関係者もいたり。古書店主の居場所を突き止めるが射殺されていて、なぜかそこに妹がいた……から始まる話なんだけど、登場人物が多く、複雑でわかりにくくて困ったw

「え〜と今のアレの意味は?」とか「この人誰だっけ?」とか、後でわかるだろうとあまり気にせず見た。ロバート・ミッチャム版(1978年)も見るつもりなので、予習になっていいや。

ボガートや一癖二癖の連中のハードボイルドな演技もいいし、店員やウエイトレスみたいな端役まで含め美女がやたらたくさん出てくる。ローレン・バコール、よく知らなかったけど、美しく、細くて背が高く、声が低くてめちゃくちゃかっこいい!!  2014年まで存命だったそうで、「ハウルの動く城」(2004年)の英語版の荒地の魔女の吹き替えしてる。

●さらば愛しき女よ(1975年)1:35 U-NEXT

監督ディック・リチャーズ、主演ロバート・ミッチャム、音楽デヴィッド・シャイア。ハリー・ディーン・スタントンが刑事役で出てる。大男マロイ役のジャック・オハローランは見たことあると思ったら、「スーパーマン」(1978年)のゾッド将軍の3人の一人! この映画では最終的に実に愛すべきキャラクターとなる。

あと、シルヴェスター・スタローンが小さな役で出てくる。マーロウ映画はムキムキ俳優のゆりかごかw

1940年代のロサンゼルス。マーロウが刑務所から出たばかりの大男から7年間音信不通だった恋人を探すよう依頼されるが、その男はマーロウと一緒にいた店で殺人事件を起こして失踪してしまう。マーロウは人探しを継続するが……という話。

上の2本より、ちゃんとストーリーのある映画として引き込まれたけど、中盤からやはりマーロウは何やってるのか何が目的で動いてるのかイマイチわからなくなってくる。シャーロット・ランプリングが登場するあたり、特に娼館のところなんか、夢の中かファンタジーみたいだ。

しかし、わからなくなってても、マーロウのモノローグとともに、この映画がずっと続いててほしい的な心地よさがある。マーロウものの魅力はこれ?

後半、いろいろ繋がってラストまで面白く観れた。いろんなところを地獄めぐりみたいに見れるのは楽しい。ラストはディマジオの話とバンドマンの家族の話でうまいことまとまった。

●大いなる眠り(1978年) 1:39 U-NEXT

ロバート・ミッチャムが眠そうな目だから「大いなる眠り」か、って、どうしても思っちゃう。ハンフリー・ボガートの「三つ数えろ」のリメイク。ストーリーはだいたい同じだけど、舞台は現代(70年代)のイギリスに移されてる。複雑なプロット。ストーリーは知ってるのに、やはり混乱してしまう。

サラ・マイルズは、ローレン・バコールに比べたら強烈さはないし、妹役のキャンディ・クラークは70年代感はあるものの、やりすぎで少々浮いてた。エドワード・フォックスはちょっとしか出ない。オリヴァー・リードの厚くて強靭な感じは非常に魅力的! 将軍役はなんとジェームズ・スチュアート。執事のハリー・アンドリュースはよく見る顔。

上の3本と同じく、それほど面白くないけど見続けるのが心地よい感じは多少あったものの、パッとしないかなあ。。。

「三つ数えろ」では夜だったりよく見えなかったりしてた背景がめちゃくちゃ明るく美しい映像で表現されてるのと、音楽もいい感じに、70年代後半らしい雰囲気出てる。音楽は70年代にクリント・イーストウッド映画とかやってたジェリー・フィールディング。クルマからの視点のタイトルバックとエンディングは最高。

拳銃の扱いが雑なのは気になった。銃で脅してる最中の距離感がやけに近いとか特に。

あと、音声が変なサラウンド効果というか擬似ステレオのかけすぎみたいで、位相が変で声が後ろから聞こえたりするのが気持ち悪かった。

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