2020/12/10

最近観た映画メモ「パリ・テキサス」他

パリ・テキサス(1984年)
ベルリン、天使の詩(1987年)
ラッキー(2017年)


●パリ・テキサス(1984年)

ヴィム・ヴェンダース監督、サム・シェパード脚本。ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー。4年前に失踪してテキサスの砂漠で行き倒れた記憶喪失の男、病院からの連絡で迎えに行く弟。苦労して連れ帰り、ロスの家に迎え入れる。息子を預かってくれてるが、妻は行方不明。いったい何があったのか、、という話。

とても良かった。弟との旅、息子との旅、全部良かった。クライマックスのあの会話シーンなんて、初めて観た映画なのに「いよっ!待ってました!」的な名シーン感マックスで、圧巻。すべてを自分から投げ捨てて空っぽになった男が、少しずつ自分の世界を取り戻していくが、そこに不要なものは何か悟ってしまう。

まあ、時間をおいてまた後で取り戻せそうなニュアンスなので、悲しい感じはしなかった。「西部劇的男の去り方」って説もあったりするけど、たしかに。また、物理的、心理的距離と、コミュニケーションについての映画でもある。テキサスが舞台の映画ってやっぱ好きだなあ。

1984年の映画と思えない瑞々しさ。ナスターシャ・キンスキーが使ってる初代ウォークマンなんて「レトロな小道具をそろえたのね」と一瞬思ったくらい。画質もいいのかな。デジタルが世界を席巻する前の最後の時代というか、いい雰囲気だなあ。

● ベルリン、天使の詩(1987年)

壁がある頃の西ベルリン。「太古の昔から人々を見守ってきた天使たち。ある天使が一人の女性に恋をし、人間になりたいと望む(=天使としての死)」という話。

ヴィム・ヴェンダース監督。当時、話題になってたの覚えてる。ブルーノ・ガンツは後に「ヒトラー最後の12日間」でヒトラーを演じた俳優。ハイジのアルムおんじとかもやってる。昨年亡くなった。

童歌みたいなメロディが混じる独り言というか詩のドイツ語の音が心地良い。クラフトワークみたい。ものすごく芸術映画っぽいけど、退屈しない。いいなあ、ってところやワクワクするところも多い。天使には人々が考えてることが聞こえるのがいい。天使/霊体たちが見守るいろんな人々の日常の様子が愛おしい感じ。白黒とカラーの使い分けに感動したり。

ピーター・フォークが本人役w いい味出してる。ピーターのおかげもあって、人間に生まれ変わったガンツが体験する人間としてのいろいろが、なんかやたら新鮮な気がする。「お! 人間っていいじゃん!」って気分になる。コーヒー飲むだけでも幸せw 鎧ww

●ラッキー(2017年)

ハリー・ディーン・スタントン主演。デイヴィッド・リンチが俳優として出てくる。他に「エイリアン」でスタントンと共演したトム・スケリットも。

元海軍で90歳の一人暮らしの老人ラッキー。比較的規則正しい生活を送り、馴染みの店に通う毎日。偏屈とはいえ何人も友人がいて気にかけてくれてる。ある朝、ぶっ倒れる。医者には特に体に悪いところはないし、逆にタバコもやめないほうがいいとまで言われるが、初めて「死」を意識しはじめる。。。。という話。

いろんな映画で見かける好きな俳優ジョン・キャロル・リンチの初監督作品。「パリ・テキサス」のトラヴィスのその後の人生なのかもしれない(「パリ・テキサス」を思わせる絵面や描写がいくつも出てくる。どちらもぶっ倒れるしねw)。キャロル・リンチも出てる「グラン・トリノ」のクリント・イーストウッドの偏屈ジジイも頭にあっただろうな。

すごく良かった。。。特に事件らしい事件は起こらず、老人の生活を淡々と追うだけなのだが、肉体のくたびれ具合や、死を意識してからの微妙な変化。弁護士との邂逅や元海兵隊との会話、ウエイトレスの訪問やパーティーでのあの行動、うるうるしたわ。仏教的な悟りも。エンドタイトルでハリー・ディーン・スタントンのことが歌われる……彼のために書かれ撮られた、完全無欠な遺作。

ジョン・キャロル・リンチとデイヴィッド・リンチは親戚でも何でもないらしい。

0 件のコメント: